木枯らし』の作文集

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木枯らし』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

1/18/2026, 7:36:42 PM

木枯らし(編集済)

サムシング


「寒い」

 一月も中旬、去年のクリスマスをしのぐ程の寒波が頬に刺さる。耳当て、ニット帽、藍色のマフラー、内着に貼るカイロ、あったかいベスト的なの、分厚いコート、股引き、ズボン、二重のモコモコ靴下。ありとあらゆる防寒具を装着しても顔周辺は無防備な訳で、数日前に見かけたネックウォーマーを購入しておかなかった自分を恨んだ。

 少しは身だしなみに気を付けなさい、母の言葉が鈍い思考回路に割り込んできて「そらみたこと」と続けて笑う。寒がまし体調を壊しては大変だからって毎日服装チェックが入るのもうっとおしい、家に居れば最近会社はどうなのとか良い人出来たとか干渉が激しい環境から少しでも離れたくて、寒空の下夜食を求めて歩いている。

 幸いかなり遅くまで営業している店は多く、目当ての店にも見当は付けていた。

 正流軒
読みはとある格ゲーのワザに出て来るそれで、拳で語り合ったりはしない、普通の古き良きラーメン店だ。
 オススメは鶏皮が沢山入った鶏ガラの醤油ラーメン、えーと何だっけ。まぁ行けばわかる、とにかく美味い。

 古い民家の平屋で夫婦二人で店を営むお店。俺が生まれるずっと前から存在する、老舗ながらも万人を受け入れるただ住まいがそこにはあった。

「しゃっせー」

 少したてつきの悪い引き戸を開けた先、若い金髪な男が気だるげに声を上げる。店内にいる客は一人もいない、促されるまま近くの席に誘導され張り出されたメニュー表を探す。

「ご注文は」

「あれの大盛りを一つ下さい」

「はーい、%&%一丁大盛り入りましたぁ」

 息付く間もなく聞かれる固定文、反射的にメニュー表を指差し答えるも早口すぎて聞き取れない復唱。厨房からはいよと聞こえた後いつの間にか目の前にお冷が置かれていた。
夜遅くに来るのは大体常連で注文は決まっていて、数えきれない客の内の一人だと認識されているのかもしれない、ただあんまりだなとは思う。この時間帯に来た事がなくあの男性を見たのはこれで初めてだ、頼むものが決まっていたからどもらずに頼めたが、初見じゃ戸惑うだろうな。
 俺の気持ちなど知りませんと、当の本人は客席の袖から備え付けのテレビを心底つまらなそうに眺めていた。

 それから三人の客が来た、一組目は老夫婦でアレよを連呼するおばあさんと、その意図を汲み取り的確な注文をするおじいさん。来店頻度の高い常連なのか金髪の男の対応が少し柔らかく感じる。ラーメンの他に餃子とモツ煮と炒飯、食べ切れるのか不安になるが、口ぶりからして大半はおじいさんが食べるらしい、元気でなにより。

 そして後からもう一人、おっちゃんだ。金髪男はめんどくさそうな表情を浮かべ、「あ〜好きなところへどうぞ」と、ぶっきらぼうに言い放ち不快感を隠そうともしない。
よりにもよっておっちゃんは目の前に座って来たわけで、
まぁ臭い、酒の匂いだ。〆のラーメン的な常連なのかもしれない、どうでもいいが。

 やっと注文したラーメンが届いた、見た目は醤油ラーメン、そこに鶏皮が添えてあり鶏の出汁が効いたあっさり風味なスープに、絡みつく麺、鶏皮は当然の如く美味しい身も心も温まる素晴らしい一品だ、思わず飲み干してしまいそうになるが、夜なのでグッと我慢。
途中金髪男が厨房に向かって「お先失礼しまーす」と一声掛け店内の奥へ消えゆく姿が見えた。そう言えば確かに閉店まで一時間、客も少ないし問題ないだろうな。

