「こんなの、本当の恋じゃないよ。
着心地がいい、シルエットがきれい、色味がシックで落ち着いてるなんて、その気にさせる言葉と一緒に並べられた洋服みたい。
身につけた自分を想像して、勝手に四割増くらいでかっこよくしちゃってさ。
帰って着てみたらこれっぽっちも似合ってないのに。
こんな服、全然欲しくなんて無かったって気付くのに。
ずっと易いほうに流されてくんですか?
忘れ去られて放っておかれる服の気も知らないで。
「本当かどうかって、そんなに重要なのかな?
服とか全く詳しくないけど、その人に似合うかどうかなんて、その場の試着だけじゃよく測れないだろ。
それにそんなこと、誰かに決められるもんじゃない。
心地いいかどうかは、たぶん未来の自分だけが知ってる。
俺は、最善だと思う方を選びつづけることしか出来ないから。
そっちこそ、難しく考えすぎんなよ。
拒まれてなお強く引かれた手首は、それ以上抵抗することなく相手の胸に収まった。
『True Love』
7/24/2025, 7:12:13 AM