紅茶の香り』の作文集

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紅茶の香り』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

10/28/2023, 5:59:56 AM

「紅茶の香り」


わたしには、大好きな古本屋がある。

少し小難しい哲学書や歴史書から、有名な文豪の作品などが置いてあり、アンティークな雰囲気のあるお洒落な古本屋だ。

店内にはいつも、クラシックの音楽が流れていて。

少し小さいお店の中に、沢山の本が置いてある。

今日もまた、足を運ぶ。

チリンチリン

木製の扉の鈴がなる。

「ごめんください」

ゴロゴロと喉を鳴らしながら、黒猫がこちらにすり寄ってきた。

その猫を撫でていると、目の前に人影が現れた。

「いらっしゃいませ。」

「店長さん!こんにちは!」

慌ててスカートを叩き立ち上がる。

茶色のカフェエプロンをした、白髪のオジサマがたっていた。

「少し久しぶりですね。」

「そうですね…来たかったのですが、大学のレポートが立て込んでいて…」

「そうだったのですか!もしよければ、ここで作業していただいてもいいですからね。」

「本当ですか!ありがとうございます!」

一時の休息を思わせる優しいオジサマも、このお店が好きな理由の一つだ。

コト、といつもの紅茶を机に置く。

「では、私はこれで。ごゆっくりどうぞ。」

ふわり、と紅茶の匂いを漂わせ店長さんは裏に戻っていった。

ギシギシとなる椅子に腰かける。

ダージリンの匂いが、私を妄想の世界へと誘っていく。

今日は、どんな人生を生きようか。

本の背を撫で、1人紅茶を揺らしながら考える。

今日もまた、偽りの世界へ浸っていった。

10/28/2023, 5:53:27 AM

子供の頃、母と訪ねたどこかの家。
住宅街の中にある、ごく普通の一戸建てだった。
私たちは乾いた落ち葉を踏みながら
呼鈴を押した。
玄関で迎えてくれたのはおばあさん。
案内された部屋には小さな引き出しがついた壁一面の棚、
その前に置かれた木のテーブルの上には、たくさんのガラス瓶が並んでた。
母が鉛筆で何か書いて渡す。
その間おばあさんは私をじっと見て、目が合うとニッコリした。
間もなくいくつかの瓶と、抜いた引き出しがテーブルの上に置かれた。
いつの間にか眼鏡をかけていたおばあさんは、木のスプーンで茶葉を掬うと広げた紙の上に次々と出していった。
空中で何度も何度も混ぜ合わされる小さく捻れた葉っぱたち。
独特の香りが部屋の中を私の周りを包み込んでいく。
誰も喋らない静かな空間に乾いた音だけが響いてた。
おばあさんは平たい袋にそれを全て詰め終えると、熱で口を閉じる機械のペダルを踏んで封をした。
はい、こちらです。
母はお辞儀をしながらそれを受け取り、代わりにお札が入った封筒を渡した。私も母に倣って頭を下げた。
玄関のドアを開けると、門の向こうに父の車が停まっていた。
私は落ち葉を踏みながら車に向かって走った。

