『子猫』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
子子子子子子 子子子子子子
久し振りに開いた書の片隅にその文字列を見つけた。
寝たきりだった頃、私はよく世話役の子供と言葉遊びをしたものだった。外を駆け回って遊びたいだろうに、よく我慢して尽くしてくれるその子を、少しでも面白がらせ笑わせる。今にして思えば、それは私自身の、ともすれば萎えてしまう気力を保つ手段だったのかもしれない。
『懐かしいなぁ。』
私が読んでみろと言った時、あの子供(今は部下だけれど)は目を白黒させて唸っていたっけ。私の声に振り向いた恋人を手で招き、その一行を見せてみる。さあどんな反応かな? 覗き込んだ彼女は一度首を傾げると、ああ、帝の謎掛けですね、とあっさり言った。
『なあんだ、知ってたの。』
つまらない、と呟くと旋毛の下から悪戯な笑顔が現れる。
揶揄ったり困らせて注意を引くのに失敗した時、彼女がよく見せる表情だ。咎めるような、でも甘やかすような得意顔。
見る度に敵わない、と思う。信頼と愛情を、溺れそうな程
注がれているようだ。そして、いつもそれ以上のものが、
この胸からも溢れてくる。
近付いた距離をいいことに、拗ねた振りをしてその顔に擦り寄った。愛しい人はふふ、と笑い私の頭を撫でる。
いい匂いだ。気持ちがいい。まいるなぁ……
獅子なんて言わないけれど、鬼だ化け物だと呼ばれるのが常だって言うのに。君は簡単に、私を子猫のようにしてしまう。私にも、君を陽だまりで微睡む猫のように、安らがせることができれば良いのに。
ゴロゴロ喉を鳴らしたら『愛している』と伝わるかい?
嗚呼!死ななくてよかったな。
【子猫】
成熟しても可愛がられる猫は羨ましい。
#子猫
コネコチャン!!!!!!!!コネコ!!!!!コネコチャン!!!!!!!!!!!!!!コネココネココネコチャン!!!!!!!!!!!!!!!!!アアア!!!!!コネコチャァァン!!!!!!!!!!!!!!!クンカクンカス-...ハ-...スゥ-......ハァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアコネコチャアアアアアアアアアアアアアアアンンンンァァァァァアアアアアアアアコネコチャァァァァァァァアアアアンアアアアアアコネコチャン!!!!!!!!!ハァハァコネコチャ...コネコチャンコネコチャンモフモフハァハァモフモフ!!!!!コネコチャンモフモフフワフワ!!!!!!!!ハァァァァ!!!!!!!!!!!ンァァァァアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!コネコチャンコネコチャンコネコチャァァン!!!!!!!!!!!コネコチャンアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
———
子猫
お題『花は散らない』
古来より、人は花に想いを託す性質がある。
それは美しく咲き誇る花だけではなく、道端に咲いている小さな花にすらも。
名前をつけて、花言葉を考えて。抱えきれなくなった想いを託し、叶わなかった想いを花に置いていく。
けれど、いつか花は散ってしまう。花が散れば、そこに託された想いも消えてなくなる。
とある場所に咲く桜はそれが、あまりにも可哀想で。
だから花に託され、置いていかれた想いたちを散る前に全て引き受けて。長い、長い時間をかけて、想いの産物を産み出す存在になった。
かつてはこの桜の下でも、多くの人が想いを託し、あるいは置いていった。
今はこの桜を訪れる人間は、誰もいない。
「ねぇ、どうしてあの子を生んだんですか?」
