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「よっ」
 見晴らしの良い丘から飛び降りた。滑空するためで命をなげうちたい訳じゃないから安心してほしい。待ち合わせ場所へのショートカットで予定の時間に間に合うか正直ギリギリなところだ。遅れても君は怒らないけど誘った俺が許せないんだ。
 夕食の時間が近いから最後の売り込みに声を張り上げる市場の商人たち。付加価値を付けて「お得」と言えば主婦は喜んで買っていた。早いところだと煙突から煙がでて夕食のいい匂いが『風に乗って』鼻をついてくる。

 ゆっくり下降して何を頼もうか考え始めた。いつものセットか…さっきのスパイスの効いた匂いも忘れられない。この街で手に入る香辛料と少し違う異国の香りも食欲がそそられた。何種類ものスパイスを合わせて作り上げる料理は様々な味わいがあるそうで、組み合わせは尽きることがないと店主から聞いたことがある。仕事先で食べたカレーの種類はメニュー表には収まっていなかったな…。

 異国の料理に思いを馳せてしまった。着地した俺の鼻は先ほどの匂いを探し、体験したことのない味を得たいと口内にだ液が溜まる。
 時間は何とか間に合って髪や汚れを手早く直す。小さく見えた君の姿に手を振って、夕食の候補をいくつかリストアップしていた。

4/30/2023, 7:25:28 AM