「あんちゃんよく食うなぁ、ほれオレのも食え食え」

「は、はぁ」

「もっと食え食え。ハハハッ」

 俺が完食するのを見計らった様に自分の餃子を皿ごとこちらへ持ってくるおっちゃん、しかも手つかずの五個入り。だいぶ酒が入っていて断っても面倒だ、仕方なく受け取ってしまった。

「学生かおまえさん、オレが学生の頃はな〜」

 案の定絡み酒へ移行、正直身も心も温まったのだからはやく帰らせてほしいがこの餃子を食べ切らねば勿体無いし、指摘されて余計帰れないだろう。ここは先輩から聞いた「さしすせそ」を活用せねばなるまい。

「そこでオレはガツンと言ったわけよ」
「さすが〜!」
「ってなわけよ」
「知らなかった〜!!」
「凄いだろ!」
「凄いですね〜!!!」
「このネクタイ記念日にくれたんだよ!」
「奥様のセンス良いですね〜〜!!!!」
「ちなみにオーダーメイドで限定品なんだぞ!!」
「そうなんですね〜〜!!!!!」

 喋るスピードが早く食べる合間を中々渡してくれないおっちゃん、対する俺は半ばヤケクソで声を張り上げながらも餃子をかき込む。出禁に成りかねない事態だが、幸いにも親父さんは厨房で締め作業に入り聞こえておらず、あの老夫婦もずっと二人で話し込んでいる。この時ばかりは追い出して欲しかった。クソ早く食べ切らねば。

「ここ最近寒いだろ?だからおっちゃん毛布沢山包まるわけよ」

「モグモグ、ん、はい」

「で朝起きると寝汗でベットがベットベットってな!」

「ん“っ〜〜〜〜ゴクン、、アハハオモシローイ」

 キツい助けてくれ、俺の心の限界が近づいて来たその時、あの老夫婦がやっと会話に混ざってきた。

「あら何だか急に寒くない?冷たい風、ホラアレよ、アレが吹く」

「木枯らしか、冬の始まりを告げる季語だな」

「それよそれ〜」

 ここしかない、おっちゃんが老夫婦に気を取られている間に俺は最後の一つを無理やり飲み込むと、立ち上がり親父さんの元へ直行し、支払いを終えて防寒着を装着していく。だがしかし俺も日本人、礼を欠いては置けない性分、致し方なく声を掛ける。

「あの、餃子ありがとうございました」

「良いっていいって!おっちゃんもあんちゃんと話してて楽しかったしよ!」

「ではしつれ「あ!」

 俺の声を遮って何か閃いた様な顔、なんだか嫌な予感がする

「外は寒いから気をつけろよ、寒すぎてサムシングってなぁ ハッハァ!!!」

 暖房の行き届いているはずの店内に冷風が吹き荒れる、身も心も凍て付かせる季節外れの、それも特大な木枯らしが店内に吹雪いた。

「…寒い」


おわり

1/18/2026, 2:30:57 PM

「木枯らし」

過ぎ去ったことを
ずっと考えるのは
やめようと思っている
でもやめられない
初めて感じた一瞬の
冷たい出来事を
ただ吹き終わった
風として捉えることが
出来ないでいる

1/18/2026, 10:10:51 AM

「さよなら」


影の濃い夏に「さようなら。」
春風が頬を引っ掻くような日に「さようなら。」
冷たく凍てつくような日に「さようなら。」
木々が紅く染め上げられた日に「さようなら。」

どれも同じ別れの挨拶でも、また明日。と言葉は続いた。
それでも、きっと。今日の「さようなら」は明日が無いだろう。
いつまでも貴方を愛することは私にとって、難ではない。でも貴方にとって私と紡ぐ日々はきっと苦しいかったのだろう。

「さようなら」
荷物をたくさん抱えて、こちらを振り向くことなく
玄関を開け歩いていった。
その時の貴方の背中は、少し小さく見えた。
貴方から言い出したことなのに、寂しそうにしないでほしい。
私の方が何倍も何倍も貴方のことが大好きで、今日という日が寂しかった。
だから。
早く、歩いていって。
私が過去の女になるように、早く時間が過ぎますように。貴女の記憶の私が、嫌いな女から愛おしかった人になりますように。
2度と逢うことがありませんように。


