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梅雨…



子どもの頃の話だ。


私は虫が好きだった。

雨上がり、光る花にミツバチがとまっていた。

単純にキレイだと思った。

羽をつまんでミツバチを捕まえた。



おや指と人さし指でつまんだミツバチ。

次の瞬間、

ミツバチの腹は信じられない角度に反り返り、私を刺した。

針は、ハチの腹を一節つけたまま私の指に突き立った。

スローモーションのように私はそれを見ていた。



恐怖だった。

刺されたことよりも、

ハチの腹の一部が針と一緒に取れてしまうことに。

ミツバチは死んでしまうのだろう。

ミツバチに心から申し訳なかった。




私は、ハチを手で捕まえてはいけないことを学んだ。

痛みは忘れてしまったが、その時の恐怖は忘れられない。

6/2/2024, 7:08:54 AM