川柳えむ

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 雨が降っている。
 雲が絶えることなく大粒の涙を零し続ける。何日も何日も。
 それは、まるで私の心のように。
 雨に濡れながら、雲が零した涙を見ていた。
 生まれて消えていく雨粒は、まるで命のようで。この一瞬の為に生きているのかと悲しくなった。
 雨粒が弾ける。
 弾ける瞬間、雨音は歌った。優しく軽やかに、歌った。
 温かい雨は私の体を優しく包んで、涙と一緒に流れていった。

 -・- ・・・ ・--・ ・-・--

 私達は雨粒です。
 私達が辿り着く先の地面には、一人の女の人が立っていました。
 彼女は憂鬱そうに見えました。雨に濡れて、悲しそうな顔をしていました。
 雨粒は生まれ消え行くだけ。そしてそれは水となり、大地を潤し、生命を豊かにする。
 だけど、それが何だっていうのでしょうか。悲しむ今の彼女に何かしてあげられないでしょうか。
 どうか、せめて――。
 私達は歌いました。精一杯、歌いました。
 彼女は泣き出しました。

 -・- ・・・ ・--・ ・-・--

 長い長い雨は止み、雲が千切れ、空が覗き込みました。
 私達は消えたけれど、青空に七色を描いていきました。
 最期に見たのは、彼女の笑顔でした。


『梅雨』

6/2/2024, 7:37:03 AM