美しく咲き誇る桜の下。漆黒の服を身に纏った、中性的な見た目と声のその人が、幹に寄り掛かって座っている。
その周囲には誰の姿も見えないけれど、まるで誰かがいるかのように会話を続ける。
「生まれ変わりたくない魂の為?それは私だって同じでしょう」
どこから返事が聞こえているのか、そもそも本当に会話が成立しているのか。疑問を差し挟む人はこの場にはなく、一人分の声のみが響く。
「でも、アレは私と違って魂を食べるじゃないですか」
その声は不満そうでもあり、悲しそうでもあった。
自分が生まれた理由と、アレが生まれた理由は似たようなものだ。
どちらも、生まれ変わりたくない魂の為。
自分は癒して廻らせるのがお役目だが、アレは違う。
どうしても、もう二度と生まれてきたくないという魂を食べて、生まれ変われないようにするのが、アレのお役目。
「人の想いに添うために、生まれたはずなのに。怖がれて可哀想」
人間が生まれ変わりを拒否する想いを持ち続けたから、アレは産み落とされたのに。
実際に出会えば、人はアレを恐れて逃げ出した。自分たちの想いに添うために生まれた存在だなんて、微塵も思わずに。
「では、私は行きますね。お客様が待っていますから」
話したいことを話し終えて、黒い影が立ち上がる。
挨拶のように、桜の幹を軽く数回ぽんぽんと叩く。次の瞬間には、まるで最初から誰もそこにいなかったかのように、その姿はかき消えていた。
「ねぇ、どうして俺を生んだの?」
静寂を破るように、声が響く。同時に、桜の木の下に少年の姿が現れた。まるで、空間を裂いて出てきたかのように、突然に。
それに驚く人は誰もいない。けれど少年は、そこに誰かがいて、返事があるのが当然のように話し掛ける。
「いらないものを貰うために俺は生まれたんでしょ。それは分かってるし、応えてるよ。でも、今度は返してくれって言うんだ」
咲き誇る桜の下で。かつて人間がそうしたように、ぽつぽつと想いを零す。
たくさんの人が、いらないものを持っていって欲しいと思ったから、貰うために生まれてきた。
ちゃんと想いに添っているのに、いらないものしか貰わないのに、何故か人間は自分に何かを盗られると恐れる。
大事なものを盗ったことなんて、一度もない。
いらないって言ったから。持っていってと願うから、応えたのに。
それなのに返せと言われたって、そんな風には生まれていない。貰うだけで、返すことなんてできはしない。
「ねぇ、人間はどうして俺たち怪異を嫌うの?想いに添うために、人間のために、生まれたのに」
俯き、人間のように想いを語る少年の頭上から、慰めるように桜の花が降り注ぐ。
その花が、少しずつ人の形を成して、少年と瓜二つの姿になる。
「俺が返すよ。返して欲しい人の想いに応えて」
「分かった。これからは、二人で応えよう」
いらないと思って手放したものが、本当は大切だったことに後から気付く。そういう人間は意外と多い。
それを嘆く人間の想いが桜に届いて、やっぱり桜は、そんな人間があまりに可哀想で。
いらないものを貰う怪異と対になるように、なくしたものを返す怪異を産み落とした。
「じゃあ、行くね」
二人、声を揃えて、手を取り合って。
現れたときと同じように、空気に解けるように姿を消した。
新たな怪異を生み出すために散ったはずの桜の花は、もう最初と遜色なく立派に咲き誇っている。
現代でも、人は変わらず花に想いを託し続ける。
ずっと変わらず、抱えきれなくなった想いを託し、叶わなかった想いを花に置いていく。
変わらないその性質が、あまりに可哀想で。
だから人の想いがある限り、この桜の花が散ることはない。
―END―
子猫
子子子子子子子子子子子子
(ねこのここねこししのここじし)
とぼとぼと歩く、女性の影がひとつ。
その影が、フラフラとしていておぼつかない。
ミャゥ。
可愛らしい声がする。
