『月夜』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
自己啓発本を読んでみた。
「◯◯すると良い」
エビデンス(根拠)を示すために、
他人のベストセラー書籍や、
他人の研究データを引用する事が多い。
あれ?
間違えて「自己啓発本の広告本」
を買ってしまったかな?
と錯覚するくらい、
他力本願なエビデンスである。
しかし、
読者を説得するには必要なことだ。
「三丁目の豆腐屋のオジサンが、タバコ吸っている時に気づいた真理です」
よりも、
「ハーバード大学名誉教授の長年の研究により示された結果です」
の方が信用できる。
ならば、
そのハーバード大学名誉教授の本を読めば良いのではないか?
と思うのだが、
「難しい事はいらないから、要点だけ教えて欲しい」
という凡人には、自己啓発本でまとめてくれた方が助かる。
読者が気をつけないといけないのは、
自己啓発本の著者が、まるでハーバード大学名誉教授だと思い込んで、
「このひとのおかげで変われた」
と陶酔し錯覚することである。
いやいや、
まとめてくれたのは感謝します。
その才能にも感謝します。
ですが、
研究したのも、ベストセラー書籍を書いたのも、アナタじゃない。
本の帯に
「累計(出版した本あわせて)100万部!」
とか記載してますけども、
素材全てアナタのモノではないですよね。
と、ツッコんでしまう。
それなら、もういっそのこと、
「このタイプのあなたには、この本がオススメ!」
という、全力で他力本願した自己啓発本の紹介雑誌で充分な気がしてくるのである。
とはいえ、
お手軽に要点だけ教えてくれる本は助かる。
もしかしたら、
AIが自己啓発してくれる未来があるかもしれない。
え?もうある?
それはそれで、
「怖い部分もあるな」
とワガママを言う自分がいる。
『月夜』
部屋の窓辺に、白い猫が一匹。
穏やかな月の光に照らされ、心地良さそうに
目を細めるその猫は、私の飼い猫である。
珍しく部屋に来たかと思えば、
窓辺に座り月を見ている。
ただ静かに、そこにいる。
窓の隙間から風が流れ、
カーテンが猫を優しく包み込む。
嬉しそうに喉を鳴らし、細いしっぽが揺れる。
「おいで。」
私が呼ぶと、くるりと振り向き、
そばに駆け寄ってきた。
頭をすりすりしながら、隣にぴたりとくっつく。
「月が綺麗だね。」
撫でながらそう言うと、猫は柔らかく微笑んだ。
ゆっくりと目を細め、私をじっと見つめる。
甘い声で、「にゃあ」と鳴いた。
いつだったかな
どうしようもなく寂しい日があった
満月だったから外に出てひとりで月見してた
ほんとは誰かとしたかったけどね、
それでも、ひとりでも、月は綺麗で
なんだかちょっとだけ
明日頑張れる元気が
1歩踏み出せる勇気が
出た気がしたよ
明日もがんばろう、そう思えただけで
この夜にも意味があったのかな
……まあ、次は誰か誘って月見したいけど
#26 月夜
綺麗な月が見える夜に、ワルツを踊ってみたい。
微かな月明かりに照らされて、可憐で優雅な舞を、愛しき人と一緒に。
そんな夢物語を妄想している。
黒で覆い尽くされた空。
過剰な光を浴びせるパソコン。
カタカタと鳴りやまないキーボード。
周囲には人っ子誰もいない。
見てわかる通り、残業中だ。
真っ暗な夜空と機械的な明かりとキーボードに向かって舞い上がる腕はあるが、先程のロマンティックな妄想とは到底遠い。
所詮夢物語は夢物語なのだ。
私は腕を少し止めて職場の窓から空を見あげた。
月は見えない。
そもそもここの階層が低い且つ異様に高いビルが何軒も建ってるせいで月なんて見えない。
ため息が零れた。
早く仕事を終わらせないと。
綺麗な月夜とは程遠い、微かに光る蛍光灯の下で私はエンターキーを押した。
この村は、晴れた月夜に、今の平穏に感謝し今後も続くことを願って、空に祈りをこめる風習がある。それは私にとって、物心ついた頃から当たり前のことだった。
今日も月がきれいに見える。私は家の前で手を合わせて空を見ていた。
「この村の人は、よく祈ってるね。」
急に側から声が聞こえて驚いた。全く気づかなかったし、祈っているときに話しかけられることはほとんどない。その方を見ると、白い外套で身を包み、フードを目深にかぶった人が立っていた。顔は見えず、恐怖が襲ってくる。
「…誰?」
「旅人。最近この村に来た。」
声から女性であることがわかった。なんとなく悪い人ではなさそうだ。
「…月夜に祈る風習だよ。」
「何で月夜に、何を祈るの?」
タイミングが良かった。今日、その歴史について知ったところだ。
「この村は、大昔『月夜』様に助けられたらしい。それで、月夜に。祈ってるのは、平和だよ。」
「…そういえばこのあたりだったね、魔獣討伐があったのは。」
…どういうこと?
