「ありがとう、ごめんね」
貴方のその言葉が嫌いだった。夫はいつも何かと、ありがとう、ごめんねと言う。彼に何度も何故謝るのか聞いた。だが、それに対してもありがとう、ごめんねと喋るだけでちゃんとした答えは教えてくれなかった。
「ありがとう、ごめんね……」
あぁ__彼は死んだのだったな。
ありがとう、ごめんね__先に逝ってしまって。
お終い
何故年末というのは掃除をしなければいけないのだ。正月前に済ませるのが普通なのと母が脳内で喋っている。
「あぁ! 面倒くさい!」
私は掃除が好きではない。埃が舞うのも嫌いだが、ゴミを集めて捨てるという行為そのものに対する気力が湧かないのだ。
「ちょっとあんた! まだそんなとこやってるの? もうお母さんやるから玄関前掃除してきて! あーもう部屋の隅に埃溜まってるじゃないー……もう〜」
そっちがやる気多いだけ。とは間違っても言わなかった。仮に言えば母の怒号が飛ぶ。部屋の隅の埃が吹き飛ぶくらいの勢いで。
母の怒りは部屋の隅の埃より怖い。
お終い
台風で飛ばされちまった天井に、朝日が刺し昇る。
部屋のものは一部が外に飛んでいった挙句に近くにあった木の枝が折れて居座っている始末だ。
「生きてるだけ儲けもんだな」
そう思わないとやっていられないほど、世間というのは嫌なものでまみれている。見て見ぬふり、聞かぬふり、知らぬふりすることで生きやすくなるのだから人間というのはつくづく逃げ上手な生き物だ。
「カーカー!」
カラスの鳴き声が遠くで力強く聞こえる。まるで、負けない負けないぞと自分の縄張りを荒らして行った台風に対して鳴いているようでクスリと笑みが零れた。
「そうだな…負けてらんねぇな」
再び見上げた空模様は、先程よりも青く澄んでいるように見えた。
空模様の見え方は変わる。
お終い
風呂に入ると目の前に鏡がある。シャンプーをしている自分の目を見つめる癖が昔から抜けない。
いつだって鏡に映る自分の目は、光が無くそのせいでどんな表情をしても心底つまらないという顔をしているものだから、いつからか私は表情を作るのをやめてしまった。
「今の目、怖かったよ〜」
「いや人殺しそうな目だね笑」
「すいません!」
家族の前では気を抜いてしまうため、よく目元が怖いとイジられる。好きで怖い目をしている訳ではないが、どうやら私は気を抜くと怖い目をしているらしい。
「〇〇は優しいよね〜」
「〇〇だけは真面目に授業聞いてくれるから、俺助かってるよ。」
「〇〇さん、今日の掃除当番変わって!」
周りは私が気を張っている時の目を怖いとは言わない。けれど、私の目はどうやら誰にでも優しくそして使いやすい目らしい。
本当の自分は家族の前での方だと分かっている。だって、気を抜いて怖い目だと言われても怒りは湧かないから。
でも、家族に怖いと言われるのは怖い。
だって、そうしたら学校の人達のように気を張らなくてはいけなくなる。
「本当の私って何?」
鏡に映る自分にそう問いても、返事は返ってこない。
なぜなら、鏡は私だから。
私は誰かの鏡。
お終い
解説
皆は互いに鏡を目に持っている。
そのため、映ったものは嘘ではないし本物だが時には都合のいいものばかり映す嘘の鏡もある。
私も、皆を都合よく映しているだけかもしれないよという本心と映るものは違うというお話。
夏が好きという人たちは、今年初めに夏でやりたい事を頭に思い浮かべて見てほしい。
ちなみに、私はプールに入りたいと思っている。一概にプールと言っても、自宅でのプール、施設でのプール、市民プールといった種類があるが私は自宅でのプールが好きだ。
理由としては、家族でプールの水を使って水鉄砲で水を掛け合う遊びがバカらしくて楽しいからだ。
だから、夏が本格的に来る前にダイエットして理想の体型に作り変えようと思う。
遊ぶだけならダイエット必要ないと思うかもしれないけど、理想の自分でいられる時間って私達が思ってる程長くはないからね。
一緒に、どう?
お終い