『雨に佇む』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
Episode.9 雨に佇む
カフェから出ると急に雨が降り始めた。
ついてないなあ。
そう言って、僕は踏み出した。
傘もささず、カッパも着ないで。
全身が一瞬にして水に包まれた。
冷たい、冷たくてしょうがない。
でもたまにはこういうのも悪くない気がする。
感情のまま動いて、雨に濡れて。
最期の目的地に辿り着くまでの間、色々な事を考えた。
今までの楽しかったこと、嫌なこと全部。
これからどうしたいか、どうしたかったのか。
考えるのも辞めてしまいたいくらい、面倒だったこと。
それももう、今日で終わりなんだ。
目的地に付いた。
そこは高く脆い崖の上で、海が一望できる。
どんより重たい曇り空に、溢れて止まない雨。
これならきっと、僕をたくさん包み込んでくれる。
雨に佇む僕を、きっと誰かは見たくなかったはず。
でも誰か1人でも望んで、美しいと思っているなら。
僕は、ふわりと宙を舞った。
これが、僕の"芸術"だ。
雨に佇む
百合注意
雨に佇む私は幽霊。
普段は空気中の水蒸気でその場に留まっているようなもの。
でも流石に雨とくれば、空気中の水蒸気の濃度も増し、あたりの水気も増すので私の存在感も強くなる。
やがて雨が長引けば長引くほど水でできた私の体は実体を持ち、他の人間と差程変わらない所まで存在感が上がった。
ただ1つ、雨の中傘のひとつもささずに佇んでいても濡れることは無いというところを除けば、人間と見間違えるだろう。
ふと、とあることを思った。
何故私は、雨の日だけ存在感が強くなるような特殊な幽霊になったのだろうか。
1人で考えていると、こちらに向かって足音が近づいてきたのでふっと顔を上げる。
そこに居たのはどこかで見覚えがある女の子だった。
彼女は私の前にしゃがみ込み、何かを置くとまた立ち上がる。
その立ち上がった瞬間、私はその子と目が合った。
彼女と目が会った瞬間弾かれたように蘇るのは過去の記憶。
それは、私が彼女に好きと伝えようとした日。この日もちょうど雨だった。
私が彼女に好きと伝えた瞬間、私の体はふっと軽くなり、それでいて重くなったような気もした。
この世界はちょっぴり他のところよりも特殊で、この世界では同性同士での恋愛はタブー。
同性愛が発覚した瞬時に、この世界の創造者樣である神樣が、禁止事項を破った者に対し、永遠の制裁を与える。
それは、好きだと言ったその日の天候の精霊となることだった。精霊になったものは、その天気の時にだけちゃんとした形を保って現れることができるが、その他の天候の時は空気も同然だ。
そうだ、私は今目の前にいる彼女に雨の日に好きと伝えたから、雨の精霊になったのだ。
とはいえいくら実体を持って現れるとは言っても精霊は精霊、人間に見えることは無い。
人間が見ることが出来るのは、精霊がひとつ上の存在になった時に授けられる【聖霊】という称号のようなものを持っているものだけなのだ。
目の前にいても触れることすら出来ない。そんな地獄だ
だから私は、雨に佇む。
雨に佇む
雨の中、佇む私の車。
車は私の帰りをただひたすら待つ。
どれだけ雨が激しかろうと、強風が吹こうと、私を待つ。
それに関して車は文句を言わない。
ドアを開け、車のシートに座る。シートが私を包む。
エンジンをかける。心なしかいつも嬉しそうだ。
アクセルを踏み家に帰る。
今日は、遠回りして帰ろう。
色んな景色を君に見せてあげたい。
今度の休みは、どこへ行こう?
