川柳えむ

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1/7/2026, 10:33:22 PM

「……え? 外白い……」
 外に白くて軽いものが、まるで羽根のように舞っている。
 少女は驚いた様子でそれを見ている。
「あれ。雪、見たことない?」
「あまり……」もう一人の少女の言葉に、彼女は雪を眺めたまま答えた。「私の故郷は、雪なんてほとんど降らなかったから……」
 故郷を思い浮かべる。
 そこは、暗く陰湿な雰囲気がして、好きじゃなかった。
 でも、そこに置いてきた、妹のことを思い出した。妹のことは大切だったから。
 雪のように無垢な笑顔が脳裏に浮かぶ。
 そうだ。近いうちに帰ろう。
 驚く妹の姿を想像して、少女の口元が緩んだ。


『雪』

1/7/2026, 2:30:06 AM

 外では嫌な顔一つせず、いつも笑っている。
「能天気だ」と、「何も考えていないんじゃないか」と、「ストレスなんてなさそうで羨ましい」と。
 そう言われていることを知っているけれど。でも。
 そんはものは――みんなが見ているものは、噓だって。自分がよく知っている。


「死にたい」

 聞き慣れた言葉。
 目は既に死んでいるようで。
 自分にとってはこれがいつもの君で、みんなのあの評価の方がよくわからない。

「いいから。寝てなさい」

 ベッドでぐったりしている君の手を握った。
 相変わらずの死んだ目で自分を見てくる。

「私が死んだら泣いてくれる?」

「そりゃ泣くよ。だから、死なないで。とにかく、疲れてるなら寝なさい」

「一緒に寝てくれるなら」

 ――溜まってる仕事、したいんだけど……。
 などと言えるはずもなく。布団をめくり、君の隣に横になる。
 ――甘い。甘いなぁ。つい、甘やかしてしまう。
 でも、期待に添えないと、更に面倒なことになるのも目に見えてわかっている。
 君がぎゅっとしがみついてくる。

「死にたい」

 まだ言っている。
 これが日頃溜まったストレスの発散方法なんだろうが、だんだんとこちらも疲れてくる。
 それでも君が好きだから、それも全て受け入れる。

「もしも死ぬときは、一緒に」

 そっと額にキスをする。
 そうして、ようやく君は安心したように微笑んだ。

「おやすみなさい」


『君と一緒に』

1/6/2026, 6:56:33 AM

 土手を、空を見上げながら歩いていると、宙に凧が泳いていた。
 久々に見たなぁなどと思いながら、川辺を見下ろすと、大人と子供が入り混じって、凧揚げや羽根突きをしている。
 冷たく吹く風など物ともせず、楽しそうな声が上がっている。
 すごいな。すごい。懐かしい正月って感じだ。
 空は青く澄んで、板に当たる羽根の音と、子供たちの笑い声と、冷たい風の音がハーモニーを奏でている。
 ふふっと息を吐き出すと、それは辺りを白く染めた。


『冬晴れ』

1/5/2026, 9:38:16 AM

 幸せとか、そんなものは知らないし、必要もないと思っていた。

 ずっと独りでいた。孤独が好きだと思っていたから。
 誰かと一緒なんて、鬱陶しくて、面倒臭い。そして、そんなものを敢えて好む奴とか。
 俺には理解なんて出来なかった。

 ある晴れた日だったと思う。
 誰かが、隣に座った。楽しそうに、話し掛けてきた。

 誰だよ。こんな風に話し掛けてきて。
 俺は、望んでいないのに。

「怖いの?」

 唐突にそいつが言う。俺を見て、微笑んで。

 怖い?
 何が怖い? 何で怖い?
 俺が何を恐れているって言うんだ。

「本当は、独りが怖いくせに」

 ――違う。

 俺の戸惑いなと気にせず、そいつはそのまま続ける。

「いつか訪れる別れを恐れているんでしょ? 最初から出逢わない方がいいって。そう思っているんでしょ? だから、独りがいいって思い込んでいる」

 ――恐れ?

 一緒にいる事で、人の温もりを知ってしまって。
 でも、いつか必ずやって来る別れを。
 俺は――。

 ――いや、本当は知っていた。
 本当は孤独が好きなんかじゃなくて、本当は孤独を恐れていた。
 だからこそ、敢えて孤独でいたんだ。

「恐れる必要はないよ。別れの代わりに、また、新たな出逢いが待っている筈だから。今、この時のように」

 そしてそれから。
 孤独が好きじゃない俺の隣に、幸せを知らなかった俺の隣に。
 そいつはずっと変わらず、座っている。

 孤独の代わりに幸せを運んできてくれた。
 幸せとは何かを教えてくれた。


『幸せとは』

1/4/2026, 6:55:35 AM

 星が少なくなった夜空を見上げる。
 いくら今年のしぶんぎ座流星群の極大が朝方6時頃とはいえ、起きるのが遅過ぎた。そりゃ空も白み始める。
 それでも今年は多かったのか、はたまた運が良かったのか。
 このギリギリの空でも流れ星を観測することができた。
 できればもう一つ、あと一つ、と。欲張るうちに夜は明け、太陽が顔を覗かせた。日の出だ。
 そういえば、日が出る瞬間をまだ今年は拝んでいなかったな。私にとっての初日の出だ。
 今年もよろしくお願いします。


『日の出』

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