声の方を見ると、小さく震えてる子猫が一匹。
『お前も、一人なの?』
声に反応するかのようにミャウと鳴くと、トコトコこちらの歩いてくる。
ストン、と女性の前に座り、再びミャウ、と鳴いた。
『ごめんね、暖かいとこに入れてあげたいんだけど、家から追い出されちゃったから……』
顔にはいくつも傷がある。
足も、擦り傷だらけで裸足。
ろくに準備もせず出たか、唐突に追い出されたのが伺える。
ミャゥミャゥと、猫が女性の目を見ながら鳴く。
『おなか、空いたね。私もお腹すいた……』
女性の顔は痩けており、目も虚ろ。
しばらくご飯もしっかり食べていなかったのだろう。
視界は薄れていき、女性の意識はここで途絶えた。
「こんなん食えるかってんだよ!!」
ガシャンと食器の割れる音がする。
作ったご飯を捨てられる音。
何度も聞いた。
「てめぇ、俺の稼いだ金でこんなゴミみたいなもん作ってんじゃねぇ!!」
『グッぁ』
思い切り腹を蹴られ、床にたたきつけられる。
これもいつもの事。
もう慣れた。
「家畜みてぇに呻いてんじゃねぇよ。人間様が食えるもん作れるようになって出直してこい。」
『ガッ』
担ぎあげられ、玄関から外に投げ捨てられる。
バタン、とドアがしまって、ガチャンと鍵がかかる音も聞こえた。
身体中が痛かったけど、一体どの衝撃で痛いのかもう分からなかった。
近所の人はいつもの事だと、私たち夫婦に関わりたくなくて見て見ぬふり。
私に手を差し伸べてくれる人なんて、どこにもいない。
優しかった旦那。
数年前会社にリストラされてから、性格が豹変してしまった。
プロポーズの時に言ってくれた言葉は、今でも一言一句思い出せるのに、思い出しては消えていく。
はらり、と手のひらに冷たいものが触れた。
雪だ。
そういえば、今日は初雪が降るかもしれないと天気予報で言っていた気がする。
上着も着ずにこの寒さの中にいたら、凍え死んでしまう。
いや、生き延びてもまた地獄が続くだけ。
いっそ死ぬのなら……。
そう思いとぼとぼ歩き始めた。
冷たい、寒い。
もう誰にも期待はしない。
一人で、私は……
「起きてください!!!!」
大きな声でハッとする。
気づくと子猫と一緒に床に突っ伏していたようだ。
顔を上げると、若い青年が心配そうに顔を見ていた。
「大丈夫ですか?今救急車呼んだので!!」
あぁ、神様。まだ生かそうとするんですね。
腕の中で子猫がまた、ミャウ、と鳴く。
お前も生きていたんだね。
大丈夫、もう少しで助かるそうだよ。
「少しでも温まりましょう。上着貸しますから。」
青年が来ていたコートが肩にかけられた。
あぁ……あたたかい……。
青年の顔を見て安心したのか、そのコートをかける手に身を任せ、再び意識を手放した。
#子猫
子猫を拾ったら、そいつはとても可愛かった。メスの三毛猫で、名前は「小夏」
真夏に拾った子猫だから、小夏だ。
そして、俺が拾ったのは小夏だけではなかった。
「彰(あきら)君。お弁当作ってきた!」
「💢いらない」
「あっ!ねえ、彰君っ!」
小夏を拾った時は、真夏だったからと言ったけれど、その時は雨が降っていた。
よく聞く、不良が雨の中、捨てられた猫を拾う姿にトキメクとかいうやつ。
俺はそれに当てはまってしまい、同じクラスの林(女子)にみられてしまっていたのだ。
それから今日まで。ず〜っとああやって付き纏われて当たる。
うざったい……。
✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥
「小夏。お前は美人でかわいいし、あんまりにゃーにゃー言わないな……
見せてやりたいやつがいるよ。小夏のこの姿……静かで、大人しくて、かわいい。」
小夏のこの静かさが、俺には心地良かった。
林も、小夏を見習ってくれないだろうか……
