『鐘の音』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
鐘の音がなる。
聞き慣れた学校のチャイム。
時刻は5時30分。
今日は部活もないし、友達は休み。委員会の仕事も終わった事だしさっさと帰ってしまおうかと思った。
「ねぇ」
聞きなれない声。後ろをむくとそこにはあまり話さないクラスメイトの男の子が立っていた。
「これ、落としたよ。」
彼が手に持っていたのは私のハンカチだった。
「あ、ごめん。ありがとう。」
私はハンカチを受け取り、お礼を言った。
それを見ながら何故か彼はふっと微笑みながら言った。
「君ってなんかそそっかしいところあるよね」
窓から差し込む夕日に照らされた彼はキラキラと輝いて、見とれてしまった。
5時35分を告げる鐘の音が鳴り響く。
恋に落ちる音がした。
リーンゴーン
リーンゴーン
帰り道、教会の鐘が聞こえてきた。どうやら結婚式が行われているらしい。
私は急く足を止めて、しばし聴き入った。
あの人は私のウェディングドレスを気に入ってくれるだろうか。それとも、白無垢派?
なんてことを考えてしまって、恥ずかしくなる。なにせまだお付き合いすらできていない相手だ。
私は早くあの人に会いたくてたまらなくなって、再び走り始めた。
今日は委員会の仕事で帰るのが遅くなると伝えたら、待っていると言ってくれた。
「ただいま!」
普段より大きな声で帰宅を告げると、奥からあの人が顔を出す。
「おかえりなさい。一息ついたら始めましょうか」
「はい!」
今日は家庭教師の日。
先生に会える日。
私は授業の準備をしながら、高鳴る胸をおさえて、あの鐘の音を思い出していた。
テーマ「鐘の音」
電車は線路がないと走れない
線路って人生みたいだなぁ………なんて
長く長く敷かれた線路のがあれば
そのまま走っていけるけど
線路に問題があれば電車は走ることはできない。
人生も全てがなにもかも順調なら
止まることはない。
鐘の音
キーンコーンカーンコーン
あぁまた長い1日が始まった。
よりによって今日の1限は物理。
早く終わらないかな。
なんて当時の私は思っていた。
この何でもない1日が、時を経てかけがえのない思い出に形を変える事も知らずに。
大人になったら、制服を着る事も、
席替えで一喜一憂する事も、
あんなに全力で勉強をする事も、
お弁当を屋上で食べる事も、
長縄をありえないくらい飛ばされる事も、
クラスの色恋事情で盛り上がる事も、
友達との中身のない会話で爆笑する事も、
全部出来なくなるんだぞ。
青春の思い出って、
過ぎ去ってからやっとその尊さに気づくんだよな…
若かりし頃の私へ。
今を楽しめ!!
あなたたちを祝福するようにやさしく鳴り響いた、教会の鐘の音。幸せそうに笑うあなたのとなりには、あなたにとっていちばん大切なひとの姿があった。
そこにいるのは、僕ではなかった。けれどあなたが今幸せであるのなら、それで良かった。
自宅でひとり、引き出物のバウムクーヘンを口に運んで、お裾分けの甘さを噛み締める。
言えなかった言葉ごとごくんと飲み下して、またひとくち。そうして空になった皿を見下ろしたら、ふいに眦から未練が一粒、皿の上に転がった。
年明けを告げる鐘の音が鳴る前に、僕の中のあなたにさよならをしよう。
誰に知られることもない。知る由もない。
だってもうほら、そこには何もないのだから。
鐘の音
心踊る東方の除夜の鐘ではない
私が魔女になるのが近づく
脳内にゴーンゴーンと降ってくる
世界の住人になることが確定してくる
不老不死の呪いがかかる
ゴーンゴーンと
得体がしれなくなっていく
『鐘の音』
降り積もる雪が古城の窓辺を白く染める季節。
冷たい窓ガラス越しに雪に覆われた庭園を
眺めながら、メアは悲しみに沈んでいた。
実の母は彼女を産んですぐに亡くなり、
乳母に育てられたメア。城での生活は
メアにとって優しいものではなかった。
父の正妻であるサラの存在がその理由だ。
妾の子として生まれたメアを、
サラは快く思っていなかった。
城の人々の関心は、後継者であるメアの兄
ウィルムに注がれ、かつては共に遊んでくれた
