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何事もなく、特段良いことがあったわけでもなく、ただ無事に今日の仕事が終わってくれただけ。
頭の中は何も浮かんでいないフラットな状態で、会社から駅までの道をいつものように進み、一つ目の角を左に曲がる。
その先の空に、丸い月が浮かんでいた。

今日って満月だっけ?
でも、まんまるい月じゃない気がする。

仕事終わりの空っぽの頭の中を、お月様が急に照らしてきた。
電車に揺られ、なんの気なしに「今日は満月?」とスマートフォンで調べてみる。

やっぱり、満月は明日だ。
明日覚えていたら、財布をフリフリしようかな。

満月の日の、金運上昇のおまじないだ。
別に、毎回必ずやっているわけではないけれど、願うならやはり金運かな、と思うようになったのはいつからだろう。

学生のころの願いごとは恋愛一択だった。
恋愛系のおまじないは、気がつけば、全校生徒の女子全員がやっているんじゃないかと思うくらいに、いつも誰かが恋愛成就を願っていた。
そのパワーを少しでも勉強に使えばいいのに、と今は思ってしまうが、自分の世界は好きな人で埋め尽くされている、そんな世代だった。

満月だけでなく三日月にも、好きな人に思いが届くように願っていた記憶がある。
いつも誰かの恋バナを聞かされて、お月様は大変だろうな、なんてことを考える世代になってしまった。
今は恋愛に捉われない、幸せであればそれでいい。

ふと、スマートフォンを手に、再びなんとなく「次のブルームーンはいつ?」と調べ始める。

ブルームーン…ひと月に2回満月があるときの2回目の満月。
見ると幸運が訪れるらしい。
月の浮かぶ夜は、何かを願いがち。
どうやら、何歳になっても、そこは変わらないらしい。

お月様、いつもお騒がせをしております…

スマートフォンを膝の上にゆっくりと伏せて、電車に揺られている少しの間、窓から見える月を眺めていた。

【月夜】

3/8/2026, 6:55:58 AM