『風に乗って』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
風に乗れるものは
海を渡って、どこへいくのか
異国の砂漠を抜けて
世界の先端をも超えて
宇宙の入り口から
誰にも解らないところまで
そんなに遠くへ行ったとして
君は君でいられるのか
僕のことを覚えていられるのか
もっと手前でいいんじゃないのか
房総半島の海岸はきれいだ
ひとけのない砂浜には
あらゆるものが落ちている
君のよく知っているものも
初めて見るものも
宇宙の欠片だってあるかもしれない
それでも君は遠くを目指す
君は風に乗れる者だから
例え僕のことを忘れてしまっても
風が吹いたら行ってしまう
テーマ《風に乗って》
・声が届く
・気持ちが届く
・愛が届く
・やることが上手く行く
風にのって
風にのって何かが運ばれていく。それは声か、思いか、風船か。
あるいは悪意か、噂か、誤解か、あの人の無事を報告する知らせか。
今日も空気と一緒に何かが私のもとへたどり着く
自分の手のひらくらいの大きさの小鳥
小さい子供がフゥと飛ばすシャボン玉
木々の隙間を通る風の音
頬を優しく撫でる風
ほんの小さな力なのに、
それは本当に温かく、時には冷たく、私たちを包み込む。
今、私の体はありえないくらいに軽く、誰も私の存在に気づかない。
あれほど望んだことなのに、いざ叶うと何かぽっかりと穴が空いた気分だ。
それに、どこからか聞こえてくるすすり泣く声が
私の頭の中に木霊する。
今更、“ ごめん ”と言っても、その声は届かない。
私の声は風に溶け込み、誰にも届くことなく散っていく。
私の涙は伝うことなく消えていく
まるで、シャボン玉が弾けるように。
近くに桜の木なんてないのに、
ベランダに花びらが一枚、飛んできたことがある。
なんとも言えず風流で、いい気持ちになった。
どこのポイ捨てだったか知らないが、
駄菓子の空袋が飛んできた時とは
正反対の気分だった。
※ポケモン剣盾二次創作・マクワとセキタンザン
ぱちん、ぱち。
赤の破片が舞ってすぐに消えてゆく。頬に触れる仄かな暖かさがじんわりと滲んで染み込むようだった。懐かしい木材に似た香りが燻って、鼻腔を焦がしてゆく。
次々と踊る真っ赤な粉は、その姿を見せたかと思うと、瞬きをしている間に闇夜の中へと溶けていった。
ぱち、ぱぱぱ。
耳に届くのは軽快な彩りの音だった。弾けてはすぐ聞こえなくなる、ほんのミクロが爆発する声は、耳をすまさなければ木の枝と枝が触れ合う音にかき消されてしまいそうだった。
ふう、と空気の流れに押されたたくさんの手と手は、ぐるりとその場で激しく踊り、飛び散るように光を失って落ちてゆく。
流麗なあわいの火の粉の舞と、麓の石炭の山の輝きがふわっと強まったかと思えば、吸い込まれるようにして落ち着いた色に変わってゆく。
ぼんやりと瞼を開いたマクワの目に映る、温かいひかりだった。いつの間にか座ったままうたた寝をしていて、そうして目を覚ました。暗闇の中のキャンプのテントも、光に照らされて鮮やかなブルーを示していた。
片手に持ったままの、さっき相棒に持ってもらったモーモーミルクのマグカップはすでに人肌の方が温度がある。
マクワはそれを一気に飲み干して、自分の折りたたみ椅子に付いていたテーブルにのせた。それからまだぐうぐうと眠ったままの相棒に寄せて、座ったまま椅子を抱えると、頬を温める熱はさらに強まった。
ぱ、ぱぱ、ぱちん。ぱちん。
新鮮な酸素を食べた炎が、喜びの声をあげて火の粉を舞い上げる。すぐに真っ白の灰になり、夜空の中へと滲んでゆく。
優しく猛々しいバディのいのちが今マクワの隣にあって、絶えず煌めき続けている証左だった。
どこまでも、どこまでも飛んで行けるといい。なるべく遠くの空の下まで。
いわの輝きはひとの心も照らし出すことを、誰よりも知っていた。