「このあたり、魔獣が出るの?」
「…昔の話だよ。今は、結界がある。」
私が不安になってそう聞くと、彼女は落ち着いた声でそう言った。
「今が平和ならいいか。」
「で、ツキヨ様って?本名なの?」
「いや、違う。姓はシャルガレットで、名は知られていない。」
そう言った瞬間、彼女の雰囲気が一瞬だけ変わった気がした。
「…そう。で、何でツキヨ様?」
でもその雰囲気は一瞬で霧散して、彼女はまた聞いてくる。
「容姿が月夜みたいだったらしい。」
「…そういう人は、たくさんいるんだね。」
彼女はそう呟いて息を吐いた。
「ねぇ、何を言ってるの?」
さっきから意味がわからない。私が彼女をにらむと、彼女は徐にフードを脱いだ。
「こういうことだよ。」
淡い金の長髪が、そよ風になびいた。その髪の隙間から見える、切れ長の紫水晶のような瞳は、まるで夜に吸い込まれるようだった。整った顔立ちで、すごく美人だった。
「何者なの?」
「私が、そのシャルガレットだよ。」
彼女は何かを思い出すように言った。
「いい村だね、ここは。ちゃんと昔のことが伝えられている。」
いろいろ聞きたいことがある。本物のシャルガレットだというのなら、何で生きている?とか。でもそれよりも、ただの風習だった祈りに、すごく歴史と意味を感じた。もっと大切にしようと思った。
あしひきの山より出づる月待つと
人には言ひて妹待つ我を
だったか。万葉集の一節である。
意味としては、
月を見たいと他人に言い訳をして、
本当は貴方に会うためにここで待っている。
となる。
1300年という長い歴史の中でも、
恋というのは色褪せないものだなと思う。
人間の本能なのかな。面白い。
今で言う、エモい。になるのか。
こんなにロマンチックに描ける恋なんて
さぞかし楽しいものだろうな。
月が綺麗ですね、もそうか。
美しい比喩を見ると、
「まだ人間は捨てたものじゃないな」
と思える。
テーマ:月夜
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P.S.
テーマ『たまには』『欲望』
書けてなかったテーマ書きました!
春・夏・秋・冬
この四季の中で1番好きなのは、王道ですが、秋が1番好きです。
と言うのも、ほんとありきたりなんですけど
暑くもなく寒くもないから
そうなると春もだろってなる方が多いとは思いますが
私は別れの多い春は、得意じゃありません。
秋は紅葉、食べ物、なんと言っても月明かりが
秋特有の澄んだ空に映えるからとても好きです。
澄んだ空に浮かぶ月に照らされる貴方の優しい横顔が好きです。
ただそれだけなの
何事もなく、特段良いことがあったわけでもなく、ただ無事に今日の仕事が終わってくれただけ。
頭の中は何も浮かんでいないフラットな状態で、会社から駅までの道をいつものように進み、一つ目の角を左に曲がる。
その先の空に、丸い月が浮かんでいた。
今日って満月だっけ?