兄の態度も最近は何処かよそよそしい。
この広大な城でメアに心を寄せる者は、
父ドレイク、メイド長メルセデス、
乳母マリアンヌ、執事長クロードのみ。
「書き取りが終わるまで食事は抜きよ」
継母の言葉に従い、筆を走らせるメア。
「終わりましたわ」
やっと書きあげたものを継母に差し出すと、
鼻でフッと笑うだけ。
メイドから渡されたトレイを
受け取る間もなく、
「あっ」
手を滑らせスープが床に零れ落ちた。
サラは忌々しげな溜め息を吐く。
「全く、鈍臭さは母親譲りね」
継母の言葉に、背後で控えるメイドの
エレノアが口元に手を当て笑う。
彼女はいつも皮肉めいた笑みや
馬鹿にしたような態度をメアに向けるのだ。
たまらなくなったメアは、
粉雪の舞う日、城を抜け出した。
白い大地に足跡を残す度、
サクッサクッと音が響く。
氷柱をまとった黒い枝先が、
鼠色の空に伸びている。
(あの者たち、今に見てなさい。
わたくしが最強の悪役令嬢となった暁には、
たっぷりいじめ抜いてさしあげますわ)
民家の軒先に飾られたヤドリギの
乳白色の実を見つめるメア。
もうすぐ聖夜祭。家々では、家族が飾り付け
を楽しみ、街へ買い出しに向かい、
和気あいあいと過ごしているのだろう。
お父さまは、わたくしがいなくなったら
悲しんでくださる?
……いいえ、きっと跡取りである
お兄さまのほうが大切なはず。
わたくしがいなくなっても誰も困らない、
むしろあの人が喜ぶだけ。
遠くから教会の鐘の音が聞こえてくる。
メアの心にぽっかりと空いた穴を、
鐘の音が通り抜けていく。
冷たい石の階段に腰を下ろし、
メアは白い息と共に小さく呟いた。
「お父さま、わたくしを迎えに来て。
わたくしが必要だと言ってください 」
しかし、父は出張で遠い国へ旅立っている。
叶わぬ願いだと知りながら、
メアは鐘の音に耳を傾けていた。
ゾンビになった人達に自我はあるのだろうか。
これは一生解消されない疑問だろうと、そう思っていた
7月1日
この日、人類は突然現れた未知のウイルスにより滅亡した
映画やゲームで何度も見たゾンビパンデミックを、まさか自分が経験する事になるとは思わなかった。
最初は少し、ワクワクした。事のあまりの重大さに脳がついていけなかったのだろうと、今は思う。
なんの取り柄もない一般人の俺だが、友人達と運良く生き延びている。
ある日、生活が落ち着き始めたので、寝泊まりしている学校の屋上で感染者たちの観察を試みた事がある。
校庭にいるのは学生服を着た感染者が殆どだ。
それぞれがあまりにも痛々しい見た目をしているものだから、俺は途中から具合が悪くなり目を背けていた。
夕暮れ時になり、ウトウトし始めていた俺は
突然鳴った大きな鐘の音により目が覚めた
鐘の音に反応したのは俺だけではなく、殆どの感染者達は校庭から出て、その多くは住宅街の方へ向かっている。
毎日夕方になると街中で聞こえるこの音。
親に『鐘の音が鳴ったら家に帰りなさい』と言われていた人も
いるだろう。
少なくとも、俺の住んでいるこの街では多くの人間がそう言われて育ったと思う。
だから、だろうか。
彼等は、あんな姿になっているというのに。
それでも親との約束を守ろうとしている。
きっと感染者達に自我はないのかもしれないが
その人の歩んだ人生が完全に消えて無くなる訳ではないんだと
俺は少し安心した
鐘の音
夕闇迫るころ。
街に鳴り響く鐘の音。
いつもの日没を告げるのとは違う、
寂し気で酷く悲し気な響き。
俺は察した。
この町の誰かが、
天に旅立ったのだ、と。
同じ町に住んでいるだけの人の、
訃報を知らせる鐘の音が、
真っ赤な夕日と相まって、
俺を物悲しくさせた。
鐘の音が、聞こえる。
この町の鐘の音は、
こんなに悲しい音色だったとは。
いつも時刻を告げる、
どこか真面目な鐘の音とは違う、
人の血が通った鐘の音。
俺は家へと向かう足を速めた。
あいつに…。
早く、会いたい。
いつもと変わらない、あいつの、
「おかえり」
の声が、聴きたいんだ。
警鐘が鳴る。
眼を閉じれば、
暗闇の中の篝火みたいに、あの日の事が浮かぶ。
その風景を眺めている内に、