「……小夏。あいつ、何であんなに騒がしいんだろう。ほんと、うるさいんだよ。」
「にゃ〜?」
俺は横になった。横になった俺の顔の所に小夏は近付いてきて、可愛い鳴き声を出す。
俺はそんな小夏の頭を、優しく撫でる。
「………うざいし、しつこいし、目障りだなって、思うときもあるけどさ……
……林が俺に話しかける様になってから、クラスの人も、俺に話しかけてくれる様にやったんだよな…」
俺は強面の見た目で、先生にも時たま反抗す。そんな姿を見て、同級生達は距離を取っていたが、明るい林が俺に話しかけているのを最近よく目にする為、無害扱いをされたらしく、少しずつではあるが、クラスの同級生達は、俺に話しかけてくれる。
俺は、それが何だかとても嬉しく思った。
「……ほんとうは、林にも、感謝しなきゃだよな……」
小声でそういったあと、メールがなった。
林からで「こんにちは。晩ごはんなに?」
というくだらないメールを寄越してきたので、さっきのことは撤回しようかと思う俺だった。
親愛なるフランシス兄さんへ
お久しぶり、兄さん。エニスです。このお手紙が届いている頃、こちらはつい先日家族のみんなであなたの無事とイエス様の生誕を祝ってクリスマス・パーティーを催しました。ニューヨークはもう一面銀世界のように真っ白なのよ。兄さんが戦っている欧州はどうかしら? 最近ラジオではどんどんドイツ軍が弱体化し、連合軍は東西でドイツを挟み撃ちにし始めたと聞きました。あの憎たらしいヒットラーの野望も御仕舞いでしょう。もしかしたらこの情報も古いかもしれませんね。
ご機嫌はいかがでしょうか、兄さん。あなたが無事に帰国できるよう家族みんなで日曜日は教会でお祈りしております。どうか御武運を。それと、このお手紙は父と母には内緒に書いています。兄さんは戦いでいっぱいいっぱいだから、このお手紙は本来は許されないものです。でも、私、本当に兄さんが心配で心配で、兄さんがもしかしたら苦しんでいるんじゃないかと思うと夜も眠れず泣いてばかりです。
どうか兄さん、死なないでください。一刻も早く戦争が終わることを祈ってます。そして何もかも忘れてあの懐かしいサンディエゴの海岸へドライブでもしましょう。それでは、さようなら。
エニス・J・ジェンタイルより
追伸
兄さんは以前お手紙で『僕の両手は血まみれで、もう二度と私の頭を撫でてやれない』とおっしゃいましたが、そんなことはありません。あなたは合衆国にとって、私たち家族にとって、勇ましく素晴らしい人です。どうかご自身を責めないでくださいね。愛しています。
「仔猫」
小さな命が生まれたよ
生き抜くには過酷な世界に
どうかなんとか生き延びて
小さな一生を全うしてください
私の知らない世界の片隅で
今日もどこかでひっそりと
目が、あった。
真夜中の教習所裏、見渡せど足音は無く、故に寂れた筈の場所。だがそう、思った。
東京郊外の住宅街なのだから、街灯はちりつきながらもそこかしこに灯って、月明かりを集めた眼が光れるような明度ではなく。
それでも、瞳孔が大きく開いた、怯えたような視線が、確実に私を見ていた。
なぜか、息が詰まった。
まじまじと見つめ返す。藪に逃げ込む手前だったのだろうか。私が踏み潰せば死んでしまうような、小さな小さな身体が、あった。
尖った鼻と、がたいの割に大きな瞳と耳を持つ、哺乳類。猫だ。生まれて幾ばくかの、猫。
私は、おまえの何倍の体長を持つのだろう。おまえを喰らうイタチやカラスより遥かな巨人が、おまえを見ている。
だがそれは、決して私から眼をそらさない。
沈黙に耐え兼ねたのは私だった。そろりと一歩踏み出せば、すかさずそれは身を翻し、藪の中へと消えて行った。
そうしてやっと、詰めていた息を吐き出した。