でも、まんまるい月じゃない気がする。
仕事終わりの空っぽの頭の中を、お月様が急に照らしてきた。
電車に揺られ、なんの気なしに「今日は満月?」とスマートフォンで調べてみる。
やっぱり、満月は明日だ。
明日覚えていたら、財布をフリフリしようかな。
満月の日の、金運上昇のおまじないだ。
別に、毎回必ずやっているわけではないけれど、願うならやはり金運かな、と思うようになったのはいつからだろう。
学生のころの願いごとは恋愛一択だった。
恋愛系のおまじないは、気がつけば、全校生徒の女子全員がやっているんじゃないかと思うくらいに、いつも誰かが恋愛成就を願っていた。
そのパワーを少しでも勉強に使えばいいのに、と今は思ってしまうが、自分の世界は好きな人で埋め尽くされている、そんな世代だった。
満月だけでなく三日月にも、好きな人に思いが届くように願っていた記憶がある。
いつも誰かの恋バナを聞かされて、お月様は大変だろうな、なんてことを考える世代になってしまった。
今は恋愛に捉われない、幸せであればそれでいい。
ふと、スマートフォンを手に、再びなんとなく「次のブルームーンはいつ?」と調べ始める。
ブルームーン…ひと月に2回満月があるときの2回目の満月。
見ると幸運が訪れるらしい。
月の浮かぶ夜は、何かを願いがち。
どうやら、何歳になっても、そこは変わらないらしい。
お月様、いつもお騒がせをしております…
スマートフォンを膝の上にゆっくりと伏せて、電車に揺られている少しの間、窓から見える月を眺めていた。
【月夜】
[追記、どちらにしても、神様からの愛である]
生検の結果、難病の遺伝子があるとは言えず、無いとも言えず、自己免疫性疾患の経緯に酷似しているため、疑いは晴れず、いずれステロイドを断ち、その時に肝炎にならなければ薬剤によるもの、再発すれば難病自己免疫性肝炎確定。
ただ、一回目と二回目の薬剤が今後少しでも身体に入れば、即肝不全で手の施しようが無く、死ぬとのこと。今回、薬剤による急性肝炎だった場合、ステロイドが効いた事は不幸中の幸いで3度目は無い。
これは、只今保護観察中……。
神様は、わたしが今後どのような生き方を選ぶかを見ている。
神様は結果をもう既に決めていて、今の時点ではわたしは知ることが出来ない。わたしが出来る事は、日々完全燃焼するしかない。自分の身の上に起こった、すべての忌まわしい出来事も全て昇華してしまわなければ、また生まれ変わってやり直しになる、それは無期懲役だ。
生まれ変わりたくないならば、やり残しをする訳には行かない、今生で完全燃焼するしかない。恨みも悲しみも怒りも、やるせなさも、そんなの全部神様にお返しする生き方をするしかない。感謝も優しさも、気付きも思いつきも、褒められた事も全て神様のものだ。自分のものなど何一つ無い。努力も名前も命も全て神様のもの。身体と同じで、全て必ず返さなければならない。
自分で何度も何度も良いことも悪いことも思い出して、がっつり手放せない生き方はもうしない。
そう遠くはない時期に確定すると思う。
無罪は絶対に無い。さらなる執行猶予付きか無期懲役か、そのどちらかしかない。
どっちにしても、命の継ぎ足しを選んだのは自分なんだから、その責任だけは自分にある。文句なんか言えない、無期懲役だとしても受け止めるしかない。
結果は、神様だけが分かっている。
わたしが、継ぎ足しの人生を選んで、それをどう生きるのかも、神様は分かっている。
月夜/13夜
銭湯に行きしな
空を見上げると
東に月が出ていた
夕陽の色を纏う時間
小さく見える月は13夜
お風呂を上がって帰る頃
西に傾き大きなライトが
煌々と照らすように
影も明るく見える夜
洗面器の石鹸箱と
シャンプーがカタリというまで
見上げて
今夜は月が綺麗ですね
と夏目漱石の書いたラブシーン
を思い出してた
『月夜』
まるで月の光の音でも
聞こえてしまいそうなほど
どんなにそっと歩いても
足音はうるさい部類
彼はずっと見ている
私を見てるのか
それとも他の人を見てるのか
はたまた違う何かを見てるのか
目がないからわかんない
そもそも彼は遠すぎるから
何を見てるのかさえわからない
それでも少なくとも
私は彼の視界に居るのに変わりはない
ちょっと意味もなく、手を振ってみる
手が生えて振り返してきたりして
―――ちょっと……こわ面白いかも
〜シロツメ ナナシ〜
月夜
夜が紡ぐ言葉が好きだ。
透明で、粒が揃っていて綺麗な順序で並べられたそれをなぞるのが楽しみだった。それはまるで恋のようだった。
──もし、私が月だったら。
ありもしない「もしかしたら」を何度も考えた。或いは星でも良かった。夜と同じ時間を歩めれば透明な言葉に触れられたのに。
ある時、「置き手紙だよ」と添えられた言葉を見つけた。どこか怖がりなその文字はいつもより少し色を含んでいた。たまたま好きだったその色を見て、私宛ならいいなと思った。出来心で宛先を明記せずに返事を編んでみた。出来上がったそれはどうにもたどたどしく、目の荒い文字列は到底贈り物には相応しくない代物だった。
「お返事ありがとう」
もう1枚のメモを見つけた時、この文字を汚してやろうと思った。
幾度目かの置き手紙の横に、夜を汚す光の名を冠したそれを透明な軸を持つ筆記具とともに送り付けた。朝焼けと闇夜の合間に触れる僅かな時間を閉じ込めたような藍で、言葉を紡いで欲しかった。そうしてあわよくば、その色に私を思い出してほしかった。
──私は、あさひだ。
私が起きれば夜は眠りにつくし、夜が広がれば私は眠る。
──夜の書く文字が、誰かの闇を照らしたら素敵でしょう?
