未知亜

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 鍋が沸き立ち火を弱める。シチューを作るつもりがルーを忘れていた。面倒になって、買い置きの鍋つゆを適当にぶちまける。
 ここ数日は春みたいな陽気だった。気温が元に戻っただけなのに、前より余計に寒い。心を木枯らしが吹きすぎていく。
「最初から」
 つぶやいた言葉が、じゃがいもと玉ねぎしか入っていない鍋に溶けた。
「あったかくなんかしなきゃいいのに」
 どうせ冷たくなるのなら。

『木枯らし』

1/18/2026, 9:58:32 AM