ずいぶん後になってそのお茶を飲んだ。
ごく普通の紅茶、少しだけ苦い紅茶だったと思う。

乾いた季節、乾いた音、乾いた記憶。

10/28/2023, 5:12:57 AM

君に出会うまで紅茶といったら、ティーバッグかペットボトル。

それか刑事ドラマのビチャチャチャチャ〜っと盛大に飛沫を撒き散らすものしか知らなかった。

 キュウリサンドを噛りながらそう言ったら、目の前で優雅にティーカップを傾けていた君がキョトンとした顔。

そういえばテレビをあまり見ない人だったな、と小首を傾げた君に、ドラマで見た刑事が紅茶を淹れるシーンのマネをする。

顔の直ぐ側まで持ち上げたポットから手元のティーカップ目掛けて勢い良く注ぐ。

びちゃちゃちゃちゃー、と紅茶が跳ねる音は口で再現。

 それはマナー違反ですね、半分に割ったスコーンにクリームとジャムをたっぷり塗りつけながら君が言う。

正確にはポットに湯を注ぐ時にすると良いと君に聞かされて、また一つ私は賢くなった気がした。

テーマ「紅茶の香り」

10/28/2023, 5:03:16 AM

休日の午後
テレビをだらだら眺めていたら、キッチンからお菓子食べる?と声をかけられた。
思わずキッチンへ駆け寄ると、紅茶とそれに合わせたお菓子が添えられていた。
お湯で蒸されたダージリンの香りと、焼きたてのスコーンのバターの香りが鼻腔をくすぐる。
ぶっちゃけ紅茶の種類なんて違いはわからないけど、アフタヌーンティーはいつだって幸せを運んでくるのだ。

10/28/2023, 4:41:39 AM

お題《紅茶の香り》







金木犀の雨が蜂蜜色の屋根に降る。聖域のように澄んだ沈黙の空間。



ここは、《アルカナの箱庭》と呼ばれる異世界の果てにある――紅茶と伝承の、《鳥籠》。



「紅茶の本、ティーセット、駄々広い茶畑……でも来客者なんて滅多にこない――どうしてなの?」



黄昏色の髪から覗く星と月の青銀に輝くピアスをした、少し気怠げな少年は答えない。



「ここには、何があるの?」


「俺は何も識らない」

「ここに住んでいながら? もういいわよ、勝手にするから!」


「――識らない方がいい」

10/28/2023, 4:38:03 AM

紅茶の香り

いつも私の友達はみんなに囲まれている。
私もその子と話すけど、私以外の人と話す時その子はいつも笑顔だった。
その子とは部活も一緒だった。
給食時間の時に、その子は食べ終わって読書をしていた。私はいつも通りにその子に話しかけようとした。
私(なんの本読んでるの?)って言った。そしたら
友達(この本)
私(おすすめのページあるー?)
友達(ちょっとまってて。ここ!)
本を見てみると、
しんどい時にはしんどいと言おう。って
私(しんどくないよ!うちは!)
友達(違くて、あなたと話してるとね)って。
そして今さら気づいた。
私この子を傷つけちゃったって。どうしようって思った。知らない間にね。あぁ。ほんとにうちってバカだ。
こんなことにも気づけないって。
もっと早く気づいてあげればよかった。
その子のようにみんなに囲まれて愛されたかったな。
紅茶のように甘い香りで、みんなを惹きつけるように。

10/28/2023, 4:36:26 AM

紅茶の香りが苦手だ。よく体調を崩して保健室で過ごす時間が多くなった時に、先生が紅茶を淹れてくれた。
けれど、いくら紅茶が苦手だからと言って人様の気持ちを無下にする様な真似はするなと、厳しく躾られた事もあり飲まないという事は1度もなかった。でも、やはり匂いがあまり好きでは無いのだ。慣れていないからだと家に帰ってから買った紅茶のティーパックにお湯を注いだが、あの独特な香りは無かった。
次の日、私は学校に着いて真っ先に保健室に向かった。朝早い時間にも関わらず、先生は席に座っており私の姿を確認すると紅茶の準備を始めようとしていた。
だから、私はその紅茶にいつも何を加えているのか聞いた。先生は細長いスティック状の砂糖を紅茶に加えながら、ティースプーンでかき混ぜたものを私に手渡した。飲んで確かめてみるといいと、先生は私を見つめて言った。

