初恋の日
その日は昨日とは何ら変わりはなかった。
いつもと同じ時間に起きて、同じような準備をして、同じ電車に乗った。
僕は腹の底で、繰り返される日々に飽き飽きしていたんだろう。
神様が少しでも憂さ晴らしのように僕の毎日を変えてくれたのかもしれない。
全くもって迷惑なことをしてくれた。
あの人と出会ってしまったのだから。
何も望んでないのに、運命的な出会いをするというのは中々厄介なんだ。
今の僕じゃあの人に声をかけることはおろか目を見ることすら出来ない。
もしも、明日の僕なら少しは目を見ることができたかも知れない。
鳴り止まない鼓動をどうすればいいか、今の僕にはわからない。
激しさを増した鼓動はあの人と出会った瞬間から遠ざかる毎に身体中に強く響く。
大した取り柄もない僕にあの人をどうすればいい。
……少しでも近づきたい。
胸に秘めた思いは鉛のような重さで異質な存在を放っていた。
明日世界が終わるなら……
「明日世界が終わるならどうしたい?」
夕焼けに染まる街並みを後目に私は聞いた。
私の質問に貴方はたじろいだ。
「終わりを食い止めるヒーローにでもなろうかな」
ボケるように貴方は答えた。
赤らんだ頬が私の瞳に写った。
あなたがヒーローになったら私たちの関係はどうなってしまうのだろう。
手の届くところにいた貴方がどこか遠くへ行ってしまいそうだと思った。
私は貴方が遠くなってしまってもひっそりと貴方のことを思い出して生きていたい。
「明日世界が終わる」と言われる日までは貴方を離さずにいたい。
だから、貴方の手を強く握った。
君と出逢って、
君と出会って、世界が変わった。
君と出会えたから、私は幸せになれた。
君と出会う前は私は私らしくいられた。
君と出会わなければ私はそれなりに幸せでいられた。
君と出逢ったことが幸せなのか不幸なのか今はまだわからない。
けれど、思い出になろうと生傷になろうと私は抱えて生きていく。
君と出逢って、そう思えた。
二人だけの秘密
君の嫌いな人。
君の隠したい過去。
僕の見たくない過去。
僕がドジした話。
君が話した両親の嫌なところ。
君は嘘をついたときに目が動かなくなる癖。
僕の本心は黒いこと。
君は優しくないこと。
君は寝相が悪いところ。
僕は君が絶句するほど頭が悪いところ。
付き合った時に決めたルール。
君が僕へ向ける愛。
全て二人だけの秘密だよね。
君の親友や僕の友達が知るよしもない。
二人で背負ったなら墓場まで持っていこうよ。
この先秘密が減ることはないんだから。
優しさだけで、きっと
あなたが自分を殺して、私を好きと言ってくれたらどれだけ僕は嬉しい気持ちになるのだろう。
そして、その事を知ったとき僕はどれほどあなたを憎むだろう。
あなたは優しいから無理をしてしまう。
優しいから嫌だと言えない。
優しいから、僕を傷つけたくないと思う。
生半可な優しさに僕は生かされて、傷つけられる。
あなたは優しいだけでいいと思う。
さよならも嫌いも無理とも言えない。
だから僕と付き合ってくれたんでしょ?
優しさだけで、きっとうまくいくなんて思わないで。
悲しくなってしまうから。
あなたを好きになった僕を赦して。
あなたは優しいままでいて。