鈴木

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ゾンビになった人達に自我はあるのだろうか。

これは一生解消されない疑問だろうと、そう思っていた

7月1日

この日、人類は突然現れた未知のウイルスにより滅亡した

映画やゲームで何度も見たゾンビパンデミックを、まさか自分が経験する事になるとは思わなかった。

最初は少し、ワクワクした。事のあまりの重大さに脳がついていけなかったのだろうと、今は思う。

なんの取り柄もない一般人の俺だが、友人達と運良く生き延びている。

ある日、生活が落ち着き始めたので、寝泊まりしている学校の屋上で感染者たちの観察を試みた事がある。

校庭にいるのは学生服を着た感染者が殆どだ。
それぞれがあまりにも痛々しい見た目をしているものだから、俺は途中から具合が悪くなり目を背けていた。

夕暮れ時になり、ウトウトし始めていた俺は
突然鳴った大きな鐘の音により目が覚めた

鐘の音に反応したのは俺だけではなく、殆どの感染者達は校庭から出て、その多くは住宅街の方へ向かっている。


毎日夕方になると街中で聞こえるこの音。

親に『鐘の音が鳴ったら家に帰りなさい』と言われていた人も
いるだろう。

少なくとも、俺の住んでいるこの街では多くの人間がそう言われて育ったと思う。

だから、だろうか。

彼等は、あんな姿になっているというのに。
それでも親との約束を守ろうとしている。

きっと感染者達に自我はないのかもしれないが

その人の歩んだ人生が完全に消えて無くなる訳ではないんだと

俺は少し安心した

8/5/2024, 5:53:01 PM