『梅雨』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
雨が降っている。
雲が絶えることなく大粒の涙を零し続ける。何日も何日も。
それは、まるで私の心のように。
雨に濡れながら、雲が零した涙を見ていた。
生まれて消えていく雨粒は、まるで命のようで。この一瞬の為に生きているのかと悲しくなった。
雨粒が弾ける。
弾ける瞬間、雨音は歌った。優しく軽やかに、歌った。
温かい雨は私の体を優しく包んで、涙と一緒に流れていった。
-・- ・・・ ・--・ ・-・--
私達は雨粒です。
私達が辿り着く先の地面には、一人の女の人が立っていました。
彼女は憂鬱そうに見えました。雨に濡れて、悲しそうな顔をしていました。
雨粒は生まれ消え行くだけ。そしてそれは水となり、大地を潤し、生命を豊かにする。
だけど、それが何だっていうのでしょうか。悲しむ今の彼女に何かしてあげられないでしょうか。
どうか、せめて――。
私達は歌いました。精一杯、歌いました。
彼女は泣き出しました。
-・- ・・・ ・--・ ・-・--
長い長い雨は止み、雲が千切れ、空が覗き込みました。
私達は消えたけれど、青空に七色を描いていきました。
最期に見たのは、彼女の笑顔でした。
『梅雨』
短歌ブームが来ています(言い訳)。
【梅雨】
好きな子と 帰るチャンスの 喜雨来たる
【試練】
台風で 滅べばいいのに テストの日
【休日】
おはようと お日様に笑う 若葉晴れ
今年初のゲリラ豪雨がやって来た。
もはや夕立の概念がぼやけるくらい、
午後のゲリラ豪雨が恒例になったように思う。
梅雨もシトシトと静かに降って
路面を濡らす振り方だったように思うが、
最近はそんな風情もない雨がほとんどという気がする。
今年は辰年。
辰は水神でもあるので、辰年の年は巳年同様、
水災害が増えやすいのだとか。
ゲリラ豪雨のせいで洗濯物の洗い直しをしながら、
「それくらいですんでくれ」と、曇天を睨み付けてやった。
#梅雨
《梅雨》
幾日も続く曇天から降り続ける雨。
雨音しかしない通りに並ぶ、二つの傘。
濡れる足元にうんざりしつつ隣の横顔を覗き見ると、
ふと合う視線。見たこともない優しい笑顔。
顔が熱くなる。鼓動は、跳ねる雨水のよう。
慌てて傘を顔の影にする。赤い顔、隠せたかな。
やっぱり、雨でよかったかもしれない。
明日もこんな日が続くかな。
===========
長雨の中、誰もすれ違わない道を歩く。
すぐ横には、僕の目線の高さの明るい色の傘。
言葉はなくとも、ゆるりと解れていくような心地よさ。
かつて僕の頑なさ故に失いかけた存在に感謝しつつ見つめていると、
少し動いた傘からちらりと覗く、大きな瞳。
繋がる視線に浮かれて、つい顔が綻んでしまう。
残念、傘に隠れてしまった。
それでも、一瞬見えた貴女の染まった頬が雨空によく映えて。
ああ、僕は今、こんなにも幸せだ。
『梅雨』(創作)
梅雨に入り雨の日が続いていた。
「新しい傘の出番ね」
私は誰に言うでもなく独り言をつぶやいた。
この新しい傘は母からのプレゼントだった。私がずっと古い傘を使っていたものだから、見かねてプレゼントしてくれた物だ。
でも、せっかく母がプレゼントしてくれたのに、柄が可愛いすぎて、私には子供っぽく思えて仕舞ったままだった。
親にとって子供とは、いつまでも子供なのだろう。
そんな母が先月他界した。突然の事だった。
大動脈解離というのは、突然死に多いらしい。
突然すぎて、まだ、実感がなかった。
仕舞ったままの傘を引っ張りだすと、涙が溢れた。
「ごめんね。お母さん…」
私はまた独り言をつぶやいた。
窓の外は相変わらずの雨降りだった。
私は傘を抱きしめたまま雨と一緒にいつまでも泣いた。
もう見かねて傘をプレゼントしてくれる人はいないのだと思うと、とめどなく涙が溢れた。
「この傘をさしたら、雨が楽しくなるよー。」
母の声がした。優しくて温かな母の声がした気がした。
心の土砂降りに一筋の光がさす。
─ うん、私も、雨を楽しめるようになるね ─
心の梅雨明けはまだまだ先だろうけれど、この傘を大切に強く歩む決意をした。
梅雨は大嫌いだ。
理由は、蒸し暑さと、この時期に出てくる害虫だ。害虫は見た目の悪さは言うまでもなく、毒を持っているので恐怖でしかない。
雨はむしろ好きだ。静かな雨も激しい雨も、落ち着く。まあ雨は梅雨以外にも降るので問題にはならない。
