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風にのって


「あ、」
 くんくんと鼻を鳴らす。周囲を見渡してから首を傾げる。
 おかしいな、今絶対××の香りがしたのにな。
 いってらっしゃいのキスのときに、毎日確認するからよーく知っている××の香水の香りがしたのに、肝心の××がいない。すれ違った人もいないから、たまたま同じ香水だったってこともない。
 ××がいるかと思ったけどそうじゃなかったから、ちょっと寂しく感じてる俺がいる。そうだよな、早く帰ってくるなら連絡入るもんな。まだこの時間に××がいるわけないよな。でもじゃあなんで××の香りがしたんだろ。
「んんー?」
 反対側に首を傾げても分からない。スーパーの袋を持ち直しす。ふわりとまた××の香りがして、そこで俺は思い出した。今着てるパーカー、××のじゃん! これに残ってた××の香りじゃん!
 急に恥ずかしくなって、それを飛ばすために俺は早歩きになる。くっそー、椅子の背もたれに掛けられていたから、ちょうどいいわって思って羽織ってきたけど、まさか、こんなことになるなんて。
 ポケットからスマホを出して××に連絡を入れた。今夜はロールキャベツ。すぐに既読がついて、ハートのスタンプが送られてきた。アイツ、仕事中だよな? そんな暇なの? でも秒で返信が来るのは嬉しい。悔しいけど、嬉しい。
 ニヤつく口元を隠すのに手を上げれば、パーカーの袖から××の香りがして、俺は何とも言えない気持ちになる。同じ洗剤で洗ってるのにな。俺も香水つけるようになったら××にこうやって思い出してもらえるのかな。
 むむー、今度探してみるかー? でも香水のこと分からないからなぁ。××に相談してみるー?
 帰宅した俺はそのまま夕飯を作って、仕事から帰ってきた××を出迎えたら、××のパーカーを着ていることにすごく興奮された。そ、そんなにいいもの? 玄関で××に力強く抱きしめられながら俺は首を傾げた。

4/30/2023, 8:37:12 AM