先生の紅茶の香りは、私の体調を崩す。

お終い

10/28/2023, 4:32:03 AM

「まぁ座りなよ」
すすめられた席に腰掛けるとふわりといい香りがした。バターが焼ける甘い香り。
「今焼けるから。少し待ってて」
そう言って先輩はキッチンの方へ姿を消した。私と2つしか変わらないのに、土日は実家の喫茶店の手伝いをしている。最近じゃほとんど1人できりもりしているらしい。
「レモンかミルク要るー?」
「大丈夫ですっ」
奥から投げられた質問に私も声を張って答える。何か手伝おうかとそっちへ向かおうとしたけれど、なんにもしなくていいから座っててね、と叫ばれた。やがて先輩が大きめのトレーを持って戻ってきた。いい香りがあたりに充満する。目の前に出されたのは断面の綺麗なスコーンだった。クロテッドクリームまである。これもきっと、先輩の手作りだ。
「わぁ……」
うっとりする私のそばで先輩はティーカップに紅茶を注いでくれた。なんて至福な時間なんだろう。こんな田舎なのに、ここはまるで別世界の感じがした。
「それで?どうだった?」
「いちお、合格しました」
「やったじゃん!おめでと」
「ありがとうございます」
先日のこと。私はとある国家試験を受けたのだが、その合否結果が発表された。結果は見事合格。1年以上かけて勉強しただけあって、結果が分かった瞬間は人目も憚らず大泣きした。
「良かったね、いっぱい頑張った証拠だよ」
「はい。努力が報われて良かったです」
「じゃあ、来年は東京行っちゃうのかー」
寂しいな、と、笑って言いながら先輩はスコーンを頬張る。私は何も言わずにカップに口をつけた。ベルガモットの優しい薫りが鼻腔をくすぐる。いつも思うけど、先輩はお菓子を焼くにしても紅茶を淹れるにしても天才だ。こんな美味しいティータイムを過ごさせてくれるなんて素敵すぎます、と昔言ったら大笑いされたことがあった。そんなに大袈裟に言わないでよ、と。全然、大袈裟なんかじゃなくて私にとっては極上の贅沢時間なのにな。
けどそれも、東京へ行くとなると気軽にはここへ来れなくなってしまう。数十秒前の、先輩の“寂しいな”が今さら心に染みてきた。この街を離れるとは、そういうことだ。
「まぁ、たまには帰って来るんでしょ?」
「もちろんです。ていうか最初のうちは多分しょっちゅう帰省しちゃうと思います。寂しすぎて」
「えーそれじゃ交通費やばいじゃん」
こんな朗らかに話せるのもこの先は貴重になってしまうと思うと胸がつまりそうになる。ずっとこのままでいいのにな、なんて。そんなふうにさえ思ってしまう。でも。
「やれるだけ、頑張ってみようと思います。自分なりに」
「うん。応援してる」
紅茶のおかわりをもらった。2杯目は先輩オススメのリンゴはちみつを垂らす。これが美味しいのよー、と顔を綻ばせる先輩を見てたらこっちまで笑顔になる。
「疲れたら帰っておいで。いつでも」
「……はい」
帰る場所があるって、幸せだな。うっかり涙が出そうになったのを隠すため、私は3つめのスコーンへと手を伸ばした。

10/28/2023, 4:29:43 AM

揺らぐ面を眺めているような、ことができるような、隙間が胸にあればいいのに。豊かなのに。そうして涙を零すように、俯いた誰かの頬をぬくもりが撫でればいいのに。乾いた葉の切れ端を花束みたいに抱えている。一息分を求めている。幸せを一匙加えていく。今はどうかよく息を吸って吐いていいんだよ。笑っていられるだろうか。
 ずっと、手を伸ばしていいって思えない日々を、時代を、誰もが送っているんだって思うけれど。
 やさしさに輪郭があるんだとしたら、それを抜けるために爪の先を丸める。丸めたい。この手の伸ばし方を知りたい。かつて栄光だった未来から、シャッターチャンスを逃した過去になる。そうしているこの一瞬間を、過ごすための意味が要る。

10/28/2023, 4:24:12 AM

「紅茶の香り」


お母さんは何飲むのー?

休日のお昼時に聞こえてきたのは親子の何気ない会話
ドリンクバーのコーナーの前で悩む母親をよそに、
何種類もあるティーパックを見て、子供はこれは?これは?と質問責めにしていた。
そんな光景を見てふと自分の幼き日を思い出す。

学校が休みの日は家で母と2人お菓子を作ってはお茶会ごっこをしていた。
クッキーやスコーン、たまに和菓子と色々作った物だ。
そして、必ずセットで紅茶が出てきたのだ。
裕福とは言えなかったけど、手作りお菓子と紅茶のお茶会がとても楽しみだった。
そんなある日、母はティーパックじゃない、いつもとは違う紅茶を出してきたことがあった。
私は興味津々で紅茶が入るまでの過程を眺めていた。
コポコポとティーポットにお湯を注ぎ、茶葉を蒸らす。
カップに入れる時にほのかに香るオレンジの香り
初めて安物ではない紅茶の香りを嗅ぎ、期待を膨らませ、いざ一口ごくんと飲んだ。

