月夜
真っ暗な夜空の下、月光に照らされた君は果敢なげに僕を見つめていた。
その瞳は僕を痛めつけるようにギラギラと光る。
君の姿を見かける度に僕の胸は空を舞い、鼓動を速めた。
ステンドグラスを宿したような瞳に呑み込まれてしまいそうになる。
君は僕を見つめ、何も語らない。ただ、手を差し出す。
僕はその手を取り、出鱈目なステップを踏む。
細く伸びた指先が僕の手の中に収まる。
君の手は花びらのように軽かった。
汚れた社会の中を泳ぐ君はマーメイドのように汚れない。
「今夜は眠れなそう」君は呟いた。
君の赤く火照った頬が変な気を起こさせようとする。
月夜の下、僕は無垢な花弁をそっと抱き締めた。
夢が覚めないように。
熱を冷まさないように。
君に僕の気持ちが伝わらないように。
僕は紅い花へ接吻をしてしまった。
3/8/2026, 4:27:05 AM