あなたたちを祝福するようにやさしく鳴り響いた、教会の鐘の音。幸せそうに笑うあなたのとなりには、あなたにとっていちばん大切なひとの姿があった。
そこにいるのは、僕ではなかった。けれどあなたが今幸せであるのなら、それで良かった。
自宅でひとり、引き出物のバウムクーヘンを口に運んで、お裾分けの甘さを噛み締める。
言えなかった言葉ごとごくんと飲み下して、またひとくち。そうして空になった皿を見下ろしたら、ふいに眦から未練が一粒、皿の上に転がった。
年明けを告げる鐘の音が鳴る前に、僕の中のあなたにさよならをしよう。
誰に知られることもない。知る由もない。
だってもうほら、そこには何もないのだから。
8/5/2024, 6:33:03 PM