自分が喰われるのではなかろうか、とは思わなかった。ただ、あれが可哀想なものか。私はああは生きられまい。
……あれは、野良猫なのだろうか。暗がりでよく姿も見えなかったが。ただ、あれは強かに生きていくのだろうかと、ぼんやり思った。
【子猫】
お久しぶりです。本日は、お題を無視しての投稿になります。申し訳ありません。
とある書きかけのシナリオの冒頭を。必ず書ききるという意志の元、こちらにあげさせていただきます。
君の答えは、言葉を選ばないのなら、どうでも良いのだ。
私は人に何かを問えるほど、高い椅子に座ってはいない。どころか、自分だって答えあぐねているのだ。どうして正解を知ったような顔で、微笑めようというのか。
だから、回答なんてしなくていい。
ただ、ほんの少しだけ。想いを巡らせて欲しかった。
君が見ているつもりで見ていない何か。
君が誰にも見せてもらえなかった何か。
疲れるだろう。面倒くさいだろう。
そうして深く、傷付くかもしれない。
私は君を、どうしようもないほどに傷付けるかもしれない。
それでも、透いた濁った、紛れもない君の頭で、想像して欲しかった。充分にあり得る『かもしれない』噺を、一つ、君に届けたかった。
見下げればきっと容易く、想い描ける筈だ。
それは君が、気付きたくなかったと嘯く君が、端から全て、知っていたから。
責めるわけでは決してない。そんなことはできやしない。
だがどうか、どうか君が少しばかり、弱く在ってくれと。私は願って止まないのだ。
……斯くあれと、焦がれども。
子猫だった頃のリリィを思い出さない日は無い
真っ白でふわふわで、頼りなくちょこちょこ歩き回り
コテンと眠りにつくリリィ
大好きなミルクをたくさん飲んで
なかなか哺乳瓶を卒業できなかったリリィ
今日みたいな冷える日は
ストーブの前で温かい風を独り占めして
その真っ白の毛をほんのり茶色に焦がすリリィ
突然のお別れをすることになるなんて
予想などしてるわけもなく…
ただただ、もう一度リリィに会いたい
抱きしめたいという思いが募る
【 子猫 】
好きな動物を聞かれて、いつも『猫』と答える。
そっけない態度、でも寄り添いに来たり。
気ままな感じがたまらない。
君との出会いは雨の日だった。
公園の片隅で、震えながら丸まっているのを見つけた。
手持ちのタオルで拭きながら、急いで家に帰ったなぁ。
やんちゃな時期になると、家中走り回ったり隠れたり。
もう少し大きくなってからは、美猫にふさわしくなった。
君と最後まで連れ添いたかったけど、叶わないかも。
まさか、自分の方が先に逝くのかもしれないなんて…。
それでも、大事な君と離れたくない。
いずれは誰かの世話になることは分かってるけど、
君を感じていたいんだ。
鳴いて、存在を主張してくれたあの時から、君の虜だよ。
温かいなぁ… ふわふわだ…
今日も、腕枕で一緒に寝ようね。
子猫を拾った。
美味しそうにミルクを飲む小さな塊は、どうやら親とはぐれたみたいだった。
決死の思いで鳴き叫ぶその声に、私は目を逸らすことができなかった。
これからどうしたら、そう悩む私に対し子猫はそんなことつゆしらずに腹一杯の腹を見せて一言鳴いた。
人間の怖さを知らないその目。手放したら一体どうなってしまうのかとふと嫌な予感がよぎる。
とりあえず動物病院行こうか、私は子猫を抱えて外へ歩き出した。
これが私と愛猫との出会いである。
『子猫』
「猫飼いたーい!」
大型ホームセンターのペットコーナーで、子猫を指さして息子が言った。
「だーめ。」
「なんで?なんでダメなの!?」
「和弥、世話出来ないだろ?」
「出来るもん!」
「絶対出来なくなってパパやママが世話する事になるだろ。トカゲの時もそうだった。」
昨年、近所で見つけたトカゲを暫くケースに入れて飼っていた息子。