ドス黒い炎が本当に私の中で燃え上がるのを感じ、
その度に慌てて眼を開けて鎮火させる。
何度か繰り返す内に、眠るのが少し怖くなった。
警鐘が鳴る。
街の中にある、ありふれた雑音が、
あの時、耳にした不協和音と重なる。
例えば、雨の音。
例えば、雑踏。
遂には、誰かの声すらも。
耳を塞げば、それはより鮮明に聴こえて仕様がない。
思考は迷路の中。
いや、解っている。
眼を逸らしているだけで。
ただそれは………。
警鐘が鳴る。
虚しく、急かすように、警鐘は鳴り続けている。
鐘の音
君に指輪を嵌めている彼の瞳を見て、この間のことを思い出したんだ。幸せにしてやれよって言うと彼はいつになく嬉しそうに笑っていて、本当に本当に、せいせいしたものだ。
私はもう、君で悩むこともない。彼に羨望感を抱くことも、君の目線の先を追うこともない。
彼と彼女の、私の親友と想い人の、結婚式は順調に進んでいる。
二人が永遠の愛を誓うと鐘が鳴り始める。その音はどこか無機質に思えたが、妙に心臓に響く。つい目頭が熱くなったが、隠すこともないだろう。これはきっと、祝福のための涙だから。
桜舞い散る中で見たドレス姿の君は何よりも綺麗だった。
普通なら…いや、身体の力が若く、各組織のはたらきとバイタルのバランスが許容範囲に収まっているなら絶対に、些細な現れとして通り過ぎる「つまらない」ものが、命にかかわる大問題になるときがある。その一つが、高齢者の呼吸確保だ。わが家の最長老は最近、危機に瀕した。
ここ数日、暑さ疲れの影響かその問題にかかりきりの時間が多い。サクション(呼吸確保のための口腔内ケア。粘稠度の高い唾液を吸引除去する作業。介護制度上では訪問看護によるフローのみ)を依頼するかどうかの検討と対症的試行錯誤。仕方ないことではあるが、医療行為と定義されるその作業は完全に医療機関都合が優先され、「今、助けが要る」ときにそれは来ない。名目だけ形にした選択肢で、はっきり言って全く役に立たない。しかも、「こんなこと」を医療機関は病室利用の必要としては受け付けない。
当方なりの「たぶん最善の対処」を決めた。一般市井にある同様機能の機械を購入し、いつでも家族サイドの判断に全責任を置いて、「必要なとき必要を満たす」ことにした…直後にたまたまやって来たケアマネジャーは、機械の箱を見た瞬間に全て理解した様子。えっ、その反応…もしかしてこうする家族って多いの…? 聞いてみたら多いらしい。…そうだよね、だってこれ以外に有効な方法無いもん。
とりあえず、最悪のインパクトをくらわないで進めそうな流れを掴むことはできた。しかし確実に下り坂にある。せめて、除夜の鐘を越えるようなときくらいまで……などと思うのは身勝手なのだろう。「完了」をいつにするかは、本人の裁量だから。
どこかから、「心の準備をしろ」なんて響きが湧く。
困った。私はまだぺーぺーのままだ…
「好きです」
広大なびんせんの真ん中に、ぽつりと弱々しい字が4つ。
少年がこの時間でひねり出せるのはこれが限界だった。
普段触ったこともないような材質の紙を湿らせないように角をちょびっとだけ指で挟み、あの子のもとへ走った。
「がんばれー!」
応援というよりは興味に近い感情の声が、ランドセルの金具からなるカチャカチャという音とともに後ろから聞こえる。
でも今の少年にそんな事はどうでも良かった。
4年という少年には長すぎる時間溜め込んだ思いがその手に在る。
言葉にする事など絶対にできない内気な少年が、この形であれば、と今日伝える事を決めたのだ。
夕方5時の鐘の音が聴こえてきた。
あの子が公園の入り口に停めた自転車に足をかけているのが見える。
「まって!」
息切れの勢いに任せてあの子に声を投げる。
あの子と目が合う。
今まで感じたこともないような緊張感が体をこわばらせる。
次の言葉がでない。あの子からの視線が少年ただ一人に注がれている。
鐘の音の余韻が夕焼けの空に響く。
どんどん膨れ上がる逃げたい心を押さえつけるように
小さな紙を掴む手を目の前に差し出した。
「えっ…」
「これ…よんで…っ」
少年にはこれが限界だった。