荷物を抱えた貴方は「さようなら」と言った。
この先に続く言葉は無く、ただ沈黙が続いた。
目頭を紅く染めた私と貴方はきっと、別れる者に見えないだろう。
貴方の愛が他人に注がれるのは嫌だけど、私を愛してくれる貴方がいたことは確か。

ねぇ。じゃあね。

遠くの小さな貴方の背中にそっと呟いた。
貴方に届くことはなくてもこの言葉は私の心に強く、
強く残ることだろう。


「さようなら。」いつまでも恋しく思うことはやめておこう。


やめて居れたのならばこの胸は痛くなかったのだろうか。

1/18/2026, 9:58:32 AM

鍋が沸き立ち火を弱める。シチューを作るつもりがルーを忘れていた。面倒になって、買い置きの鍋つゆを適当にぶちまける。
 ここ数日は春みたいな陽気だった。気温が元に戻っただけなのに、前より余計に寒い。心を木枯らしが吹きすぎていく。
「最初から」
 つぶやいた言葉が、じゃがいもと玉ねぎしか入っていない鍋に溶けた。
「あったかくなんかしなきゃいいのに」
 どうせ冷たくなるのなら。

『木枯らし』

1/18/2026, 9:52:44 AM

休みの日が合ったので、同僚と2人ショッピングに出掛けたその先で。
一際騒がしい人の群れが進行方向に現れる。
その中央で激しく泣いている女の子の姿が見えた。
みんな彼女を取り囲み何とか宥めようとしてる感じ。
「迷子なのかなー?泣いちゃってるねー」
横に立つ彼女をちらりと見て言う。
見上げた同僚は何の返事もせずまっすぐ真剣な目でその女の子を見つめていた。
相いも変わらず収拾がつかない目の前の輪に。
突然ツカツカと近寄り出した同僚にびっくりして追い掛ける。
「ちょ…どこ行くの?」
彼女はその輪の中心に辿り着くと、
「泣けばいいと思ってるの!!」
凛とした声で言い放った。
その場の空気が凍りついたと思う。
冷たい空気が通り抜けた。
その場にいた人全員が驚いて動きが止まる。
静まり返った中に彼女に集まる視線。
彼女はいつも容赦ない。
それは子供であろうとも同じ事。
木枯らしみたいな人だと思う。
「あんたちょっとその物言いはひどくない?」
その場に居合わせた年配らしき女性が彼女に非難の声をあげる。
その人にサッと視線を寄越して
「こう言うの、優しくするだけじゃ埒があかないと思うんです。サッサッと用件聞いちゃえばいいんですよ」
そう言い放つとまた女の子に視線をやって
「あんたも泣いてばかりじゃいつまで経ってもママに会えないよ。名前は?ちゃんとあるんでしょ」
しゃがんで女の子と目線を合わせる。
間近で見つめられた女の子の涙はいつの間にか止まっていて怯えたようにもごもごと名前を言ったみたいだった。
「聞こえない。もっと大きく言わないと分からないよ」
ピシャリと言い放つ。
女の子は怯えながらもみんなにも聞こえるぐらいの大きさで名前を言った。
「やれば出来るじゃん」
そう言って彼女は笑って女の子の髪をクシャリと撫でた。
褒められた女の子もそれで緊張感が解けたのかその後に続く質問にも雄弁に答えていく。
「じゃあ、わたしについて来れる?迷子センター行くよ」
彼女はわたしに視線を向けると迷子センターの方を指さして先に歩き始めた。
その後ろを数歩遅れて付いていく女の子。
手を引くわけでもないし話し掛けて行くわけでもない。
だけど歩調は女の子が追い付けるぐらいの速度だ。
その後にわたしも置いていかれないように連なって歩いて行く。
やっぱり彼女は、木枯らしみたいな人だと思う。
でも彼女の木枯らしは優しい木枯らしなのだ。



                  (木枯らし)