最初のうちは物珍しくお世話をしようと触っていたものの、結局は親の俺達が餌になりそうなクモを取って食べさせようと試みていた。
もう逃がすぞと言うと友達と一緒に飼ってるのだからダメだと怒り、餌を食べなかったトカゲは命を落とした。
『命を預かるって事は責任を伴うんだぞ。』
大泣きする息子にそんな事を言ったが、小1だった彼にどれだけの事が理解出来たか分からない。
「パパも猫ちゃん好きでしょ?」
ペットコーナーから離れながら、息子が聞いてくる。
「好きだけど…。」
確かに俺も子供の頃から猫が好きだった。
母親に息子と同じように「猫飼いたい!」と言った事もある。
当時、俺は小学2年生。
母は俺がまだ物心が付かない時に離婚してシングルマザーになっていた。
俺と母はそんな訳で母の実家に暮らし、フルタイムで働く母と祖父母と住んでいた。
『お祖母ちゃん、猫の目が怖いから苦手なんだって。だからダメ。』
『自分でお世話出来る大人になったら飼いなさい。』
猫を飼いたいと言う度に、そんな事を言われて断られていた。
一度、俺が息子にさっき言ったように、母から
『どーせ途中でお母さんが世話することになるでしょ?』
と言われた事がある。
その時、『いいじゃん!』と何も考えず、返事したら『お母さんは出来ないの!命を預かる事には責任が伴うの!』と今まで猫を飼いたいという訴えに対して諭すように言うだけで、強く怒った事のなかった母が珍しく怒った。
何を言ってるのか、子供心によく分からなかったが、それ以降母に猫を飼いたいと訴えることはなんとなくやめた。
あれから30年以上経って、子どもを持つ親になった今なら分かる。
『命を預かる事は責任を伴う』
ただご飯を食べさせればいいだけの話ではない。
一緒に遊ぶ、出来るように教える。
一緒に悲しみ、泣き、笑い。
時には叱り、そっと見守る。
彼が成人するまでは…と思う。
母もきっと同じ気持ちだったのだろう。
俺が小1冬、2週間程母が入院したことがある。
『ガンっていう悪いものが出来たから、こっちのおっぱい取ってきたんだよ。』
と、退院後お風呂に一緒に入った時に母が話してくれた。
その後、それまでと何も変わらず、数十年と歳を重ねた今も元気に過ごしている母。
当時の母の気持ちを想像すると、いつ再発するかという恐怖、いつまで元気で子どもを育てられるかという不安、いつまで子どもの成長を見守れるのだろうという悲しみ…色んな事を考え、感じていたのだと思う。
母に『お母さんが面倒みればいいじゃん!』的に言った時に酷く怒ったのもなんとなく今なら想像が出来る。
猫の寿命を考えた時に自分が生きていられるか分からないと思ったのと、病気になってしまって小学校低学年の俺を成人まで育てられないかもしれないと自分を責めての発言だったのかもしれないと…。
「猫は飼えないけど、お祖母ちゃんの家の近くに保護猫カフェがあったな…行ってみるか?」
「猫ちゃんに触れるの!?行きたい!行く!!」
さっきまで猫が飼えないことにしょんぼりしていた息子の目が輝き出す。
「よし、じゃあ今度の休みに行こう!お祖母ちゃんにも会ってこよう。」
「うん!」
テンションが高まった息子が俺の腕を両腕でグイッと掴んでくる。
いつまでこんなしてくれるかなぁ…。
願わくば健康で元気に彼が大人になるまで見守りたい。
そんな事を思いながら、息子と手を繋いでホームセンターを後にした。
子猫
子.丑.寅.卯.辰.巳.午.未.申.酉.戌.亥
年賀状を 書いてて 私は、思う
猫年も、あったら良かったのにと
よく聞く十二支の 物語で
神様の宴に 招待された
動物達が その宴に来た順番で
干支を 決められたって
その際 宴を開く日付を 鼠に
間違われて、教えられ、
猫は、宴に、来られ無かったって、
だから 猫は、鼠を追い掛ける様になったとか何とか...