あの子の手に少年の4年間が握られたことを確認するやいなや少年は来た方向へ走り出す。
真っ赤な強い光が少年の目を指す。
あの子の頬は何色だったのだろう。
「俺のどこが好きなん?笑」
ってきかれて
え、どこ、、?言葉にできないけど全部かな、
とか咄嗟に思っちゃったけど
今ならちゃんと言葉にできる気がするから
この場を借りて書いていくね
意外とツボが浅いとこ
ワードセンス
匂い
声
ちょいむち体型
服装
話してたことちゃんと覚えてくれてるとこ
大人の余裕があるとこ
フッ軽なところ
あんまり否定しないとこ
頭めっちゃいいのに不真面目なとこ
やる時はちゃんとやること
なんでもチャレンジしたがるとこ
ちょっと意地悪だけど素直なところ
心配性だけど大雑把なところ
最初は大人っぽく見えるけど本当は子供みたいなとこ
たまに擬似音?いっぱい使うとこ
MBTI診断ばっかやってるとこ
聞いてる音楽のジャンルが一緒なこと
バンドマンでギターの弾き方教えてくれる時
勉強教えてくれる時に悩んだら左手顎下に持ってくる癖
結局、全部が愛しいの
私、1年の片思いなんだよ
知らないこともたくさんあるけど
これから知っていきたいって本当に思う
「―――鐘の音だ!」
「―――ねえ、行ってみようよ!」
「―――絶対絶対、叶いますように」
「―――俺と、」
ブチッ。
瞬間、堪えきれずに電源を落とした。
顔から変な汗がだらだら伝ってゆく。不快で仕方なくて、部屋の窓を開けて風を一心不乱に浴びた。
最近話題になっている女性向け恋愛ゲーム、所謂乙女ゲームというやつに、二十歳を過ぎてから初めて手を出した。以前から友人にオススメされてはいたが、いい大人がプレイするようなジャンルのゲームではないと思い、今まで遠ざけていた―――しかしあの日は、高校の頃から付き合っていた彼氏と別れて、精神的にボロボロになっていた。だからか、手を出すまいと誓っていたゲームのパッケージに、手を伸ばしてしまったのだ。
結果。ボロボロだった精神はより悲惨なものとなった。ハッキリ言って、令和の乙女ゲームというものを舐めていたのだ。まさかあんなにも、キラキラ青春出来るだなんて思わなかった。
自分には存在し得ない高校時代ならまだ良かったのだ。しかしなにせ彼氏がいたわけだし、やろうと思えば、あんなアオハルのような経験が出来たかもしれない。それがまた、私の傷を深く抉ってきた。ていうか話は変わるけど、女友達可愛すぎないか? えーあの子たち攻略したいんだけど・・・。
「・・・・・・はあ」
初めてやったせいで、セーブの仕方もままならなかったから・・・やるなら、最初っからになるのか。最初から・・・あの青春を・・・。
ううっ。私もあんな青春をおくってみたかった。同級生と勉強に運動、部活に勤しみ、後輩と交流をしながら、他校の男の子と爆速で仲良くなる・・・そんな青春を・・・最後の方はともかくとして・・・。
ばたりと脱力し、カーペットに寝そべる。そしてゆっくりとそのまま目を閉じた。なんだか、ブーブーとうるさいスマホは無視して。どうせあれだ。私に電話をかけてくるなんて、会社の上司くらいなんだから―――。
好きなあの人は教会であいつと
結婚するようだ
俺は彼女への花束を海に投げた後
教会に足を運んだ
もうすぐで始まってしまう
鐘の音を聞いた。
学校の授業を受けているときほど、時間の流れが遅く感じるものは無い。何度時計を見ても5分とか10分くらいしか進んでなくて、やっと半分過ぎたってなっても、そこから更に時計がゆっくり進むように感じてくる。そして遂に授業終了の時間になっても時計が少しズレていて、数十秒遅れてようやくチャイムの音が鳴る。その瞬間に溜まりに溜まった鬱屈が一気に解放されるようで、私はあの音が好きだ。
なぜこの時期にこのテーマなのかと思っていました。8月6日は広島に原爆が落とされた日で、平和の鐘が鳴らされる日だからなんですね。示唆する投稿をしてくださった方ありがとうございました。テーマから思いもつかなかった自分を恥じます。
黙祷。
二代目の平和の鐘は焼け跡に遺された金属を集めて混ぜて作られたものなんてすね。一代目の平和の鐘は朝鮮戦争の金属特需の中盗まれたとか。どうか二度とこの鐘達が武器になる未来が訪れませんように。
