冬至。

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休みの日が合ったので、同僚と2人ショッピングに出掛けたその先で。
一際騒がしい人の群れが進行方向に現れる。
その中央で激しく泣いている女の子の姿が見えた。
みんな彼女を取り囲み何とか宥めようとしてる感じ。
「迷子なのかなー?泣いちゃってるねー」
横に立つ彼女をちらりと見て言う。
見上げた同僚は何の返事もせずまっすぐ真剣な目でその女の子を見つめていた。
相いも変わらず収拾がつかない目の前の輪に。
突然ツカツカと近寄り出した同僚にびっくりして追い掛ける。
「ちょ…どこ行くの?」
彼女はその輪の中心に辿り着くと、
「泣けばいいと思ってるの!!」
凛とした声で言い放った。
その場の空気が凍りついたと思う。
冷たい空気が通り抜けた。
その場にいた人全員が驚いて動きが止まる。
静まり返った中に彼女に集まる視線。
彼女はいつも容赦ない。
それは子供であろうとも同じ事。
木枯らしみたいな人だと思う。
「あんたちょっとその物言いはひどくない?」
その場に居合わせた年配らしき女性が彼女に非難の声をあげる。
その人にサッと視線を寄越して
「こう言うの、優しくするだけじゃ埒があかないと思うんです。サッサッと用件聞いちゃえばいいんですよ」
そう言い放つとまた女の子に視線をやって
「あんたも泣いてばかりじゃいつまで経ってもママに会えないよ。名前は?ちゃんとあるんでしょ」
しゃがんで女の子と目線を合わせる。
間近で見つめられた女の子の涙はいつの間にか止まっていて怯えたようにもごもごと名前を言ったみたいだった。
「聞こえない。もっと大きく言わないと分からないよ」
ピシャリと言い放つ。
女の子は怯えながらもみんなにも聞こえるぐらいの大きさで名前を言った。
「やれば出来るじゃん」
そう言って彼女は笑って女の子の髪をクシャリと撫でた。
褒められた女の子もそれで緊張感が解けたのかその後に続く質問にも雄弁に答えていく。
「じゃあ、わたしについて来れる?迷子センター行くよ」
彼女はわたしに視線を向けると迷子センターの方を指さして先に歩き始めた。
その後ろを数歩遅れて付いていく女の子。
手を引くわけでもないし話し掛けて行くわけでもない。
だけど歩調は女の子が追い付けるぐらいの速度だ。
その後にわたしも置いていかれないように連なって歩いて行く。
やっぱり彼女は、木枯らしみたいな人だと思う。
でも彼女の木枯らしは優しい木枯らしなのだ。



                  (木枯らし)

1/18/2026, 9:52:44 AM