扉を開けると、君が立っていた。
信じられなくて。夢かと思った。
「夢じゃないよ」
君が言う。
泣きながら、思いっきり飛びついた。
『夢じゃない』
膝の上に猫達が乗ってきた。好きな人に抱き締められた。イベントでみんなと最高に盛り上がった。
今までも時が止まってほしいと思った瞬間は何度かあった。それでも、こんなに心の深くから、時よ止まれ。そう思ったことはない。
終わらないでほしい。時が止まってほしい。
大好きな人のライブ。言葉では言い表せられないほど素敵な音楽。きっと今夜世界で一番温かい空間。あまりにも幸せ過ぎる時間。
明日も頑張ろうって思わせてくれる。生きる力を与えてくれる。
この時間の為に生きているといっても過言ではない。私が進む為の方向を指し示してくれる。心の羅針盤。
『心の羅針盤』
「またね」
『また』なんて存在しないこと、僕らはわかっていた。
けれど、願いを込めて告げる。
「うん。またね」
死ぬまでにもう一度だけでも――いや、来世だとしてもいい。いつかまた、出会えることを信じて。
『またね』
泡になりたい。
あなたの瞳に私の姿が映らないのなら。あなたの気持ちが誰かにいってしまうのなら。この気持ちが悲しみしか運ばないのなら。
泡になってしまいたい。あの、人魚姫のように。
こんな苦しみをずっと背負うくらいなら、泡になって消えてしまいたいの。
きっとあの子もそうだった。
『泡になりたい』
ただいま、夏。
夏に向かっての声掛け。自身がこの季節にまた帰ってきたことへの「ただいま。夏」なのか。
それとも、まさに今夏ですよ。という意味の「ただ今、夏」なのか。
まぁ普通に考えたら後者ですか。そうですか。
そうですね。ただ今、夏ですね。夏真っ盛り。暑くてしょうもないことをぼんやり考えてしまったりもします。
毎年やって来るこの季節。昔は夏が好きでしたよ。暑いと言っても、こんな灼けるような暑さじゃなくて。蝉の声が林の方から響いてきて、風鈴の音が涼しくて、冷えたスイカが美味しくて、夜空を彩る花火が美しくて。もっと風情が溢れるような。そんな夏。
また、あの頃の夏が「ただいま」ってやって来ないかなと、そんなことを願っています。
『ただいま、夏。』