あれ?あまくない
口いっぱいに広がる香りと味は別物であり、私は明らかにしょんぼりとした様子だったのだろう。
その様子を見ていた母は微笑み、私に、にんじんのパウンドケーキを差し出し、一緒に食べたら美味しいよと笑った。
それに釣られ私も笑い、いつもより少しだけ特別なお茶会になったような気がした。

そんなことを思い出しながら母にメールを送りスマホを置き、先ほどの親子に視線を戻した。
するとすぐに返信が来て、週末は久々にお茶会をすることになりそうだ。

10/28/2023, 4:15:08 AM

少し背伸びしたかった
あの日、あの頃

茶葉の揺れる
小さなポットと砂時計が
テーブルの上に置かれて
少しソワソワした。

同い年の、友人と2人
歩き疲れた身体を休める為に
入ったカフェは
いつも行く場所とは違って
穏やかな雰囲気が、ゆるゆると
流れている。

友人は、ミルクティー
私は、レモンティーを選んだ。

砂時計の砂が落ち切って
カップに注ぐと ふわぁっと
紅茶の良い香りが漂って

ふわふわとした、紅茶とレモンの
香りと……
なんと、そこに紅茶初心者の私は
友人のミルクまで
注いでしまったのだ。

もちろん、ミルクは分離して
先ほどまでの雰囲気は、どこへやら。
なんじゃこりゃな、マヌケな紅茶。

今でも、紅茶を飲むと
あの日の気恥ずかしさが
思い出されたりするのだけれど

それも、また良い思い出。

「お題:紅茶の香り」

10/28/2023, 4:10:34 AM

紅茶の香り


ついに捕まってしまった

全部並べたら体育館1つじゃ足りないとベテラン刑事は言った

ここらが潮時か

ベテラン刑事は言った

「腹減っただろう?」

ここで「はい」と答えれば観念したと見なされる

「…体育館に綺麗に並べると約束してくれますか?」

「もちろん、写真も送るよ」

私は今日、下着泥棒を引退する

「私がやりました」

ベテラン刑事は優しくうなずいた

ドアが開く

紅茶の香りが広がっていく

…冗談だろう?

テーブルにはシフォンケーキとダージリン

下着泥棒だぞ…こんな甘ったるいモノ…

………!?

天使のくちどけ!

女の敵はこの時はじめて女の気持ちがわかった気がした

10/28/2023, 3:57:19 AM

背後霊のオリバーは生前執事だったらしい。私より一回り年下のお嬢様に仕えていたのだという。
「あ~今日で夏休み終わっちゃう…」
「休暇が終わるのは名残惜しいでしょうが、あの少年に会うことを楽しみにされているのでは?」
図星。こういうところだ。いつも後ろにいるから、知らなくていいことばかり知っている。それに一言多い。まあ当たってるんだけどね。
 
 始業式のあと、佐久間くんが私に緑色の紅茶缶をくれた。夏休みに鹿児島のおばあちゃんの家に行ってきたんだそうだ。
「そこに描いてあるウサギ、かわいいでしょ? 中原さんそういうの好きそうだと思ったんだ」
「ありがとう。私動物の中でウサギが一番好き」
みんなに配っている小さいクッキーとは違う。旅先で私のこと思い出してくれたんだ。
 
 「紅茶、あまりお好きではありませんでしたよね。どうされるんです?」「うん…」
佐久間くんとは最初は同じ中学のよしみだったけど、一学期の席替えで隣になって以来仲良くなった。私は彼のことが男の子として好きだし、佐久間くんも私を好きだと思う。カフェオレのほうがおいしい。本当はパンダが一番。でも大事なのは佐久間くんがくれたってことだ。ウサギを見たら私の顔が浮かんだのか、私へのお土産を探していたらウサギと目が合ったのか。どっちなんだろう。どっちでも良いけど、早く味見してお礼と感想を言いたい。
 
