「いい匂いがするでしょ〜?」
玄関先で君が花瓶を指す。
「知ってる? もっといい匂いにする方法」
サンダルを半端につっかけて君が身を乗り出す。
「こうやって吸い込むでしょ」
形の良い鼻が黄色や桃色に埋まる。
「それでちょっと浸って」
目を閉じた横顔が上を向く。
「それからまた嗅ぐっ!」
色彩に鼻が突っ込んでいく。
「こうするとね、よりしっかり感じられるんだって。なんかで読んだの」
「それ、ほんと?」
苦笑して靴を脱ごうとした私を君が押し返す。
「いいから、試してみなって」
その日はなかなか部屋に入れてもらえなかった。
君と出逢って、君の世界の切り取り方と出逢った。
口では永遠を誓いながらどこか嘘くさい気もしてた。
明日世界が終わるなら……それもいいなと思ってた。
『君と出逢って、』『明日世界が終わるなら……』
初めて煙草を吸ったのは、こんな日暮れだった気がする。
鞄から取り出した小箱には小さな星が描かれていた。端をトントンと叩く指が手慣れていてドキドキした。
当たり前のように差し出された箱を受け取って真似をする。風が強くて火をつけられずにいると、あなたはライターを奪い取り、手で覆いを作って火をつけニヤリと微笑ってみせた。
あなたの向こうに広がったピンクとグレーと青の空へ、煙がさらわれ明度を落とす。あなたはいつも容易く火を灯す。思いもしない速さで。
あなたの手のなかで小さな星が散る。
『二人だけの秘密』
『何もいらない』『雫』
部活、何入るか決めた?
『夢見る心』『桜散る』(後日投稿します)
棒付きアイスを買ったのは子どもの頃以来だった。並んで同じものを食べてても、必ず口を近づけてきた。
もう二度と誰にもひと口もあげない。
もう二度とアイスなんか食べない。
ずるいよなあ。
私の視界に勝手に入っておいて。
なかったことにしちゃうんだもん。
ずるいよなあ。
私の世界をぜんぶ奪っておいて。
届かない場所に消えちゃうなんて。
『届かぬ想い』