___________
(思いもよらなかった時にした創作)
この人を一目見た時から、鐘の音が頭の中で鳴り響いている。
これは胸の高鳴りからくる教会のベルの幻聴だろうか。それとも、この人を好きになるのはやばいという防衛本能からくる警鐘だろうか。
少なくとも煩悩を捨てさせてくれる鐘の音だけではないと断言できるそれを胸に押さえ込んで、私は彼との契約事項を詰めるべく平然を装った。
___________
恋愛小説における契約結婚はたまに食べたくなるチキンラーメンみたいなものだと思っています。あーこの味この味
___________
「あの鐘を鳴らすのはあなた」を脳内BGMにしながら、埋められ消えた銅鐸のロマンに想いを馳せ、世界の鐘事情を楽しく読んでいました。人の名前をつけられる鐘とか、イスラム教で鐘は忌避されるとか、ひび割れをなんども起こす自由の鐘とか、今日も知らないこといっぱいだ。
寂しい
わけもなく寂しくて
これだけ蝉は騒がしいのに
家族はそばにいるのに
鳥は肩にとまって歌うのに
寂しい
バチあたりかな 恐れます
寂しいが背中にいるから
はがしてほしいだけなんです
不幸面したいわけじゃない
なんでもない顔で歩きたい
空想のなか 旅をして
鐘の音は遠くに
まんまるの白い月 夜の海は秘密の生き物のよう
風が鳴いている
寂しい、と涙が流れたら
嗚咽に溶けてわんわん泣いたら
こんなはずじゃなかったと
たくさん悔いをまき散らして
海も闇もヒトの輪郭もわからなくなって
泣いて わけのわからない罵りや
憤りを、怨恨を、やるせなさを
滔々と
耳がぼんやりして
頭の芯があったかくて
空洞で
ぽっかりしていて
寂しさは
どこかにいったみたい
誰にも見せられない自分になったら
やっとほっとしたんだ よ
鐘の音
ある日の夜、私は眠れずにいた。そこで私は水を一杯飲めば眠れるだろうと思い冷蔵庫にゆっくり向かった。冷蔵庫に無事辿り着き、冷蔵庫を開けようとした瞬間「ゴーン」と鐘の音がした。私は無意識にその正体が気になり、窓のカーテンを開けた。そこで私が目にしたのは、二十代くらいの女性と、小さい3歳くらいの子が鐘の隣に立って一緒に鐘を鳴らしている姿だ。私は不思議に思った。なぜ二十代くらいの女性と一緒に3歳くらいの子が一緒に鐘を鳴らしているのか。
そこで私は、どうせ寝れないしと散歩がてらその2人になぜ一緒にいるのか聞いてみようと思った。なぜなら私からしたら親子には見えなかったからだ。後なんで何度も何度も鐘が大きな音でなっているのに、僧侶が注意しないのかも気になる。そして寺に着いて、私は二人に話しかけた。
「すみません。突然で大変恐縮ですが、お二人は親子の関係なのでしょうか。」
その言葉を聞いて女性が喋り始めた。
「違いますよ。あと、そんなに堅苦しくしないでいいですよ。」
「わかりました。なら、なんであなた達は一緒に鐘を鳴らしているの?」
その女性は恥ずかしそうにこちらを見たが、少し深呼吸をし、話し始めた。
「私は昨日の昼間、会社の一室で私の彼氏と私の同期の子がいちゃついているのを見て、嫌になって、心を落ち着かせたくてここに来たのよ。この子はここに来る途中話しかけて来て一緒に来たってわけ。」
そう話し終わると今度は男の子が私のズボンを引っ張ったので、私はしゃがんだ。そうしたら男の子が私の耳元で小さな声で話し始めた。
「僕はこのお姉さんの顔が綺麗だったし、優しかったからついてきたんだ。可愛くて好き…」
私は心のなかで多様性だからあまり否定はできないが、すっげー不純な理由だなと思った。子供も私と見てるところが一緒だったのもあってより引いた。なにはともあれ気になっていたことの二つは解決した。残りはあと一つ。なんで僧侶が注意しないのかだ。それについて女性に聞いてみたら、あっさり返事が返ってきた。
「ここのお寺は二十四時間三百六十五日ずっと出入り自由なお寺なのよ。入口にも張り紙貼っていたはずだけど…」
そんなコンビニみたいなことあるかよ…
落ちが最悪だったので私は家に戻って、コーヒーでも飲むことにした。