川柳えむ

Open App
11/28/2025, 10:19:03 PM

 寒さで目が覚めた。
 頭まで毛布を被って、そこから出たくない。けど、そういうわけにもいかない。
 毛布を纏ったまま、ずるずると窓の外を覗く。
 庭には霜が降りていた。
 窓を開けると冷たい空気が流れ込んできて、一瞬で頭がクリアになる。
 吐き出す息は視界を白く染め上げる。
 テレビをつければクリスマスの話題が上っている。
 もう冬だなぁ。


『霜降る朝』

11/28/2025, 12:11:53 AM

 なんか息苦しくて、目も回る。まるで海の中にいるように、上手く呼吸ができなくて、溺れそう。
 必死に肩で息をしていたら、君が「大丈夫?」って訊いてきた。
 それだけで、呼吸ができた。
 海から引っ張り上げられたように、空気が戻ってきた。君が助けてくれたんだ。
 深呼吸をする。視界がはっきりしてくる。
 心にも、新しい空気が取り込まれたように、スッキリとしていた。


『心の深呼吸』

11/27/2025, 12:13:58 AM

 ある朝、目が覚めたら、小指の先に赤い糸が繋がっているのが見えた。
 これは運命の人と繋がっているというあの赤い糸なのだろうか。
 糸を手繰って外へ出てみる。
 いろんな人の小指の先に、誰かとの赤い糸が括り付けられていた。
 赤い糸で結ばれて幸せそうな人、赤い糸の先がすぐ傍にあるのに気付いていない人、二人並んで楽しそうにしているのにそれぞれ別の赤い糸が結ばれている人、赤い糸の先が切れてしまっている人……。
 私の赤い糸の先には誰がいるのだろうか?
 ドキドキしながら向かうと、なんと糸の先は異空間に繋がっていた。絵の具のパレットを無理やりかき混ぜたような混沌とした色彩の渦が宙に浮かんでおり、そこに糸が飲み込まれている。
 こんな非現実的なことがあるだろうか?
 しかし、赤い糸が見えている時点で非現実的なので、もうそんなことは気にせず渦に入っていくことにした。
 渦の先は、未来だった。少し先の未来。
 そこに、彼はいた。お互いに、一目見てわかった。この人が運命の人だと。
 こうして私はしばらく未来にいた。
 彼は私を心配してくれた。帰らなくていいのかと。でも、帰ってしまったら、再び彼に会えるかどうかわからない。それに、帰り方もわからない。
 そうこうしているうちに、世界に危機が訪れた。致死率の高い未知の病原菌が流行したのだ。
 そのタイミングで、あの異空間へ繋がる渦が現れた。これに入れば過去に戻れるかもしれない。
 私は彼に一緒に行こうと言った。しかし、彼は行けないと言う。病気に感染してしまった。だから、一緒に行くことはできない。君はこうなる前に早く逃げてくれと。
 泣きながら未来を後にする。戻ってくると、赤い糸は見えなくなっていた。
 それでも私は待っている。きっとまだ繋がっている、あの人と再び逢える日を。


『時を繋ぐ糸』

11/26/2025, 5:14:40 AM

 赤く染まった落ち葉で道が敷き詰められて、それはまるでレッドカーペットのようだった。
 レッドカーペットの先には、明るい場所。
 スポットライトのように明るい日差しに照らされた君が、そこで待っている。笑いながら、こちらに手を振る。
 僕は手を振り返すと、落ち葉の道を足早に歩き出した。


『落ち葉の道』

11/24/2025, 11:04:41 PM

 子供の頃、家で見つけた小さな金色の鍵を大切にしていた。
 何の鍵かはわからない。ただのアクセサリーだったのかもしれない。
 でも、同時の私にはそれが、魔法の扉を開く鍵のように思えて、わくわくした。
 ネックレスにしてしばらく身に着けていたけど、その鍵はいつの間にかどこかへ行ってしまった。
 どこにやったかわからない。落としてしまったのかもしれない。
 そのことすら忘れて、日々を過ごしていた。

 目の前に妖精がいる。
 妖精なんて架空の存在だろう。
 わかっているのに、何故かその光景を受け入れていた。
 妖精が手招きをする。
 ついていくと、妖精が実家の私の部屋の、机の引き出しを開けた。
 妖精は、その引き出しの奥底を指差した。
 ――そこで、目が覚めた。

 丁度休みだったので、電車を乗り継ぎ、実家へと帰ってきた。
 夢だとわかっているのに、何をやっているんだろう。
 家に着くとすぐに、今はもう物置になっている自分の部屋へと駆け込み、とっくに使われていない机の引き出しを開けた。
 そこには、たくさんの宝物が詰まっていた。
 好きだった人形、おもちゃの宝石、海岸で拾った貝殻やシーグラス、かわいいシール、子供の頃の写真もあった。
 その一番奥に、あの鍵のネックレスが、静かに横たわっていた。
 そして、気付いた。
 あの妖精は、小さい頃の私の姿をしていた。
 あの頃、たくさんの出来事が重なって、もう子供を卒業しなきゃいけないと、大切なものを全て仕舞い込んで、隠して、心に鍵をかけた。捨てられなかった。でも、忘れようと。
「もういいよ」
 あの妖精の姿が見えた気がした。子供の頃の自分が、そう言った気がした。
 無理して大人にならなくても良かったんだ、と。

 子供の頃、家で見つけた小さな金色の鍵を大切にしていた。
 ネックレスにしていたその鍵を、今も身に着けている。


『君が隠した鍵』

Next