梅雨は大嫌いだ。
理由は、蒸し暑さと、この時期に出てくる害虫だ。害虫は見た目の悪さは言うまでもなく、毒を持っているので恐怖でしかない。
雨はむしろ好きだ。静かな雨も激しい雨も、落ち着く。まあ雨は梅雨以外にも降るので問題にはならない。
ここに移り住む前の、ビルやマンションが建ち並ぶ都会に住んでいた頃は、梅雨を意識したことはなかった。マンションの5階に住んでいたのだが、蝉が飛び込んでくることはあっても、這って動く長い虫は見たことがなかった。海に憧れてここに移り住んでから、自然豊かで緑が多い場所は虫が多いことを知った。30年前の春にここに来て、新しい生活と仕事に慣れてきた頃に、初めて見た、畳のカビと恐ろしい程気持ち悪い虫が今でも忘れられない。
それでも、まだここに住んでいるが、若かった頃の気力はなくなり、いまだに虫に慣れることはなく、人が減って賑やかさが失くなってきた町に寂しさと不安を感じるようになった。
人生が残り少なくなってきたからなのか、もう何かに怯えたり、気力を使って生きたくはないと思う気持ちが強い。
雨が降ってきた。
梅雨は、私を新たな道へ進むよう促しているのだろうか。
(梅雨)
6/2/2024, 7:24:45 AM