ここに移り住む前の、ビルやマンションが建ち並ぶ都会に住んでいた頃は、梅雨を意識したことはなかった。マンションの5階に住んでいたのだが、蝉が飛び込んでくることはあっても、這って動く長い虫は見たことがなかった。海に憧れてここに移り住んでから、自然豊かで緑が多い場所は虫が多いことを知った。30年前の春にここに来て、新しい生活と仕事に慣れてきた頃に、初めて見た、畳のカビと恐ろしい程気持ち悪い虫が今でも忘れられない。
それでも、まだここに住んでいるが、若かった頃の気力はなくなり、いまだに虫に慣れることはなく、人が減って賑やかさが失くなってきた町に寂しさと不安を感じるようになった。
人生が残り少なくなってきたからなのか、もう何かに怯えたり、気力を使って生きたくはないと思う気持ちが強い。
雨が降ってきた。
梅雨は、私を新たな道へ進むよう促しているのだろうか。
(梅雨)
家の愛犬(わんこ)は傘が嫌いだ。
玄関から雨が降る外の様子を見せると散歩を諦める。
梅雨の時期は散歩に行かなくても良いから楽かというと、そういう事もない。
何故なら、家のわんこは「晴れわんこ」でもあるからだ。
雨が降る日でも、毎日の散歩の時間になると雨が止む。散歩から帰ってくるとまた降り出す。
家の愛犬(わんこ)の散歩への執念には、いつも感心しきりである。
#梅雨
小説や文章は。
沢山の人に、分母の大きな整数の人達に届けば、意味や大義が生まれるのかも知れない。
それでも。
私は。マイノリティであっても。
君並びにあなたに届けばいいと思っている。
今。涙している君並びにあなた、の。
代弁者であり、且つ、共有者でありたい。
私は今。
たくさんの涙雨を想像する。
題:梅雨
【梅雨】
登場人物
琴美
葵
「コトちゃん、今日梅雨入りしたってさ」
「ふぅーん」
「ちっちゃい頃の事覚えてる?」
「え」
「初めて傘買ってもらった時のこと」
「あ〜」
「コトちゃん大ハシャギだったよね」
「...」
それは、琴美と葵が2才の梅雨のことでした。
「ねー、これ見てー。カワイイでしょー」
琴美は葵を見てカワイイ💖と思ったが、自分よりカワイイのは認めたくなかった。
「別に〜」
と言って行ってしまった。
「母たん母たん」
「あらっ、お帰り琴美」
「母たん、あのねあのね、アーちゃんがね、こんなの持ってこんなの着てこんなの履いてた」
琴美は身振り手振りで傘カッパ雨靴の説明をした。
「あらそー、もうすぐ梅雨になるからね、買ってもらったんだね。可愛いかったかい」
「ううん」琴美はどうしても認めたくなかった。
「ふ〜ん、じゃあ琴美はいらな...」
「いるー!琴美も欲しい!」
「じゃあ、今から買いに行こ...」
「行くー!はやくハヤク早くー!」
琴美に引き摺られる様にふたりは傘屋さんに到着した。
「いらっしゃーい」
琴美は店の中を走り回り、店で1番カワイイ雨具を探した。
「アタシこれにする」
琴美が選んだのはファッションモデルが着るようは物だった。
「琴美、これは高いから他のにしようね」
「いや!」
「でも、琴美には大き過ぎるでしょ。こんな大きな傘じゃ、風で空まで飛んでいっちゃうからこっちのにしなさい」
「うん」
「カッパも大き過ぎてひきずっちっうから、こっちのピンクのがカワイイわよ」
「うん」
「雨靴もブカブカでしょ、これがちょうどいいわよ」
「うん、アタシこれにする」
「毎度ありがとうございます」
「琴美、家に帰るから脱いでね」
「やだ、着て帰る」
琴美はタグを付けたまま走り出した。
「母たん、いつ雨降るの?」
「曇ってきたからもうすぐ降るかもね」
家の近くに来ると、ポツポツ降り出してきた。
「アーちゃんとこ行って来るー」
琴美は大ハシャギで走って行った。
「アーちゃん見て見てーアタシのカワイイでしょ」
「コトちゃんも買ってもらったの」
「あら、琴美ちゃんいらっしゃい、カワイイわね」
「遊びに行こ」
「琴美ちゃん雨なのに遊びに行くの?」
「雨だから遊びに行くの」
琴美と葵は雨の中を飛び出して行った。
「雨なのに全然濡れないね」
琴美は水たまりを見つけ雨靴で思い切り踏みつけた」
バシャ!勢いよく水が跳ね上がった。
「わースゴイ、わたしもやりたい」
ふたりはしばらく水たまりで遊んだ。はしゃぎすぎて暑くなったので、カッパの前を開ける事にした。
「前開けると涼しいね」
雨は少し強くなってきたので水たまりも大きくなった。
そこを車が通ると大きな水しぶきが上がった。
それを見てふたりはニヤッと笑い水しぶきがかかる位置に立った。
すぐに車が来た。
葵は傘を前に倒し水しぶきを傘で受け止めた。
琴美は...