1/18/2026, 9:51:39 AM

【木枯らし】
暑い暑い夏が終わった。
カラッとした涼しい木枯らしが吹き、葉が舞い上がる。
木の葉は瑞々しい緑から色とりどりな赤や黄色に変わる。
どちらもとても美しく、神秘的だ。
私の悩みも醜い感情も、私の悪い所を全て木枯らしが攫って言ってくれる気がする。

木枯らしが夏の私たちを攫い、冬の私たちを運んでくる。
秋は好きだ。
より草木が輝いて見える。
私たちがこの世からいなくなってしまうまで、あと何回美しい秋を見ることができるだろうか。
この美しい日々を過ごすことができるだろうか。

様々なことは突然やってくる。
死も、生も、楽しいも、悲しいも、突然やってくる。
これも、人生における美点であり、すこし、悪いところだ。
後悔をしないよう、毎日を全力で、様々なことを感じながら生きていこう。見れなくなって、感じなくなってからでは遅いから。

また、木枯らしが吹く。
今日も頑張ろう。

1/18/2026, 9:48:11 AM

彼は。わたしのことを『木枯らし』と呼んだ。

 木を枯らすつもりなどなかったが、結果的にそうなってしまうのは事実なのだから、しょうがない。けれどもっと他にも、いい名があったのではないかと思う。

「よう。また来たのか『木枯らし』」

 他の人族が立ち入ることのない森の奥で、彼は一人で暮らしていた。わたしが彼の、無造作に束ねた長い髪と口髭に触れると、彼は笑って言った。

「ああ、鬱陶しいか? だが前にも言ったが、こいつはお前の力でも、丸坊主にはならねぇからな?」

 違う。わたしはただ、前と変わらず同じ姿をしているのだなと、そんな思いにかられて触れただけ。

 わたしは彼と交わす言葉を持たない。そもそもわたしの姿は、人族には見えないはずなのだが──彼の祖先に、我ら側の血が幾分混じっているのかもしれない。

「俺の言ってることなんざ、わからねぇだろうけど。お前は本当に綺麗だな。光の粒を纏ってるみたいだ」

 わたしに『木枯らし』なんて名前を与えておいて。
 この人族は、いったいなにを言っているのだろう。

「けど、いいのか? お前みたいな美しい精霊が、俺のような罪人に、触れたりなんか……消えちまったりしないだろうな?」

 彼はそんなことを、毎年のように口にする。わたしはそれを、彼の横で黙って聞いている。
 この森に冬をもたらし、そして持ち去る日まで、わたしは彼のそばで過ごした。くる年も、くる年も──。

「なぁ『木枯らし』。罪は──どこまで行けば、許される?」

 ある年に彼はそう呟き、だがわたしはやはり、彼と交わす言葉を持たなかった。代わりに彼の髭を撫で、束ねていた長い髪をわざとほどき、乱してやる。白い髪と、目尻に刻まれた深い皺──人族の時間は、なんと短いのだろう。

「──ありがとよ」

 次の年の、森の奥で。
 わたしは彼を見つけ、しかし彼はもうわたしを『木枯らし』と呼ぶことはなかった。

 横たわる白い枝のような彼を、森の樹々から落ちる色とりどりの葉が、覆い隠してゆく──わたしの訪れを待っていた樹々に、わたしは礼を言い、樹々たちにしか聞こえない子守唄を歌う。

 いまの彼なら、或いは。
 わたしの歌が、聞こえるだろうか?

