台風で飛ばされちまった天井に、朝日が刺し昇る。
部屋のものは一部が外に飛んでいった挙句に近くにあった木の枝が折れて居座っている始末だ。
「生きてるだけ儲けもんだな」
そう思わないとやっていられないほど、世間というのは嫌なものでまみれている。見て見ぬふり、聞かぬふり、知らぬふりすることで生きやすくなるのだから人間というのはつくづく逃げ上手な生き物だ。
「カーカー!」
カラスの鳴き声が遠くで力強く聞こえる。まるで、負けない負けないぞと自分の縄張りを荒らして行った台風に対して鳴いているようでクスリと笑みが零れた。
「そうだな…負けてらんねぇな」
再び見上げた空模様は、先程よりも青く澄んでいるように見えた。
空模様の見え方は変わる。
お終い
8/19/2024, 2:19:26 PM