「でも...十三支じゃ語呂が悪いよね...」
そんな意味の無い事をぐるぐる考えていると 「ニャア~」私の膝の上に
飼っている 子猫が乗って来た。
そうだ! と私は、閃いた。
丁度 今年は、子年だ
だったら... 私は、子猫の右前足を
朱肉に 乗せる そして...
年賀状の上に ピタッと猫の前足を
貼り付け 離す。
「できた!っと」年賀状には、
見事な猫の肉球スタンプが、出来上がっていた。
子年に 横入り
これで ささやかな猫の復讐が 出来たかな? なんてね!
私は、可笑しくなって 子猫と
顔を見合わせた。
子猫は、丸い 大きな目を私に
合わせて 首を傾げるばかりだった。
ハッピーニューイヤー
今年もよろしくね!!
子猫
昔、捨てられていた子猫を拾ってきた事がある。親に見つかると絶対に怒られるので、自分の部屋の押し入れの奥にスペースを作って入れていた。
子猫はお腹が空くと泣くんです。
そんな事当たり前なのに、これなら絶対に見つからないと思い、学校にも行った。学校から帰ると、母が押し入れの子猫はどうしたの?と私に詰め寄る。
元のところに置いて来なさい。と言われ、泣きながら置きに行った。飼ってあげるなんていうハッピーエンドで終わらなかったその事実は、私の心の中にいつまでも燻っている。誰かが、きっと飼ってくれていると思いながら。
母が悪い訳ではない。生き物を飼うって本当に大変な事だ。
大人になって自分で犬を飼っている私は、その大変さを知っている。
でも、子猫を見ると幼い頃の事を思い出す。
少し切ない思い出です。
「あ゛ーーーあああ……」
外での仕事。仲間と打ち合わせしてっとちょっと離れたところで君の悲鳴にも似た叫び声というか泣き声というかなんというか聞き慣れた声が聞こえてきた。
「…行かなくていいの?」
「…理由、わかんだろ」
まぁね、と仲間が笑う。やれやれ、そうは言っても行ってやらないと後で拗ねられる。それも可愛いけどな、と思いつつ俺は過保護だねぇと笑う仲間のところから君に近づいた。
立ち尽くす君の足元に可愛い子猫が2匹にゃん。
彼は猫が苦手なのだ(嫌いではなくあくまでも苦手と力説する)まさににっちもさっちもいかない状況。
「かーわい!」
「こ、ここの、飼い猫だって!笑顔で!係の人!去って行った!」
「まぁこの世に猫が苦手な奴がいるとは思えねーもんな。アレルギーの人ならすく立ち去るし」
「た、たちさりたい!」
でも猫は彼の足元を行ったり来たり。俺はしゃがみ込んで猫ちゃんに手を伸ばす。
「ほーれほれほれ、このおにーさんはこんなに可愛い君たちが苦手なんだよー」
子猫たちが俺の手に近づいた隙を見てささっと俺の後ろに逃げる君。俺はぷぷっとひと笑い。
「まったく、猫みたいなおにーさんなのにねぇ」
「ねこじゃないもん」
そう不貞腐れつつ俺の背に隠れる君はますます猫みたいで、みんなが見てなかったらなでなでするのになーと俺は思ったわけでした。
▼子猫
「動物ネタ、このアプリ、珍しいよな……」
5月11日あたりの「モンシロチョウ」に、8月22日あたりの「鳥のように」。たしか「鳥かご」なんてお題もあったが、この3個しか記憶に無い。
某所在住物書きは慌てて、今回投稿用にと事前に用意していた文章を書き直しにかかった。
ガチャ爆死の心境である。やはり事前準備からの、最後の数行にお題を付け足して終了なスタイルは、完全にギャンブルであった。
もう止めよう。懲りた。物書きはため息を吐いた。
「で、こねこ……?」
――――――
飼い猫の写真を見ていると、瞳にせよ毛色にせよ、「子猫の頃はこの色だったのに、今コレだもんな」なこと、ありませんか、そうですか。
