雨の音、随分と退廃した街。
ここにはもう、少しの執着以外残っていない。
全部なくなったそのあとは、わたしに
何も与えてくれないことに気づいてしまった。
__ああ、満たされないな。
思考は深く深く沈んでいく。
滴る雫とガラス越しに見たきみの、
その憂いの表情がどうしようもなく愛しく感じられた。
その瞳のぜんぶが、わたしだけに縋ってくれたなら、
どれだけよかっただろう。
きみには幸福より、悲哀の方が綺麗に似合うと思う
わたしは、きっと薄汚れている。
「ねえ、さよならをしよう」
瞼を閉じる。
いま、雨粒がおちた。
6/2/2024, 7:00:36 AM