未知亜

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8/12/2025, 9:56:37 AM

あっけにとられた僕に君は風のように笑った。

二度は言わないよー。

伸ばされた手が僕の右手からアイスをさらう。

あー。夏って感じする。

誤魔化すみたいに齧り付いた唇の端のクリームが、
まるで虫みたいに僕を引き寄せて。

口の端から君の味がこぼれる。


『こぼれたアイスクリーム』

8/11/2025, 9:47:22 AM

あなたの後悔が少ない方に進みなさい。
そう、あなたは笑った。
あまり先のことを考えすぎず、嫌だなと思う方には行かないこと。
意外とそれだけで、目の前が開けることもあるよ。

けれど、
やさしさなんていまはいらない。

『やさしさなんて』

8/10/2025, 9:57:39 AM

目が痛い。
週末から何度泣いたのか、自分でも思い出せなかった。
ドライアイ気味で買ったはずの目薬が、机の隅で笑っている気がする。

パソコンを閉じ目を揉んだ。
いろいろ調べて頭がパンクしそうだった。

メッセージの通知音がする。
「いい風が吹いてるよ」
なんて皮肉な表現だろう。
風どころか八方塞がりじゃないか。

窓がカタカタ音を立てた。
いや、違うか。
感じようとすれば、風は必ず吹くのだ。


『風を感じて』

8/9/2025, 9:56:31 AM

心から安心できる場所なんて、ほんとにあるのかな。
答えを求めるでもない呟きに、
簡単に大丈夫なんてとても言えないし。
君の前を去ると決めた僕に、
何を言えた義理もないけど。

ただ涙をこぼすだけだった君が、
こんなにもしっかりした瞳をしてるから。
今いる場所も未来の行方も、
君には随分見えている気がしてるから。

その時はたぶん夢じゃない。


『夢じゃない』

8/8/2025, 5:17:10 AM

出かけようと扉を開けた矢先に雨。
みるみる黒い雲が広がり、雷が轟いた。
今日に限って予報を見逃したのは、確かに僕の落ち度だけど。

君とはぐれて狂いだした心の羅針盤。
あれからなにをしても上手くいかないんだ。
いちばんの基準が根底から揺らいで、
ふらふらゆらゆら
まるで当てずっぽうの方角を示す。

真っ赤に染まったレーダーの画面を閉じ、僕は大きく息を吐く。
まっすぐに闇雲に、煙る空へ飛び出した。

『心の羅針盤』

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