けれど。
ぱちん、ぱちん、ぱちん。
どうかこの灯火が、ずっと隣にあり続けますように。ぼくが磨く、素晴らしい輝きが、たくさんの人に届けられるように。
マクワはふう、と大きく息を吹き、火の粉が揺れ踊る姿を目に焼き付けて、再び目を閉じるのだった。
《風に乗って》
風に乗って微かに声が聞こえてくる。
懐かしい旋律は高校の頃に見たアニメ映画の主題歌。
時おり音程を外すその歌声に、思わず笑みがこぼれる。
歌詞は覚えていなかったから、こっそりハミングで合わせて口ずさむ。
外で洗濯物を干す妻には、きっと部屋の中にいる私の声は聞こえないだろう。
歌いながら脳裏に蘇るのは、スクリーンの鮮やかな光景。
そして、初めてのデートに緊張して手に汗をかいていた若かりし頃の自分。
隣に座る彼女をチラチラと横目で盗み見るばかりで、映画の内容はろくに頭に入ってこなかった。
「今日のお昼はオムライスにしようと思うんだけど」
「いいね、ちょうど食べたいと思ってたんだ」
あの初デートの日、映画の後に食べた昼食もオムライスだった。
そんなことを今もしっかり覚えている自分に笑いが込み上げてくる。
しかし、あの歌を口ずさんでいた妻が昼食のメニューをこれにしてくれたことが嬉しいのも事実で。
それがたまたまなのか、自分と同じくあの日を思い出してのことなのかは分からないけれど。
今夜は久しぶりに2人であの映画を見たいといったら、妻はなんて言うだろうか。
笑顔になってくれることを祈りながら、その日の午後、私はしまい込んだDVDのケースを引っ張り出したのだった。
風に乗って、あなたの香りが飛んでくる。
その風は君の髪をなびかせる。
恋は風に乗って、想いを届ける。それは香りだったり、手紙だったりするだろう。形は様々だ。
君が死んだと、風の便りに聞いた。病死だそうだ。
君は海が好きだった。だから、骨は遺言通り海に撒かれたらしい。
私の涙も、いずれは海に流れ君と一緒になる。ああ、それは望ましい。そんな幸せはない。
だけど、その前に。君の骨が、その粉が。風に乗って、私の元へ飛んで来ないかと、帰っては来ないかと、海を越え、私は空を見上げた。
風にのって届けられのは、吐き気をもよおす便所の匂いでした
in 市民体育館
風に乗って
子どもの頃からずっと使っている学習机の、開かずの間である引き出しを二十年ぶりに開けた。
くたびれた封筒を取り出す。
今よりもよっぽど下手くそな字。それでも当時の最高傑作だった想いの丈は、何枚もの便箋を犠牲にして生み出された代物だ。
連れ添ったまま庭に出て、青い青い空を見上げる。
初夏の風が穏やかに、乾いた頬を撫でた。
この季節が好きだと言った、あの人。
目線を落とし、用意していたライターに火を灯す。
近づけた縁辺からみるみるうちに手紙は焦げ、逝った。
先生。
風の便りに、あなたが亡くなったと聞きました。
孤独だった私を唯一、見捨てずにいた、人。
今さらながらの私の遺灰は、あなたの下まで届くでしょうか。
(2023.4.30)
風にのって
「あ、」
くんくんと鼻を鳴らす。周囲を見渡してから首を傾げる。
おかしいな、今絶対××の香りがしたのにな。
いってらっしゃいのキスのときに、毎日確認するからよーく知っている××の香水の香りがしたのに、肝心の××がいない。すれ違った人もいないから、たまたま同じ香水だったってこともない。
××がいるかと思ったけどそうじゃなかったから、ちょっと寂しく感じてる俺がいる。そうだよな、早く帰ってくるなら連絡入るもんな。まだこの時間に××がいるわけないよな。でもじゃあなんで××の香りがしたんだろ。
「んんー?」
反対側に首を傾げても分からない。スーパーの袋を持ち直しす。ふわりとまた××の香りがして、そこで俺は思い出した。今着てるパーカー、××のじゃん! これに残ってた××の香りじゃん!