1/18/2026, 9:31:40 AM

山降りて枯葉引き連れハーメルン
ビルの隙間を笛吹き歩く


2026.01.18 『木枯らし』

1/18/2026, 9:27:49 AM

母がカラオケで
よく歌う曲

小泉今日子さんの
木枯らしに抱かれて

甘い声で歌う
胸に刺さる歌詞

出会いは風の中
恋に落ちたあの日から
気づかぬうちに心は
あなたを求めてた

どの世代でも
気持ちは同じなんだ

私もいつもいつでも
恋心が泣いている

1/18/2026, 9:24:01 AM

「しーんや」
 後ろから声をかけられて、はっと振り向く。ルビンさんはひらひらと手を振りながら近づいてきた。片手に駅前のパン屋の袋がある。バターのいい匂いがした。振られているもう一方の手にも食べかけのクロワッサンが握られていた。「おいしいよ」そうですか。
「今の女の子だれ?」
 ルビンさんがそう言ったのが、おれが彼の手の中の袋からひとつパンをもらって口に入れた瞬間だったので、逃げられなかった。小さいアップルパイは、甘酸っぱいリンゴのコンポートとさくさくのパイがマッチして、大変おいしい。ぽろぽろとくずが落ちるのが玉に瑕だ。コートとマフラーを軽くはたいた。
「アオイっていう、図書館であった子」
「彼女?」
「ともだち」
 ふうん、とルビンさんは鼻を鳴らす。大人なのに、ルビンさんにはこういう、たまにひどく子どもっぽい仕草があった。からかいをふくんだそれをひと睨みすると、たちまち大人の顔をして目を細めてみせる。
 アオイとは、あの日からよく会って話すようになった。毎日図書館に行くわけではないけれど、おれが行くと大体アオイはいるので、そのたびに彼女を駅まで送って歩いた。昼過ぎになれば共働きの両親は家からいなくなり、いつ帰っても自分が学校に行っていないことはバレないのだと言っていたから、大体それくらいの時間だ。話す内容は最初とそんなに変わらない。日常のことをアオイが話し、乞われたときにはたまにおれも話す。さすがに吸血鬼と同居しているなんて詳しいことは話せないから、親代わりの同居人がいるとか、家事は自分がしているとか、そういうふわっとした話になる。
「ユキには言ってる?」
「何を?」
「何って、新しい友だちのこと」
「言ってないけど……」
「けど?」
「なんで? 別に理由ない」
 ルビンさんは、雪が降るまでこの町にいるらしい。ここ一週間くらい、雪が降りそうで降らない、ただ寒い日々が続いていて、それがルビンさんのなにかに火をつけたんだそうだ。絶対絶対雪が積もった町を見るまでいるもん、と大人らしからぬ駄々をこね、当然のようにうちにいる。まあおれたちは協会から支給されるお金で生活をしているので、無碍にすることはできない。
 あっそう、と彼は言って、それから手の中にあったパンをぱくんと口の中に放り込んだ。少し大きかったのか頬を膨らませて咀嚼し、飲み込んでからおれを見た。
「シンヤ、この町を出る気はない?」
「え?」
 びゅう、と何もかも吹き飛ばすような強い風が吹いた。
「シンヤももうすぐ大人だ。働いたり、恋愛したり、したいと思ったりは?」
「……」
「もしくは、しなくては、と思ったりは?」
「……」
「ユキとべったりくっついてなきゃやってられないようだったら、何も言わずに帰るつもりだったけど。新しく友だちを作れるくらいの精神状態なら、そろそろ独り立ちしてもいい頃だと思うんだよね」
 今すぐ決めなくていいよ、とルビンさんは言った。まだ帰らないから。この町を離れる時に、一緒に来るかどうか決めておいてね。そう言いながらもう一つパンを渡される。
 クロワッサンだった。

1/18/2026, 9:12:58 AM

とにかく、寒い。
てぶくろを忘れてしまったボクは、ポケットに手を入れた。


「木枯らし、っていうとちょっと寂しい感じもするけど、あちこちで落ち葉たちが舞って、カラコロと音をたてたりして、私はとっても好きだなあ。」
モコモコのマフラーを首に巻いたキミは、足元で舞い踊る枯葉たちを眺めながら楽しそうに言った。
その様子を見ていると、寒さも忘れ、こころがあったかくなる。




🍂🍂🍂



キミと出逢ったのは、木枯らしが吹き始めた頃。その日、ボクは人生最大の落ち込むことがあって、悲しくて悲しくて、トボトボと、自宅までの道を歩いていたんだ。
気がついたら知らない公園に辿り着いていて、今と同じようにベンチに座ったキミが、今と同じように足元で舞い踊る枯葉たちを眺めていたんだよね。その様子を見ていたら、ボクは元気が出てきたんだよ。