 オリバーに教わりながら淹れた紅茶を、来客用の透明なティーカップに注ぐ。ママはこういうモダンなデザインが好きみたい。とりあえず一口。意外とおいしい。ていうか私、紅茶の味知ってたっけ。知らない。飲まず嫌いだったんだ。
「おいしい」
「当然でございます」
なんか、オリバーって基本的にうざいけど、お嬢様の前では良き執事だったのかも。

10/28/2023, 3:41:08 AM

ふと、紅茶の香りで目が冷めた。
恋人と同居し始めて3年が経った。
そして今日は付き合って5年目の記念日。あの紅茶の香りは恋人と付き合って一ヶ月も経たないくらいの時、始めてのデートで行ったカフェで飲んだ紅茶の香りと一緒。5年間も一緒に居てくれた恋人は今日の記念日のこと、覚えてるかな?
今日の仕事帰りケーキと花束を買って帰ろ。恋人はどんな反応するかな?

10/28/2023, 2:20:42 AM

アールグレイを飲んでみたい。
紅茶の違いって、素人にわかるのかな。


#紅茶の香り

10/28/2023, 2:19:39 AM

#紅茶の香り

 
「専務、こちらは?」


「後で目を通しておくから、そこにおいといて」
 

やっとここまできた、何もかも全てを捨てて···。


それなのに、ふと香ってきた匂いに引き戻される。


「頂き物なんですけど、たまにはコーヒー以外もいいかと思いまして···、どうぞ」





〖姉ちゃん、友達から紅茶のパックもらったんだ!〗



四畳半のぼろアパート、二つ年の離れた弟


遅くまで親は帰らず、私が親代わりだった。


始めていれた安物の紅茶は、


決して美味しいとは言えなかった。





「ありがとう······· はぁ、おいしい」

10/28/2023, 2:15:12 AM

紅茶の香り

日曜の午前中、紅茶の香りで目が覚める。
「今日はコーヒーじゃないの?」

「もらったんだ。ウバ紅茶って言うらしい。ミントの香りしないか?朝はこれがいいらしい。」
確かにミントのようかスーっとした香り。

コーヒー好きな私としては、紅茶はなんだか物足りない。せっかく彼が入れてくれたので、飲んでみる。ミントの香りとキリッとした苦味。確かにこの紅茶を飲むと目が覚める。

「どう?美味しい?」

「うん、美味しい。でも、朝はやっぱりコーヒーかな〜」
彼は笑いながら
「そう言うと思ったよ。俺、スリランカで暮らそうと思ってる。インド洋に浮かぶ島国だ。付いて来るか?」

「私はね、パリに行ってパティシエの勉強をしたいと思っている。もしかして、私達、お別れかしら?」

「そうだな。俺には後にも先にも君しかいないけど、やりたい事をやるよ」

「私もあなたしかいないけど、やりたい事をやるわ」
そして私達はウバ紅茶でスッキリ目覚めて、決断した。
愛している彼とまで別れて決めた夢だ。もう、後戻りはできない!
前に進もうどこまでも!

10/28/2023, 1:42:57 AM

【紅茶の香り】

 サクリと音を立てて、君の歯列がクッキーを噛み砕く。その瞳が驚いたように丸くなった。
「え、何これ。美味しい」
「ふふっ、なら良かった」
 甘いものが苦手な君が、少しでも次のティーパーティを楽しめるように。試行錯誤を繰り返した甲斐があったというものだ。あっさりと一枚を食べ切った君がもう一つ手を伸ばすのを弾む心で眺めながら、私もクッキーを手に取った。
 ぱくりと食べれば鼻に抜ける色濃い紅茶の香り。甘さはほとんどない代わりに、紅茶の苦味が口一杯に広がる。うん、ちゃんと美味しく作れている。
 もぐもぐと無言で私の作ったクッキーを食べる君の表情が、私にとっては一番のご馳走だ。