急に恥ずかしくなって、それを飛ばすために俺は早歩きになる。くっそー、椅子の背もたれに掛けられていたから、ちょうどいいわって思って羽織ってきたけど、まさか、こんなことになるなんて。
ポケットからスマホを出して××に連絡を入れた。今夜はロールキャベツ。すぐに既読がついて、ハートのスタンプが送られてきた。アイツ、仕事中だよな? そんな暇なの? でも秒で返信が来るのは嬉しい。悔しいけど、嬉しい。
ニヤつく口元を隠すのに手を上げれば、パーカーの袖から××の香りがして、俺は何とも言えない気持ちになる。同じ洗剤で洗ってるのにな。俺も香水つけるようになったら××にこうやって思い出してもらえるのかな。
むむー、今度探してみるかー? でも香水のこと分からないからなぁ。××に相談してみるー?
帰宅した俺はそのまま夕飯を作って、仕事から帰ってきた××を出迎えたら、××のパーカーを着ていることにすごく興奮された。そ、そんなにいいもの? 玄関で××に力強く抱きしめられながら俺は首を傾げた。
風は空気の移動によって起こる。自分は動いていないけど、その周りにある空気が動くから風が吹いているように感じるし、自分自身が動いていて、周りにある空気の接する場所が次々変わるから風を感じる。
自分が動いているのか、周りが動くのか。
では、「風に乗る」はどういう状態なのだろう。
元々空中にあってその空気が移動するからなのか、もの自体が地面と接することなく水平方向へ移動しているからなのか。どこを基準として考えているのかによって表現が変わってきそうだ。
「もの」に対する見方は表裏一体だと思う。この角度から見ているからこう感じる、あの角度ではこう見えるから、見え方は人によって違い、意見が異なるのは当然だと私は考えている。
風に乗って、君はどこまででも飛んでいく。
君の声も、
君の夢も、
君の全てが、上昇気流を巻き起こす。
でも、君はまだ知らない。
上昇気流が巻き起こすのは、雨であるということを。
#風に乗って
どこかから醤油の香りがしてくる。
肉じゃがかな。
そう思ったところで、お腹がぐるるる……と空腹を主張する。
「そうだねぇ、今日の夕食はどうしようか」
独りごちて、手にした鞄を持ち直す。冷蔵庫の中身を思い出しながら、足りないものをリストアップ。魚屋、肉屋、八百屋……商店街で寄るべき店を思い浮かべる。
そうするうちに、さらにお腹が鳴き始める。
ちょうどタイミングよく、近く肉屋のコロッケが揚がる香り。
何をするにも腹ごしらえは必要だ。誰にともなく言い訳して、私はまず肉屋へと足を向けるのだった。
「空腹との帰り道」/風に乗って
ひらひら舞うビニール袋
地上からどんどん離れて登ってく
宇宙までも行けそうだね
密度の低さが羨ましい
自分の重さに耐えきれない
生命に価値がありすぎて
私、意識が飛びそうよ
気体になりたい
実体を薄めて薄めて
霧散してしまいたい
なのにまだ液体にさえなれない私
昇華されたいしてほしい
太陽もっと照りつけて
今日こそ蒸発して風に乗って空へ
波に乗るみたいに、風に乗れたら素敵じゃない?