それから、ボクはキミのことが気になって暇さえあればその公園に行くようになったんだ。
キミが寒いだろうと思って、モコモコのマフラーをプレゼントしたりもしたなあ。




…………

キミは、いったいナニモノなんだろう?
と、時折思うんだ。
キミは、いつもここにいて、いつも楽しそうに過ごしている。
キミのまわりには、いつも木枯らしが吹いていて、キミの足元では落ち葉たちが楽しそうに舞い踊っている。カラコロと音をたてて。




だんだんとあたたかくなってきた今日この頃、キミがなんとなく薄くなっているような気がするんだよ。


キミと逢えるのは、あと少しかもしれないな、とボクは少しだけ寂しくなるんだ。

1/18/2026, 9:09:27 AM

木枯らしに吹かれて。

綺麗なまま土を覆ってゆく紅葉たちを、可哀想だと思ったわたしはたしかに幸せだったのだろう。

忘れたいと願う一方で、色褪せることのないように、引き出しにしまっておこうとするわたしがいる。
あなたとの日々を、時間を、呼吸さえも、綺麗なまま記憶に閉じ込めたいと。






.

大切なものができたんだ。
今はそれでいいじゃないか。

いつか、人生にそんな素敵な瞬間があったんだと、笑い話にできる日まで、思う存分抱きしめればいい。

土にかえってゆくものたちに寄り添えるように。
まずは今日を、歩いてゆこう。

1/18/2026, 9:07:28 AM

『木枯らし』

 点々と星が夜の澄んだ空を彩るなか、冷たく木枯らしが吹き荒ぶ。
 キツく繋がれる細い指先はいつもより冷たかった。
 いつもより緩くまとめられたポニーテールは、風にさらわれて簡単に乱れる。
 ふわりと普段とは異なるヒノキの香りが鼻腔をくすぐった。

 ……まいったな。

 俺の腕にしがみつく彼女を見下ろす。
 ギュウギュウ引っついてくれるのは役得なのだが、俺はどうにもいたたまれなかった。

 あの手この手で誘ってきたのは彼女からだ。
 だから俺は悪くない、とまで主張するつもりはない。

 ただ、初めてなら初めてとあらかじめ伝えて欲しかった。

 ちなみに、スーパー銭湯の話である。
 最初は断固として拒否をした。
 いくら女湯とはいえ、彼女の素肌を俺以外の目に晒すとか狂気の沙汰でしかない。
 だが、基本的に彼女のワガママはなんでも聞き入れてあげたいのが俺だ。
 珍しく頑なな彼女の意思とプレゼン力によってドロドロに絆される。
 彼女は常日頃からホテルに連泊していることもあり、大衆浴場には慣れていると思って油断していた。

   *

 遡ること数時間前、夕飯を食って少し経ったあとのこと。

 どうせ風呂なら、ちょっとした旅行も兼ねて家族風呂で彼女も風呂も余すことなく堪能したかった。
 彼女の自宅から徒歩10分圏内のスーパー銭湯の女湯の入り口前で、今さらな本音が喉元から飛び出しそうになる。
 あからさまにウキウキワクワクと好奇心を躍らせている彼女に、下心しかない腹の内など吐き出せるはずがなかった。

「では、7時半でいいですかね? もっとゆっくりしたかったら連絡してくださいね」
「うんっ」

 楽しそうな後ろ姿を見送って、待ち合わせ時間の19時30分。
 彼女はまだ出てきていないようで、ひと足先にフルーツオレをいただくことにした。
 リクライニングチェアに座って、彼女に連絡しようと携帯電話を手に取る。