未だに近所の子猫に写真を撮らせてもらえない物書きが、こんな苦し紛れのおはなしを思いつきました。
最近最近の都内某所、「猫又の雑貨屋さん」という名前のお店に、自称人間嫌いの捻くれ者が、職場の後輩と一緒に、買い物に来ておりました。
「いや、本当は、もっとキッパリ言うつもりだったんだ。カンペだってそういう風に用意していた」
「はいはい」
「信じていないだろう。本当だ。証拠もある」
「はいはい」
捻くれ者は、名前を藤森といいました。
詳しいことは前作や、過去作9月13日あたり参照ということで丸投げして、
要するに藤森、諸事情あったのです。
執着強い解釈押し付け厨に惚れられまして、心をズッタズタにされまして、
それで区を変え職を変え、縁切って逃げたら「勝手に逃げないで」の、「もう一度話をさせて」です。
9月14日、近所の稲荷神社でパンパンかしわ手を叩き、神様に決意表明のお参りをりして、
その覚悟を神様が聞いちゃったか、狐のイタズラか。
このほど、先日、無事一応、初恋相手とのトラブルに、藤森勝利で決着が、ついてしまったのです。
てっきり相手がゴネて無理矢理復縁させられると、
思ってばかりだった藤森。今のアパートを引き払う準備を、全部、整え終えてしまっておりました。
つまり、自分で買ったものを全部処分して、部屋をデフォルト家具のデフォルト配置に戻してしまっておったのでした。
勝っちゃったからどうしよう。一度処分してしまった家電と家具を、また新しく買い直しましょう。
「悪縁断絶、おめでとうございます」
リメイク着物のかわいい服を来た女の子が、にゃーにゃー、藤森に接客します。
「新生活セット、シーズン外でお安くなってます」
どうして藤森の背景を知っておるのでしょう。
女の子いわく、にゃーにゃー、稲荷神社の末っ子子狐に聞いたそうです。
稲荷神社の末っ子子狐とは、なんでしょう。
細かいことは気にしないのです。
「お部屋の物を全部買い直すなら、オススメですよ」
にゃーにゃー、にゃーにゃー。
女の子は慣れた様子の営業笑顔で、ごろにゃん右手を頬に当て、お金カモンな招き猫ポーズをしました。
「しっかりした子だね……」
着物の女の子に店内を案内してもらいながら、藤森の後輩、言いました。
「『猫又の』雑貨屋さんだからかな、ちゃんとコンセプト守って接客してるし。手慣れてるし」
女の子から「稲荷神社の狐」のワードが出て、非常に思い当たるところのあった藤森。
後輩に冗談めいて、自分の見解を言おうとしますが、
途端女の子と目が合いまして、言葉を引っ込めます。
「猫又の雑貨屋さん」の店員さん、かわいいリメイク着物の服を来た女の子は、
ごろにゃぁん、ちょっと暗い含み笑いの瞳で、藤森のことを見ておったのでした。
猫又の雑貨屋さんで、女の子がにゃーにゃー接客するおはなしでした。
どこにお題の子猫が居たかは、まぁ、まぁ。にゃーにゃー。多分ご想像のとおりでしょう。
おしまい、おしまい。
あなたと私では生きる時間の流れが違う。あなたがひとつ年を取る度に、私は4倍以上の年月を経る。
あなたの時間はゆっくりなのに、私の時間は光の早さで過ぎていく。
幼い私を抱いていたあなたは、その温かな手のぬくもりのままで、老いた私をその腕に包み込む。
けれどね…捨てられた子猫だった私を、あなたが拾って救ってくれたあの瞬間を、私は一度も忘れたことはない。あなたの腕の中で潰えるこの時でさえ私はまだあの時の子猫のようにあなたの指をぺろりと舐めた。
あなたは私の頭を撫で、頬をさすり、喉をくすぐる。
ああ、あなたに出会えたことが、私の生まれた意味なのかもしれない…。
あなたにとってはほんの数年でも、私にとってはすべての生を捧げた…あなたを愛した生涯でした。
【子猫】