そんなことを言いながら、折り紙を取り出して飛行船を作りはじめる友達がいて、本当に良かったと思っている
『風に乗って』
―風に乗って―
子どもの頃、タンポポの綿毛を見つけてはフーって吹いて飛ばして遊んだな。
風に乗ってどこまでも~、そんな体力はもうないんだけどね。
昔は歩いたり自転車乗ったりでいろいろ買い物に行っていたけど今はほとんど行かなくなったな。これは体力の問題もあるけど通販が便利すぎるというのが一番の理由だな。
とはいえ食べ物を通販で買うことはあまりない。なのでバイト帰りに時々スーパーに寄って帰る。
昨日は安いバナナを買った。一昨日買ったちょい高めのバナナとほとんど変わらない。むしろ身がしっかりしてて安いやつのほうがいいバナナだ。
ちょい高めのバナナは皮が厚くて身が細かった。でもこれは個体差によるものかな。
まぁ味も食感もほとんど変わらないならこれからは安いバナナでいいな。
『風に乗って』
チリン
「こら、お供え物なんだから、食べてはいけないよ」
そう声をかけられて伸ばしてた手を引っ込めた。
声をかけられた方へと顔を向けると、頭に変なお耳をつけてふさふさのしっぽを生やした男性がたってたんだ。
「だれ?おにいさん」
「お兄さんはここの管理をしている人だよ」
「だれもたべないのに、たべてはいけないの?」
「それはね、神様のお供え物で───」
そこからそのお兄さんに会うために、学校帰り神社に通った。
ある日、
「ねえ、おにいさんにはおもとだちいないの?」
「んー、そうだねぇ……良かったらなんだけど咲ちゃんが僕とお友達になってくれる?」
「いいよ!私もね、がっこうにおともだちいなくて…おにいさんとおともだちになりたいとおもってたの!」
「そっか、」
「うん!おともだちだから、これからもずっといっしょね!」
中学生にもなると、そんなことはすっかり忘れていて、いつの間にか高校生になっていた。
下校中、珍しく友達の家に近い道から帰っていたこともあって普段とは違う道を歩いていた。
「あ、ここ曲がるわ」
「ほんと?じゃあここまでだね」
「うん、じゃあまた明日ー」
「はーい」
そう言って友達は角を曲がっていった
「にしてもこの道、すごい久しぶりだなー、小学生以来かも」
ギリギリ車が2台も通れなさそうな狭い道を歩いて行く、住宅街で塀が建っているというのもあって余計に狭く感じる。
少し道を歩いていると、どこか懐かしさを覚えた
「あ、この神社懐かしい」
なぜかは分からないが、昔この神社に通っていた記憶がある。まぁどうせ、猫が住み着いていただとか、神社にくるおばあさんがお饅頭をくれたとか、そんな感じだろう。
「にしてもこの階段、こんなにきつかったっけ」
「この桜の木も、昔は大きく感じたのに」
はぁ、
階段を登りきった私は息を着くと、後ろを向いて階段に座った。
瞬間
「昔は小さかったからね、もう来ないと思ったよ。また来てくれたんだ」
何故か振り向けなかった
「なんで、」
「なんで?ずっと一緒でしょう?友達だもの」
動けるようになったと気づき、振り返った時には、そこに何も無かった。
チリン
風に乗って、僅かに鈴の音が聞こえたような気がした。
───
え、待ってオチがついてないんだが?
「よっ」
見晴らしの良い丘から飛び降りた。滑空するためで命をなげうちたい訳じゃないから安心してほしい。待ち合わせ場所へのショートカットで予定の時間に間に合うか正直ギリギリなところだ。遅れても君は怒らないけど誘った俺が許せないんだ。
夕食の時間が近いから最後の売り込みに声を張り上げる市場の商人たち。付加価値を付けて「お得」と言えば主婦は喜んで買っていた。早いところだと煙突から煙がでて夕食のいい匂いが『風に乗って』鼻をついてくる。
ゆっくり下降して何を頼もうか考え始めた。いつものセットか…さっきのスパイスの効いた匂いも忘れられない。この街で手に入る香辛料と少し違う異国の香りも食欲がそそられた。何種類ものスパイスを合わせて作り上げる料理は様々な味わいがあるそうで、組み合わせは尽きることがないと店主から聞いたことがある。仕事先で食べたカレーの種類はメニュー表には収まっていなかったな…。
異国の料理に思いを馳せてしまった。着地した俺の鼻は先ほどの匂いを探し、体験したことのない味を得たいと口内にだ液が溜まる。
時間は何とか間に合って髪や汚れを手早く直す。小さく見えた君の姿に手を振って、夕食の候補をいくつかリストアップしていた。