あなたは、ときおりふらっと気まぐれに、たまたま目にした喫茶店へ赴いた経験はございませんか。
宝石箱みたいな色とりどりのメニューから、せっかくだからと少し冒険をして、今まであまり口にしたことがないものを思い切って注文してみたことは、ございませんか。
もしかするとそれは、『未知』の交差点かもしれません。
知らないものを知り、こんなに美味しいものがあるのか、と喜びを感じることが、あるかもしれません。
行ったことのない『未知』の交差点を、
自分が選び歩いた『道』にしませんか。
ほんの小さな、小さな頃。
緊張で震える手で差し出した、真っ赤な一輪のコスモスを、あなたは憶えているでしょうか。
しらゆりのような佇まいの、うつくしいあなた。
ほほをふわりとばら色に染めて、ありがとう、と。
ひまわりみたいにまぶしくすてきな笑顔を浮かべて、受け取ってくれましたね。
仙人掌の様な佇まいの物言わぬわたしが、あなたみたいな高嶺の花に手など届くまいと、分かってはいたのです。
けれど、どうしてもどうしても、何年経っても、この気持ちを捨て去ることは出来ませんでした。
あなたに大切な人が出来ることは、嬉しいことです。
でもそこに在るのは、わたしでありたかったのです。
だからあなたを、今日この場所へ連れてきました。
真っ赤なコスモスの、花畑。
ありったけの愛情を、あなたに。
仙人掌を見上げたしらゆりは静かに微笑んで、わたしの手を取り、自らのほほへ導きました。
ばら色のほほが熱くて、わたしの棘などどこへやら。
物言わぬわたしの顔色も、つられて赤く染まりました。
仙人掌に、花が咲く。
無垢なあなたのそばで、枯れない愛の大輪を。
赤いコスモス:愛情
百合:無垢
仙人掌(さぼてん):枯れない愛
あなたが大切で大切で仕方がなくて、
愛する、それ故に、言いすぎてしまうのだ。
守ろうとしてしまうのだ。
あなたを害する可能性のある物全てから遠ざけようと、あなたが頑張らねばならないものから目を背けさせまいとして、つい口を出してしまうのだ。
愛しているから。それは紛れもない事実だ。
でもそれは、少しだけ間違っていたのかもしれない。
愛するあなたは、全てから守ってやらなくとも、
頑張るべきものから目を背けたとしても、
あなたなりに一歩ずつ進んでいた。
わたしが何も言わずとも、
知らぬ間に、遥か遠くに背があった。
遠く遠く、小さくなっていくあなたを見送って、
誇らしい気持ちと、寂しい気持ち。
ああ、あなたは、もう守らずとも、ひとりで。
今日は土曜日。
世間一般では休日ですが、わたしは出勤日でした。
シフト制となると、『華金』なるものが享受出来ずいつも寂しいのですが、明日の日曜日はわたしもお休みのため、大変ニコニコしながら退勤してまいりました。
いつもなら真っ直ぐと帰路に着くのですが、今日はお外でご飯を食べたり、お洋服を買ったり、作れるかもわからないガレージキットを買ったりして、『華金』を満喫してまいりました。
甘いものも遠慮なく食べようと思います。
今日だけ、許してください!
あなたがいなければ、わたしの世界はずっとモノクロのままだった。
わたしなんかにとっても優しくしてくれて、わたしなんかと一緒にいてくれて。
わたしひとりではもう生きていけないの。
だから、ずっとずぅっとそばにいてね。
愛しているわ。
なんて、あなたに言ったのはいつのことだったかしら。
もう覚えていないけれど、それは全部嘘だったわ。
あなたがいなくなっても世界は極彩色で美しく、あなたの存在が霞むほど明るくまばゆく、すてきだった。
わたしの見る目がモノクロだったのね。
あなたに頬を殴られた時、目の前に虹色の火花が散って、目が覚めたの。
ありがとう、さようなら、わたしの王子様!
あなたとさよならしたわたしを、愛しているわ。