きつね

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よく晴れた日の、穏やかな午後。
あなたの膝枕に甘えて、心地よい惰眠を貪っている。
わたしは知っていた。わたしがこうしてあなたの膝で眠ると、あなたは決まって上機嫌で鼻歌を歌うことを。
それがどんな曲なのかはさっぱりわからないし、歌詞だってもちろん知らなかった。けれど、それを歌うあなたの声はいつだって愛らしくて、優しくて、あたたかい。
すこうしだけ目を開けてあなたを見上げれば、あなたはそっとこちらを見て、細い指先でわたしの髪を撫で、やわらかく微笑んだ。
何度も聞いているすてきなメロディを、あなたといっしょに口ずさむ。どんな歌であっても、わたしにとってこの鼻歌は、間違いなくあいのうた、なのだ。

5/6/2025, 5:01:26 PM