「さよなら」
影の濃い夏に「さようなら。」
春風が頬を引っ掻くような日に「さようなら。」
冷たく凍てつくような日に「さようなら。」
木々が紅く染め上げられた日に「さようなら。」
どれも同じ別れの挨拶でも、また明日。と言葉は続いた。
それでも、きっと。今日の「さようなら」は明日が無いだろう。
いつまでも貴方を愛することは私にとって、難ではない。でも貴方にとって私と紡ぐ日々はきっと苦しいかったのだろう。
「さようなら」
荷物をたくさん抱えて、こちらを振り向くことなく
玄関を開け歩いていった。
その時の貴方の背中は、少し小さく見えた。
貴方から言い出したことなのに、寂しそうにしないでほしい。
私の方が何倍も何倍も貴方のことが大好きで、今日という日が寂しかった。
だから。
早く、歩いていって。
私が過去の女になるように、早く時間が過ぎますように。貴女の記憶の私が、嫌いな女から愛おしかった人になりますように。
2度と逢うことがありませんように。
荷物を抱えた貴方は「さようなら」と言った。
この先に続く言葉は無く、ただ沈黙が続いた。
目頭を紅く染めた私と貴方はきっと、別れる者に見えないだろう。
貴方の愛が他人に注がれるのは嫌だけど、私を愛してくれる貴方がいたことは確か。
ねぇ。じゃあね。
遠くの小さな貴方の背中にそっと呟いた。
貴方に届くことはなくてもこの言葉は私の心に強く、
強く残ることだろう。
「さようなら。」いつまでも恋しく思うことはやめておこう。
やめて居れたのならばこの胸は痛くなかったのだろうか。
1/18/2026, 10:10:51 AM