星乃 砂

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【梅雨】

登場人物
 琴美
 葵

「コトちゃん、今日梅雨入りしたってさ」
「ふぅーん」
「ちっちゃい頃の事覚えてる?」
「え」
「初めて傘買ってもらった時のこと」
「あ〜」
「コトちゃん大ハシャギだったよね」
「...」

それは、琴美と葵が2才の梅雨のことでした。

「ねー、これ見てー。カワイイでしょー」
琴美は葵を見てカワイイ💖と思ったが、自分よりカワイイのは認めたくなかった。
「別に〜」
と言って行ってしまった。
「母たん母たん」
「あらっ、お帰り琴美」
「母たん、あのねあのね、アーちゃんがね、こんなの持ってこんなの着てこんなの履いてた」
琴美は身振り手振りで傘カッパ雨靴の説明をした。
「あらそー、もうすぐ梅雨になるからね、買ってもらったんだね。可愛いかったかい」
「ううん」琴美はどうしても認めたくなかった。
「ふ〜ん、じゃあ琴美はいらな...」
「いるー!琴美も欲しい!」
「じゃあ、今から買いに行こ...」
「行くー!はやくハヤク早くー!」
琴美に引き摺られる様にふたりは傘屋さんに到着した。
「いらっしゃーい」
琴美は店の中を走り回り、店で1番カワイイ雨具を探した。
「アタシこれにする」
琴美が選んだのはファッションモデルが着るようは物だった。
「琴美、これは高いから他のにしようね」
「いや!」
「でも、琴美には大き過ぎるでしょ。こんな大きな傘じゃ、風で空まで飛んでいっちゃうからこっちのにしなさい」
「うん」
「カッパも大き過ぎてひきずっちっうから、こっちのピンクのがカワイイわよ」
「うん」
「雨靴もブカブカでしょ、これがちょうどいいわよ」
「うん、アタシこれにする」
「毎度ありがとうございます」
「琴美、家に帰るから脱いでね」
「やだ、着て帰る」
琴美はタグを付けたまま走り出した。
「母たん、いつ雨降るの?」
「曇ってきたからもうすぐ降るかもね」
家の近くに来ると、ポツポツ降り出してきた。
「アーちゃんとこ行って来るー」
琴美は大ハシャギで走って行った。
「アーちゃん見て見てーアタシのカワイイでしょ」
「コトちゃんも買ってもらったの」
「あら、琴美ちゃんいらっしゃい、カワイイわね」
「遊びに行こ」
「琴美ちゃん雨なのに遊びに行くの?」
「雨だから遊びに行くの」
琴美と葵は雨の中を飛び出して行った。
「雨なのに全然濡れないね」
琴美は水たまりを見つけ雨靴で思い切り踏みつけた」
バシャ!勢いよく水が跳ね上がった。
「わースゴイ、わたしもやりたい」
ふたりはしばらく水たまりで遊んだ。はしゃぎすぎて暑くなったので、カッパの前を開ける事にした。
「前開けると涼しいね」
雨は少し強くなってきたので水たまりも大きくなった。
そこを車が通ると大きな水しぶきが上がった。
それを見てふたりはニヤッと笑い水しぶきがかかる位置に立った。
すぐに車が来た。
葵は傘を前に倒し水しぶきを傘で受け止めた。
琴美は...
「ただいま」
「おかえり、琴美どうしたのビショ濡れじゃないの?」
琴美は水しぶきを見てやろうと思い傘を上げたままだったので、水しぶきをまともに浴びてしまったのだ。
「テヘッ!」

           おわり

6/2/2024, 7:12:32 AM