「ただいま」
「おかえり、琴美どうしたのビショ濡れじゃないの?」
琴美は水しぶきを見てやろうと思い傘を上げたままだったので、水しぶきをまともに浴びてしまったのだ。
「テヘッ!」
おわり
梅雨(偉大なる海)
「まさかこんなに降るとはなあ」
旅館の窓際で頬杖をついて、呆けたまま動かないでいる彼女を見兼ねて声をかける。
―――ニュースでは華々しい梅雨明け宣言と共に、晴天の下でアイスを頬張る子供の映像が映し出されていた。
「一か八かで宿取ってみたけど、見事にハズレたな」
「………仕方ないわよ。操れないもの、天気までは」
諦めるような言葉を口にしながら、彼女はそれでも天を仰ぎ見る。
雲は厚く、降りしきる雨は到底上がるとは思えなかった。
「お互い仕事でこの日しか取れなかったもんなー。梅雨明け遅かったから、大丈夫だろうって楽観してたのが仇になったな。予報には勝てないねえ」
「………。慰める気ある?」
不機嫌な声色に、彼はしまったと舌を出す。
「あーあ、久しぶりの海だから気合い入れて準備してきたのに」
「明日、も微妙な天気らしいけどな」
「ビキニの新調も水の泡ね」
………今何と?
「ビキニ?」
「そう、ビキニ。去年ワンピースだったから、ちょっと奮発しちゃった」
……………。
それは。マズい。
「明日、行こう」
「え?」
「宿出る前の午前中、海に!」
「え、でも天気」
「晴れる! きっと! 気合で祈るから!」
「………」
―――男ってほんと根っから単純な生き物で羨ましいわ。
途端に浮つく彼を尻目に、彼女はそれでも晴れるといいな、と。
未だ梅雨空を頑固に貫く鉛色の雲に、方向性の違う彼とわたしの願いが届きますように、と―――彼女は釈然としないながらも、その手を合わせた。
END.
無垢
「あんたの対義語?」
「はは、言ってくれる。まあ、それもそうなんだが。
私にとっては君のことだ。君そのものだ。」
「はあ。わかってないな。あんた、僕に夢見すぎだよ。」
「夢か。そうなのか。私は君に夢を見ているのか。
かもしれんな。君と私は真逆だから。」
「違う。僕らは似た者同士だよ。だから惹かれ合う。」
「似ているか。ふぅむ。では赤ワインは好きかね。」
「好き。」
「白ワイン。」
「嫌い。」
「ミートソース。」
「好き。」
「ジェノベーゼ。」
「嫌い。」
「まあ予想通りだ。では雨はどうだ。」
「嫌い。」
「梅雨。」
「好き。」
「ふふ、何故だ。」
「そんなの知らないよ。」
「奇遇だな。私は白ワインとジェノベーゼが好きだが梅雨も好きだ。理由はわからない。」
「…何の話してたんだっけ。」
「…忘れた。」
「このじめっと暑苦しい部屋で抱き合うのは?」
「…好きだよ。」
「僕も。」
梅雨
梅雨…
子どもの頃の話だ。
私は虫が好きだった。
雨上がり、光る花にミツバチがとまっていた。
単純にキレイだと思った。
羽をつまんでミツバチを捕まえた。
おや指と人さし指でつまんだミツバチ。
次の瞬間、
ミツバチの腹は信じられない角度に反り返り、私を刺した。
針は、ハチの腹を一節つけたまま私の指に突き立った。
スローモーションのように私はそれを見ていた。
恐怖だった。
刺されたことよりも、
ハチの腹の一部が針と一緒に取れてしまうことに。
ミツバチは死んでしまうのだろう。
ミツバチに心から申し訳なかった。
私は、ハチを手で捕まえてはいけないことを学んだ。
痛みは忘れてしまったが、その時の恐怖は忘れられない。
雨は私を隠してくれる
だから僕は梅雨が大好きだ
悔しい思いも辛い思いもぜんぶぜんぶ忘れさせてくれる
帰路、僕はよく疲弊してしまっている
人間関係、勉強、部活…全てにおいて劣等感を持っている僕は目標もやりたいこともなにもなくひとり泣くことしか許されない
でも雨は僕にまとわりつくようにいて聞いて隠してくれる都合がいいことは降った雨ほどわかっている