『ちょっと遅れると思う』

 シンプルな文面の中に彼女の焦りを感じたのは、交際という経験値を積んでいるからだろうか。
 既にメッセージを残してくれていた彼女に、俺はすぐに返信をした。

「ゆっくりでいいですよ」

 すぐに彼女とやり取りができるように携帯電話を離さないでいること、約30分。
 20時を回ったところで、彼女が少し疲れた様子で帰ってきた。

「まだ濡れてませんか?」
「え?」

 肩にかけているバスタオルに、わずかに触れている彼女の毛先はまだ湿り気を帯びている。

「帰りは歩きですし、ちゃんと乾かさないと風邪引いちゃいますよ?」

 肩にかかったバスタオルで軽く毛先を押さえて水気を取るが、もう一度、乾かしてもらったほうがよさそうだ。

「ドライヤー、待ってる人が多くて焦っちゃったのかも」
「ついでにクシも忘れて雑になったんでしょう?」
「えっ、なんでわかるの?」
「内緒です」

 彼女の問いには笑ってごまかす。
 ブラシを通せば彼女の髪の毛はもっとウルウルツヤツヤになって、ガチの天使の輪っかができあがるからだ。
 焦ってしまい、クシは自販機で買えることすら失念したのだろう。
 カバンから俺が持ってきたヘアブラシを取り出して彼女に手渡した。

「待ってますから、きちんと乾かしてきてください」
「え、でも、待たせちゃうよ?」

 土曜日のこの時間帯だ。
 混雑しているのは見ればわかる。
 ドライヤーがどれだけ併設させれているのかはわからないが、スキンケアも同時にともなれば、時間がかかるのは想像にかたくなかった。
 それよりも、彼女をこの寒い時期にスーパー銭湯に連れ出した挙げ句、風邪を引かせてしまったときの罪悪感のほうがデカい。

「かまいませんよ。あなたを待つ時間は好きですから」
「へっ」

 すっとんきょうな声をあげた彼女のその顔が、みるみる赤くなっていることに気がついた。

「あの、さ。外でそういうこと言うの、恥ずかしいからやめて」
「……」

 それを言うなら、手を出せないこの状況で、そんなふうに切な気に睫毛を揺らすのをやめてほしい。

「なら、くだをまいてないで、さっさとドライヤーし直してきてください」
「わかってるってば……。荷物、見ててもらっていい?」
「ええ。もちろん」

 彼女の荷物を預かり、彼女の背中を見送った。

 戻ってきた彼女の髪の毛はツヤツヤの状態だったが、今度は肌艶がよろしくない。

「スーパー銭湯って初めてだから、人酔いしたのかなあ?」
「初めっ……!?」

 はぁぁあああ!?

 彼女をリクライニングチェアに座らせて、俺は急いでスポーツドリンクを自販機で買った。

「それ、多分、水分不足です」
「水分……」

 スポーツドリンクを彼女に渡して、飲むように促す。

「脱衣所や風呂に水飲み場があるはずなんですけど、多分飲んでないですよね」
「知らなかった」

 ぽやぽやしながらスポーツドリンクを口に含む彼女に、俺は天を仰いだ。

   *

 すっかり湯冷めしてしまった彼女を、俺は彼女の自宅まで送り届ける。

「これは俺ンチで洗っておきますから、暖かくして休んでくださいね?」
「えっ。帰るの?」

 彼女のスパバッグを持ち帰ろうとしたとき、その腕にしがみつかれた。

「……てっきり、い、一緒にいてくれるのとばかり……」

 うっ。

 あざとく瑠璃色の瞳で見つめられて、決意が揺らいだ。

 俺だってそのつもりだったが、湯あたりからの湯冷めまでしてしまった彼女を少しでも休ませてあげたい。

「このあと、洗濯とかゴタゴタされたら落ち着かないでしょう」
「いい……」
「いいわけないでしょう」

 それらしい気遣いを並べてなんとか取り繕っているが、玄関を跨いでしまったら自制なんてできる気がしなかった。

「銭湯の香りでほかほかになったれーじくんと、ギュッてしたい」

 俺が彼女に絆された決定打をここでも使われて、言葉につまる。

「俺、我慢なんてできませんよ?」
「大丈夫。もう平気だし」

 ぐいぐいと、彼女は俺を玄関に引き連れた。

「だから、一緒にいてほし……っ、んっ」

 その先の彼女の言葉を、唇で塞ぐ。
 彼女の代わりに、玄関の鍵とチェーンをかけた。
 木枯らしで冷えた彼女の体温を、温めるために。

1/18/2026, 9:06:16 AM

もうこの季節なのに、金木犀の匂いがしないね。
と誰かが言う時、ないものに気づく。
ないことに違和感を覚えているのが
なんだか素敵だなと思うのです
もうすっかり冬ですが,雪国ではない私の地域では
雪が待ち遠しく思える
雪ってなんだか特別で
雨も最近降らないですね。と
そうやって一つずつ思い出したい。