そんな言い訳とともに渡した月夜の青が、いつか曙に届けばいいなと思っている。
「月夜」
ようやく桜が咲いた。晩ご飯を食べながら見たテレビでそのことを知った。例年よりも数日遅い満開宣言だった。温暖化の世では珍しい。最近では桜は入学式までに散るものになっていたが、今年こそは初々しい新入生を満開の花々の中で迎えられそうだ。
「桜見に行こ!」
同居人は季節の行事が好きなので、当然花見にも行く気らしい。テレビの中では撮影クルーが花見客に揉まれて、真っ直ぐ歩くことすらままならないと伝えていた。
「もう少しあとでもいいんじゃない」
そっけなく答えてしまうと、分かりやすくしゅんとする。こういう所が、好ましいと思う。
「でも……早く行かないと散っちゃうかも」
「もう夜だよ?」
「夜桜見に行きたい!」
少し迷ったが、行こう、よりも行きたいと言われた方が行く気になる。天真爛漫なこの子の願いを叶えてあげたいと思うから。
「じゃあ今から行こう」
外に出ると、想定よりも暗かった。月は霞がかったようにぼんやりとしていて、妖しい雰囲気さえ感じる。スマホのライトで照らしながら、近所の川の土手まで歩くことにした。他愛もない話をしながら歩いていくとすぐに着いてしまった。
辺りが夜に包まれており、他に人はいない。花見客も見当たらず、車もろくに通らなかった。しんとした街に、たまにどこからか犬の遠吠えのような声が聞こえる。
「本当に満開だ」
同居人が感極まるように呟いた。去年も一昨年も、きっとその前も何度も見ているだろうに、毎回新鮮に感動している。こういう所も好ましいと思う。
写真を撮ろうとしたが、辺りが暗すぎて綺麗に写らなかったため断念した。同居人は少ししょんぼりしていたが、目に焼き付けると宣言して桜を眺めていた。
「もう少し月が出ていれば良かったのにね」
あまりにも必死に見るのでつい呟いてしまった。雲がかった月は相変わらず十分な光を与えてくれない。
「朧月って言うよね。こういう月」
同居人が言って、視線を月に向ける。写真を撮れなかったことを悔いているのかと思って声をかけた。
「明日、昼に来よう。そうしたら写真も撮れる」
すると、ふふっといたずらっぽく笑われた。
「朧月夜の翌日には雨が降るって言われてるんだよ。きっと明日には散っちゃうね」
桜を愛しているように見えたのに、そんな事を言うのは意外だった。当人は心底楽しげな顔をしていて、より困惑してしまう。なんと声をかけたら良いのか分からず、無言でその言葉を受け流してしまった。
「だから今夜、ここで桜を見れたのは私と貴方だけ。二人だけの夜桜だよ。来て良かったでしょ?」
ぎこちなく頷くと、右手を取られて引っ張られた。散策はもう少し続くらしい。
それにしても、危うい人だ。純真無垢、天真爛漫かと思えば、艶っぽくて扇情的でもある。いったいどれが本物なのだろうかと怖くなるときもある。
それでも、今こうして月夜を行く瞬間は本物だ。朧月の雲が晴れるように、いつか彼女を全て理解できるときが来るのだろうか。
三日月に腰かけ、こちらを眺めているのは、もうすぐ赤ちゃんが産まれるママ天使です。
ママ天使は、地上の様子をみて、ちょっぴり心配になりました。あちらこちらで争い絶えず、ぐるぐる黒い渦がたちのぼる地球で、これから産まれる我が子たちはどうなるのだろう、と。
目を瞑り、ゆっくり呼吸をしたママ天使は、もう一度地上を眺めました。
すると、わずかにキラリと光る場所があります。じーっと目を凝らすと、そこには以前ママ天使から産まれた赤ちゃんがいたのです。大きくなったその子は、とびっきりの笑顔で走りまわっています。仲間たちと踊ったり歌ったり、とても楽しそうにしています。
ママ天使の目から涙が溢れました。
よく見ると、地上には光る場所がたくさんありました。それらは、黒い渦に巻き込まれることなく、しっかりの光の柱をたてています。
そのことに気づいたママ天使は、ホッとしました。大丈夫、なにがあっても大丈夫、なのだ、と。これから産まれる子たちが地球を救っていくのかもしれないな、と。