それでも僕は雨か好きだ
いつか私を飲み込んでほしい
雨の音、随分と退廃した街。
ここにはもう、少しの執着以外残っていない。
全部なくなったそのあとは、わたしに
何も与えてくれないことに気づいてしまった。
__ああ、満たされないな。
思考は深く深く沈んでいく。
滴る雫とガラス越しに見たきみの、
その憂いの表情がどうしようもなく愛しく感じられた。
その瞳のぜんぶが、わたしだけに縋ってくれたなら、
どれだけよかっただろう。
きみには幸福より、悲哀の方が綺麗に似合うと思う
わたしは、きっと薄汚れている。
「ねえ、さよならをしよう」
瞼を閉じる。
いま、雨粒がおちた。
梅雨の楽しみ
窓の水滴が物理法則の命を受け、
重い腰を上げて降りてくのを見る。
[梅雨前の話]
もうすぐ梅雨。そのせいか頭痛がする。
この時期には偏頭痛に悩まされる。
「大丈夫??」友達の心配する声にも答えるのが億劫に感じる。「大丈夫じゃ、ないかも…」
でも、もうすぐ授業は始まってしまう。友達にも迷惑は、かけれないし…と思い保健室に行こうとして席を立つと体がふらついた。
「…か!!…んせ…んで!」誰かが何かを呼んでる声がする。そこで、私の意識は途絶えた。
目覚めると白い天井。見慣れないベッド。保健室だろうか?体を起こそうとするとカーテンが開いた。
「大丈夫か?お前、貧血らしいぞ。」声の主を見ると私が最近気になってるしい君だった。
「だ、大丈夫!ほら、もう起き上がれるしっ」
起き上がろうとするとふらっと視界が揺れる。
「お前っ、無理すんなよ。」いま、気づいたがなんで彼はここにいるのか。私を運んできてくれたとか?流石に自惚れすぎか。
「お前が倒れる前にギリギリ頭を支えたから打ってないと思うけど痛むか?」心底心配してる顔で言われ喜ぶどころじゃない。「大丈夫。ありがとう!」
1年で1番嫌いな季節は?と聞かれたら、梅雨と答える。
ジメジメした湿気で、髪は爆発、肌もベタベタし、とても不快だからだ。
そんな日々を少しでも、心を楽しくさせてくれる
かわいいお気に入りの傘を見つけた。
今年の梅雨は、私の笑顔がたくさん見れるかな。
梅雨
俺は梅雨の雨が嫌いだった。あいつが死んだ日も梅雨の大雨が降っていた。車がスリップして横断歩道を渡ろうとしていた子供をかばって死んだ。俺はそれを聞いて「あいつらしい」と思った。毎年あいつが助けた子供の親が家にお供えを持ってくる。いつも涙ぐみながら謝る。この頃子供が言葉を理解してきて片言の言葉で「ごめんなちゃい」と言う。あいつはあの日婦人科に行った。あと2ヶ月で子供が生まれるというところだった。あいつが新しい命を授かったとき俺は泣くほど喜んだ。そのことを思い出すと俺は食事が取れないほど泣いてしまう。あいつと「子供の名前は香菜にしようね」と話していたのにどんなにわめいてもあいつも子供も帰ってこないってわかっているのに。
今日からしばらくは、空模様も私の心も雨が続くようです。傘と心を休ませる趣味をお忘れないよう。
もう、梅雨の時期に入った。
屋根を叩きつける雨の音が煩わしくてこの季節は特に
憂鬱になる。
空から、降り注いで地面に向かって落ちていく雨は
普段は気にしない土とコンクリートの匂いを感じさせる。
お気に入りのスニーカーは、ずぶ濡れになるから
気が滅入るけど、こんな時ほど自分の好きなファッションに身を包んで一目惚れして買ったパステルグリーンの傘を差して街を歩きたい。
少しでも、気分をよくして1日を乗り越えられたら
それだけで今日も頑張れたって思えるから。
梅雨が明けたら、今度は紫外線と戦う為に日焼け止めを
装備する日々がやってくるけれど、眩しい太陽にカラッと
晴れた青空を見上げてお散歩に出かけられたらそれは
それで楽しみになってきた。
私って、案外単純なのかもね。
「梅雨」