警鐘が鳴る。
眼を閉じれば、
暗闇の中の篝火みたいに、あの日の事が浮かぶ。
その風景を眺めている内に、
ドス黒い炎が本当に私の中で燃え上がるのを感じ、
その度に慌てて眼を開けて鎮火させる。
何度か繰り返す内に、眠るのが少し怖くなった。
警鐘が鳴る。
街の中にある、ありふれた雑音が、
あの時、耳にした不協和音と重なる。
例えば、雨の音。
例えば、雑踏。
遂には、誰かの声すらも。
耳を塞げば、それはより鮮明に聴こえて仕様がない。
思考は迷路の中。
いや、解っている。
眼を逸らしているだけで。
ただそれは………。
警鐘が鳴る。
虚しく、急かすように、警鐘は鳴り続けている。
8/5/2024, 5:50:34 PM