1/18/2026, 8:32:45 AM

スペース確保
下記に、前日の題材


題材【木枯らし】より



凪いだ
浅い湖のような
水面鏡に広がる
赤いコントラストが
何故かもの凄く
綺麗だ

澄んだ
朝の湖のような
水の層に広がる
不透明な靄の波紋が
何故だかとても
美しい

朝日が差し込んでいる
水の表面が凪いでいる
足元の鏡に映っている
僕が、映っている
波紋が絵を描いている
赤い、波紋の靄が

その中心に、佇む木を
隆々と伸びている枝を
縁取る瑞々しい木の葉
緑の瑞々しい木の葉が
木漏れ日を抱きながら
視界の端を横切って、

横切って
倒れて行く

倒れてる、揺れている
自分自身が?
赤く染った水を叩いて
濡れていく、
水と同じ色をした口が
半分見えて

浮かべた凄絶な笑みは
消えていく存在からの
虚しい信号であったが
消え行くと同時に彼は
赤色に水色に調和し、
何故だかとても

綺麗だった



前日題材【美しい】より
パッと思い付いたイメージをやたらに詰め込みました

1/18/2026, 8:28:02 AM

木枯らしが吹いた。
 着ていた上着が薄くて、体が小刻みに震えた。
 さっさと帰った方がいいとは思ったが、今日は絶対に譲れない予定があった。
 君と一緒に出掛けるって約束をした。
 そして、その時、気持ちを伝えるって、決めたんだ。

 君が約束の場所で待っている。
 君は僕の姿を認めると、「遅い!」と笑いながら言った。
 その笑顔もかわいくて、僕は――、

 木枯らしが一層強く吹いた。声は風に乗って掻き消された。

「え? 何?」
 息を切らして、笑う君のすぐ傍へ。
 今度こそ君の耳に届くように。


『木枯らし』

1/18/2026, 8:16:48 AM

"木枯らし"

木枯らしは冬のはじまりを告げて、春一番は春のはじまりを知らせる。
冬のはじめ頃って何してたっけ……。
仕事内容でしか思い出せないのって悲しいね……。

そういえば、木枯らし1号が気象庁から発表されるのは東京地方と近畿地方だけなんだよな。
春一番は北日本を除く8つの地域で発表される。
地域によって発表される事項が違うのは面白いよね。

1/18/2026, 7:44:46 AM

木枯らし

三連休は暴風で雪が降ったは降ったけど積もらなかった。
ありがたい。
今週はJCPZの影響で大雪。。。やめて!

1/18/2026, 7:42:39 AM

木枯らしが吹く。
昼間の春のような暖かさを切り刻むように。
ひゅうと吹く風に一瞬、息が止まる。

風が落ち着くと
私は、呼吸を思い出した。

水無月はじめ

1/18/2026, 7:28:38 AM

木枯らし

「今日は風が強くて寒いね」
彼と一緒に、彼の家族であるワンちゃんの散歩に出た。
「そうだね。木枯らし1号が吹くかも。って言ってたな」
そう言いながら、私の右側にいた彼が左側に移る。
「?」
何で移動したのかな?と首を傾げていると、絨毯のように敷き詰められた木の葉が、舞い上がるくらい強い風が吹いた。
「わっ…あれ?」
木の葉が舞い上がるくらい強い風なのに、私はほとんど風を感じていないことに気付く。
「どうかした?」
私に笑顔を見せる彼の髪が、風に揺れているのを見て
「ううん、何でもない」
彼が、風から私を守るために移動したと知る。
「寒いから、手をつないでもいい?」
「うん」
彼に、ありがとうと大好きの気持ちが伝わるように、私は彼の手をギュッと握ったのだった。

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