10/28/2023, 1:40:10 AM

甘く華やかな香りがする。
 陽の光がまぶたの向こうを明るく照らす中で、それが芳しい珈琲の匂いでないことに強烈な違和感を覚えた。これは紅茶の匂いだ。両親はどちらも珈琲党なのに――そう考えたところで、もう両親はおらず、ここはイギリスだったことを思い出した。
 朝の明るさを鬱陶しく思いながら目を開ける。
 開け放たれたカーテン、花がらの壁紙、英語の書かれた背表紙の並ぶ本棚、ヴィクトリアン調の品のいい家具。
 それらを眺めても、真弥はまだ現実味を得られていなかった。
 先日、両親が死んだ。
 悲しさはない。物心ついたころには既に両親の仲は悪く喧嘩ばかりで、双方愛人を作って真弥を放っていたような親だ。金だけはあったので真弥が苦労することはなかったが、それを感謝するつもりもなかった。
 父は真弥を無視して愛人の元に入り浸り、保険金目当てに殺害され。
 母は愛人に入れあげ日頃暴力を振るわれていたらしい。その果てに殴り殺されたそうだ。
 中学生になる前だった真弥にそう訃報が届いたがどうでもよかった。
 一人で生きていこう。
 他人と過ごして愛などというまやかしに酔えば、両親のように殺される。
 連続して起きた両親の死に、真弥はそう決めて、元々なかった愛想をさらになくし心を閉ざした。
 そんな真弥を見かねて後見人として引き取ったのが、イギリスに住む一家だ。かつて父とよく交流していたらしい小父は「よかったら住む世界を変えてはみないか」と誘い、中学受験を控えていた真弥はそのままイギリスにやってきた。親のいた痕跡のある家に居続けるよりましだと思ったのだ。
 そうしてやってきたイギリスに、中学校に通うようになってからもまだ馴染めない。

「おはよう、ねぼすけさん。紅茶はいかが?」
「白湯をくれ」

 リビングに向かうと、紅茶の香りの元が話しかけてくる。過剰なほどおっとりとした、真弥より少し年上の、この家の娘だ。
 誘いを挨拶もなく無視して白湯を要求しても、娘は無視してさらに続ける。

「朝ごはんはどうする? パンと、オートミールがあるけれど」
「いらない」
「成長期なんだから、食べないと伸びませんよ」
「いらない」

 娘は愛想がないどころか不遜な態度の真弥を気にもせず、カップに白湯を注ぎ、トーストを焼きはじめた。白湯を飲めば内側から体が温められる。それが妙に不快で真弥は眉根を寄せた。
 物心ついた頃から食事が嫌いで仕方なかった。美味いと思ったことがないし、ときに不快で吐き出したくなる。緩やかな自殺志願の現れなのかもしれないと思ったときもあったが、単に体が受け付けないのだ。
 そんな真弥を、娘は笑う。

「どうしたんですか、そんなに難しい顔をして。さぁ、パンが焼けましたよ。バターは、いらなかったですよね?」

 真弥がどれだけ食事を嫌がっても、娘は構わず目の前に食事を置く。用意されたものを食べないわけにもいかず、焼き立てのトーストを口に含んだ。
 娘はわかっているのだ。用意すれば食べることを。そうして世話をすることで、今日も真弥が仕方なく生きなければならなくなることを。
 真弥の愛想の悪さに、触れようとすらしない人間が大勢いるのに。
 眉間のしわを深くして睨みつける。
 それに気付いているのかいないのか、香り高い紅茶を口に含む娘は、確かに「住む場所を変えた世界」だった。

10/28/2023, 1:22:28 AM

紅茶の香り。昔はコーヒーとか紅茶を飲んでたけど今はもう白湯しか飲まなくなったな。

 コーヒーも紅茶もガチれば美味しいけど金がかかるし手間もかかる。かといって安いインスタントやティーバッグは不味い。

 その点白湯は水をわかすだけでいいし美味しい。それに白湯のほうが心が落ち着く。

 白湯は味がないからすっきりさっぱりしている。そこがいい。

 でも時々もらったコーラとか飲むとその美味さにびっくりする。もしかしたら白湯が美味しいというのは単なるやせ我慢とか思い込みなのかもしれない。

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