親愛なるフランシス兄さんへ
お久しぶり、兄さん。エニスです。このお手紙が届いている頃、こちらはつい先日家族のみんなであなたの無事とイエス様の生誕を祝ってクリスマス・パーティーを催しました。ニューヨークはもう一面銀世界のように真っ白なのよ。兄さんが戦っている欧州はどうかしら? 最近ラジオではどんどんドイツ軍が弱体化し、連合軍は東西でドイツを挟み撃ちにし始めたと聞きました。あの憎たらしいヒットラーの野望も御仕舞いでしょう。もしかしたらこの情報も古いかもしれませんね。
ご機嫌はいかがでしょうか、兄さん。あなたが無事に帰国できるよう家族みんなで日曜日は教会でお祈りしております。どうか御武運を。それと、このお手紙は父と母には内緒に書いています。兄さんは戦いでいっぱいいっぱいだから、このお手紙は本来は許されないものです。でも、私、本当に兄さんが心配で心配で、兄さんがもしかしたら苦しんでいるんじゃないかと思うと夜も眠れず泣いてばかりです。
どうか兄さん、死なないでください。一刻も早く戦争が終わることを祈ってます。そして何もかも忘れてあの懐かしいサンディエゴの海岸へドライブでもしましょう。それでは、さようなら。
エニス・J・ジェンタイルより
追伸
兄さんは以前お手紙で『僕の両手は血まみれで、もう二度と私の頭を撫でてやれない』とおっしゃいましたが、そんなことはありません。あなたは合衆国にとって、私たち家族にとって、勇ましく素晴らしい人です。どうかご自身を責めないでくださいね。愛しています。
11/16/2023, 5:57:12 AM