黄桜

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紅茶の香りが苦手だ。よく体調を崩して保健室で過ごす時間が多くなった時に、先生が紅茶を淹れてくれた。
けれど、いくら紅茶が苦手だからと言って人様の気持ちを無下にする様な真似はするなと、厳しく躾られた事もあり飲まないという事は1度もなかった。でも、やはり匂いがあまり好きでは無いのだ。慣れていないからだと家に帰ってから買った紅茶のティーパックにお湯を注いだが、あの独特な香りは無かった。
次の日、私は学校に着いて真っ先に保健室に向かった。朝早い時間にも関わらず、先生は席に座っており私の姿を確認すると紅茶の準備を始めようとしていた。
だから、私はその紅茶にいつも何を加えているのか聞いた。先生は細長いスティック状の砂糖を紅茶に加えながら、ティースプーンでかき混ぜたものを私に手渡した。飲んで確かめてみるといいと、先生は私を見つめて言った。

先生の紅茶の香りは、私の体調を崩す。

お終い

10/28/2023, 4:36:26 AM