『風に乗って』
チリン
「こら、お供え物なんだから、食べてはいけないよ」
そう声をかけられて伸ばしてた手を引っ込めた。
声をかけられた方へと顔を向けると、頭に変なお耳をつけてふさふさのしっぽを生やした男性がたってたんだ。
「だれ?おにいさん」
「お兄さんはここの管理をしている人だよ」
「だれもたべないのに、たべてはいけないの?」
「それはね、神様のお供え物で───」
そこからそのお兄さんに会うために、学校帰り神社に通った。
ある日、
「ねえ、おにいさんにはおもとだちいないの?」
「んー、そうだねぇ……良かったらなんだけど咲ちゃんが僕とお友達になってくれる?」
「いいよ!私もね、がっこうにおともだちいなくて…おにいさんとおともだちになりたいとおもってたの!」
「そっか、」
「うん!おともだちだから、これからもずっといっしょね!」
中学生にもなると、そんなことはすっかり忘れていて、いつの間にか高校生になっていた。
下校中、珍しく友達の家に近い道から帰っていたこともあって普段とは違う道を歩いていた。
「あ、ここ曲がるわ」
「ほんと?じゃあここまでだね」
「うん、じゃあまた明日ー」
「はーい」
そう言って友達は角を曲がっていった
「にしてもこの道、すごい久しぶりだなー、小学生以来かも」
ギリギリ車が2台も通れなさそうな狭い道を歩いて行く、住宅街で塀が建っているというのもあって余計に狭く感じる。
少し道を歩いていると、どこか懐かしさを覚えた
「あ、この神社懐かしい」
なぜかは分からないが、昔この神社に通っていた記憶がある。まぁどうせ、猫が住み着いていただとか、神社にくるおばあさんがお饅頭をくれたとか、そんな感じだろう。
「にしてもこの階段、こんなにきつかったっけ」
「この桜の木も、昔は大きく感じたのに」
はぁ、
階段を登りきった私は息を着くと、後ろを向いて階段に座った。
瞬間
「昔は小さかったからね、もう来ないと思ったよ。また来てくれたんだ」
何故か振り向けなかった
「なんで、」
「なんで?ずっと一緒でしょう?友達だもの」
動けるようになったと気づき、振り返った時には、そこに何も無かった。
チリン
風に乗って、僅かに鈴の音が聞こえたような気がした。
───
え、待ってオチがついてないんだが?
4/30/2023, 7:35:02 AM