お月様がまんまるになる頃、地上にはまたたくさんの光の柱がたつことでしょう。
月夜。
ベランダから、空に浮かんでる月を見る。
見ながら、ホットミルクティーでも飲みながら
君のことを思ってる。
今、君はどうしてるかな?って。
いつも思うけど、君といる時間がいつも楽しい。
ずっとずっと居ても飽きない。
また、明日も会えるかな?。
今日は、月がキレイだからもう少し眺めてよう。
肌寒くなってきたから、何かを羽織りながら。
ひな祭り。
洋子はシングルマザー、朝から晩まで仕事に追われている。
3月2日、とあるアパ−トの一室。
洋子と娘の幸穂がTVを見ている。
「明日はひな祭だね」
幸穂はくるりと振り返り、笑顔で言った。
「そうだね」
洋子はふわりと微笑んで応えた。
「どんなひな人形さんがうちに来るのか楽しみ」
幸穂は無邪気だ。
「そ、そうね…」
洋子は焦った。
うちは貧しいの…。
とてもひな人形を買う余裕なんかないわ…。
かと言って幸穂を悲しませたくないし…。
一体、どうしたらいいのかしら…。
心中穏やかではなかった。
翌日。
テ−ブルの上に白い布が掛けられている。
「幸穂、今日はひな祭りよ、見てお人形さんよ」
洋子は白い布を取った。
すると、可愛らしいお内裏様とお雛様が出てきた。🎎
顔はゆで卵、髪、眉毛、目、鼻、口は海苔、体はおにぎり、着物はだし巻き玉子、帯は三つ葉で作った。
「うわあ、かわいい!」
幸穂は大喜びだ!
創意工夫で2人は楽しいひな祭りを過ごした。
距離が近いのが気に入らない。
変なあだ名をつけて、あまつさえそれをデカい声で呼んでくるのが気に入らない。
警察官のくせに能天気なのが気に入らない。
自らの容姿を盾に、ナンパじみた逮捕をするのが気に入らない。
背が高いのが気に入らない。
今の相棒の大体の要素が気に入らない。
けど。
真夜中の捜査中、隣を歩く相棒の、月明かりに照らされて光る銀髪を眺めるのはさほど悪い気分ではなかったり、する。
……俺も自分の知らないうちにコイツの毒気にやられているのかもしれない、なんて思ったり。
「ん、どしたのそんなに見て?オレに見惚れちゃった?」
「見惚れてない」
「またまたそんなこと言って~~」
「うるさい、集中しろ」
「はーい」
【月夜】
月が綺麗ですね、なんて、言ったらあっという間に顔が火照ってしまいそうなセリフ、囁いたことはないけれど。
仮にそんなセリフを吐いたなら、察した貴方はどんな反応をするんだろう。「俺も」って微笑む? 分からないふりで首を傾げる? それとも、貴方も照れちゃって二人して黙り込む? 試してみたいなぁ。
そんなことを考えちゃうくらいには、今夜は立派な満月。珍しく子供たちも寝静まっていて、お月見するには絶好の夜。
ベランダに出ればもっとよく見えるのだろうけれど、冷えてしまうし窓は閉めたまま、ガラス越しのお月様も十分綺麗。
ぼんやり外を眺めていると、聞き慣れた声と足音が耳に届いた。「どうしたの」って、微笑む貴方が隣に座る。
「うーん…空を見てたの。ほら見て、お月様、綺麗だね」
お題:月夜
ずっと暗い道を歩いてた
街灯もない、彷徨ってばかりの私の道
あなたの一筋の光が希望に満ちて
こんなにもくらい私の道を
月夜のように 眩しいくらい
綺麗な夜にしてくれた .
月夜
真っ暗な夜空の下、月光に照らされた君は果敢なげに僕を見つめていた。
その瞳は僕を痛めつけるようにギラギラと光る。
君の姿を見かける度に僕の胸は空を舞い、鼓動を速めた。
ステンドグラスを宿したような瞳に呑み込まれてしまいそうになる。
君は僕を見つめ、何も語らない。ただ、手を差し出す。
僕はその手を取り、出鱈目なステップを踏む。
細く伸びた指先が僕の手の中に収まる。
君の手は花びらのように軽かった。
汚れた社会の中を泳ぐ君はマーメイドのように汚れない。
「今夜は眠れなそう」君は呟いた。
君の赤く火照った頬が変な気を起こさせようとする。
月夜の下、僕は無垢な花弁をそっと抱き締めた。
夢が覚めないように。
熱を冷まさないように。
君に僕の気持ちが伝わらないように。
僕は紅い花へ接吻をしてしまった。