行かないでと願ったのに、神様は聞き入れてくれなかった。どんなに望んでも、連れて行ってしまった。
 あの幾千の星の中で、君は輝いている。
 いくら伸ばしても届かないとわかっている。それでも、手を伸ばす。
 いつか君と逢えますように。
『行かないでと、願ったのに』
 綺麗に飾っておきたいと、標本にして集めている。
 誰にも見せたくない。大事に隠しておきたい。
 たくさんの大切な人を、そのままの姿で。誰かを愛するたびに、こうやって飾ってきた。
 いつまでも一緒にいるから。愛してるよ。
 このコレクションが増えていくのが楽しみだ。
『秘密の標本』
 寒い……。もう冬も近い……。
 布団から出たくない……。
 せめてあと五分……。
 そんなことをしているうちにこんな時間になりました。
『凍える朝』
 光があるから影ができる。
 でも、影があるから光がわかる。
 真っ暗闇にいる私をそこから引き摺り出してくれたのは、あなたという一筋の光だった。
 光と影が一緒にいるなんて。そう思うこともあるけど。
 あなたが、私と一緒にいたい。と、そう言ってくれるから。
 私は、あなたの隣で、私でいられるんだ。
 あなたは私のことを光だと、自分は影でしかないと嘆くけど。
 違うんだよ。
 私にとっての光はあなただった。
 影のない人間なんていない。私だって影なんだ。
 それでも、あなたが隣にいるから。だから、私は、あなたにとっての光でいられる。
 私達は影であり、お互いにとっての光なんだ。
『光と影』
 そして、これから始まるのだ。勇者の新たなる物語が――。
 こうして物語を書き終えた。
 まだ続きそうな終わり方ではあるが、要は打ち切りだ。なんとかまとめて、どうにか読めるものにはした。
 この後勇者はどうしたのだろうか。どこへ行ってしまったのだろうか。
 私にはわからない。
 現実は、そしての先は何も無い。
 勇者の旅はここで終わりだ。
『そして、』