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※ポケモン剣盾二次創作・マクワとセキタンザン

ぱちん、ぱち。
赤の破片が舞ってすぐに消えてゆく。頬に触れる仄かな暖かさがじんわりと滲んで染み込むようだった。懐かしい木材に似た香りが燻って、鼻腔を焦がしてゆく。
次々と踊る真っ赤な粉は、その姿を見せたかと思うと、瞬きをしている間に闇夜の中へと溶けていった。
ぱち、ぱぱぱ。
耳に届くのは軽快な彩りの音だった。弾けてはすぐ聞こえなくなる、ほんのミクロが爆発する声は、耳をすまさなければ木の枝と枝が触れ合う音にかき消されてしまいそうだった。
ふう、と空気の流れに押されたたくさんの手と手は、ぐるりとその場で激しく踊り、飛び散るように光を失って落ちてゆく。
流麗なあわいの火の粉の舞と、麓の石炭の山の輝きがふわっと強まったかと思えば、吸い込まれるようにして落ち着いた色に変わってゆく。
ぼんやりと瞼を開いたマクワの目に映る、温かいひかりだった。いつの間にか座ったままうたた寝をしていて、そうして目を覚ました。暗闇の中のキャンプのテントも、光に照らされて鮮やかなブルーを示していた。
片手に持ったままの、さっき相棒に持ってもらったモーモーミルクのマグカップはすでに人肌の方が温度がある。
マクワはそれを一気に飲み干して、自分の折りたたみ椅子に付いていたテーブルにのせた。それからまだぐうぐうと眠ったままの相棒に寄せて、座ったまま椅子を抱えると、頬を温める熱はさらに強まった。
ぱ、ぱぱ、ぱちん。ぱちん。
新鮮な酸素を食べた炎が、喜びの声をあげて火の粉を舞い上げる。すぐに真っ白の灰になり、夜空の中へと滲んでゆく。
優しく猛々しいバディのいのちが今マクワの隣にあって、絶えず煌めき続けている証左だった。
どこまでも、どこまでも飛んで行けるといい。なるべく遠くの空の下まで。
いわの輝きはひとの心も照らし出すことを、誰よりも知っていた。
けれど。
ぱちん、ぱちん、ぱちん。
どうかこの灯火が、ずっと隣にあり続けますように。ぼくが磨く、素晴らしい輝きが、たくさんの人に届けられるように。
マクワはふう、と大きく息を吹き、火の粉が揺れ踊る姿を目に焼き付けて、再び目を閉じるのだった。





4/30/2023, 9:06:05 AM