いつか日本の端まで君と行ってみたい。
色んな音楽をかけて、色んな車とすれ違い、いろんな土地の空の下、君と走り回りたい。
時にはヒヤッとすることもあるだろう。クラクションを鳴らされたり、君が故障して動かなくなって私を困らせることもあるだろう。
でも、君となら私はどこへだって行ける。
そろそろ洗車をしてあげよう。
僕にとって車は道具ではない。照れくさいが親友だ。
雨が降りました。
奇跡、幸運の雨です。
勢いにびっくりして佇んでしまいました。
チャンスが流れていってしまいました。
巡りめぐってまた私の元に来てくれることを願います。
今度は傘をひっくり返してでも掴みます。
チャンスを。
すごい雨だなあ、だなんて思っていたときだった。いつ止むのかなあとか早く止んでほしいなとか、そんなことを思い描きながら、ぼんやり雨の灰色の空を見上げたとき。
街灯の上に、鳥がとまっていた。
じっとうつむいて、その姿はくろくくろく、濡れそぼってほそくほそくなっていった。
そんなところにいたら危ないよ。声をかけても、雨音で聞こえるわけも、ひとの言葉を解するわけもない。
そんなんじゃ飛べないでしょ。なんて、傘の下からのうのうと、声をかけても、聞こえてもわかっても、鳥は動かないのだとなんとなく察せられた。
そういうときだったのだろう。自分がそういうときになってわかる。うるせえよと。
「雨に佇む」
【雨に佇む】
少しぐらい立ち止まってもいい
走り続けてきたんだから
ゆっくりと周囲を見渡してみよう
ずっと前だけしか見てなかったから
ずっとあなたを見守っていたよ
だから少しだけでいい
この雨があがるまで
少しだけ足を止めてみて
そんな時間も悪くないよ
俺は間違っていたらしい。
大雨の中を傘もささずに歩き回った挙げ句、静かに佇んだまま泣く姿はとても弱々しい。
あんなに悪口や嫌がらせを受けても笑っていて、平気なふりをするでもなく興味関心なんてないといわんばかりの態度で普段通りに接することをやめなかった。なのに、なぜ彼女は泣いているんだ。
彼女は決して善人ではない。真面目な人間を演じることで善人にみえるようにしていたのだ。それだけで敵も味方もいないつまらない人間であろうとする。ただその目にはギラギラと静かに煮えたぎる感情が見え隠れしていて、とても面白い。
いつからかその姿を目で追うようになった。堂々と善人の皮を被る強かさに惹かれた。
興冷めだ。がっかりした。
急速に萎んでいく恋心に吐き気がする。せっかく気にかけてやったのに期待はずれもいい加減にしてほしい。
俺はいつだって味方でいてやったのに、礼もなければ挨拶すらまともにしてこないのだ。元からそういうやつだったっけか。どうでもいい。ああいうのはタイプじゃないし、むしろ大嫌いな部類だ。
「メンヘラとかむり」
手に持っていたペンケースを校庭にいる女にむかって投げつけた。肩にあたって地面に落ちて泥だらけになったものを拾い上げた女が俺を睨みあげてくる。
校舎の2階にいる俺と泥だらけの校庭に佇む女。とうていつり合うはずもない存在を見下ろして嗤った。そうしたら人が集まってきたからみんなで嗤った。
なんて無駄な時間だったんだろう。俺にふさわしい女なら他にいくらでもいる。
それからひと月後、あの女は死んだ。
【題:雨に佇む】
台風が上空に居る中、1人家を出ていった君を僕は
どんな感情で待つのが正解だろうか。
浮気を疑われたとか、浮気をされたとか、お金にだらしないとか、そんな事が理由で喧嘩をしたんじゃない。
ただ、いつもの、普段から喋ってる僕の口癖が、気に食わなかったんだろう。
「いいよ。」
君が良いならそれでいいよ。
君が好きだと言うのなら、それがいいよ。
お米じゃなくて、たまには魚でいいよ。
僕が調理するから、君は座ってていいよ。
そう言うと彼女はいつも、
「私がやりたいからいいの。」と言った。
だがしかし、ふとした僕の口癖が、遂に彼女を傷つけたらしい。
「君が嫌なら、もういいよ。」
彼女の顔から感情が消え、表情が消えた。
諦めたような、酷く傷ついたような顔はせずに、ただ、無感情だった。
そこからの展開はとても早くて、台風だと言うのに傘なんか持たず、よりによってサンダルで駆け出して行った。
どうせ君は、いつものコンビニで迎えを雨の中佇みながら待っているのだろうに。
「ごめんね。僕が、悪かったよ。」
「私貴方に折れて欲しいわけじゃないの。けど、 」
「けど、?」
「貴方と対等に在りたかった。」
少し拍子抜けをしてしまった。僕は先程の言葉で彼女が傷ついてるものだと感じていたからだ。
「さっきの、嫌ならもういいよ、に怒ってるわけじゃないの、?」
すると今度は彼女が鳩が豆鉄砲を食らったような顔を一瞬して笑いだしたのだ。ひとしきり笑った後ようやく目が合って、彼女は微笑んだ。
「そうじゃないの、私貴方の事部下だとか下僕だとか、そんなふうに周りから見えてそうで嫌だったのよ。貴方の一つ一つの行動にはちゃんと愛があったし私もそれを理解してた。 けどね、知らない人からすればそれは恋人と言うより主人と召使いのような関係なのよ。 それがどうしても、嫌なの。今でも。」
君の心境を聞けた時、僕はどれだけ嬉しかったか、君に尽くしてばかりは負担をかける事も、新しく覚えておこう。
「じゃあこれからは、一緒にやろうって誘うよ。」
すると彼女は雨を晴らせるかのような笑顔で笑った。
「うん。絶対ね、約束だよ。」
仲直りをして、彼女の為にちょうど切らしていた絆創膏と傘を買って、君の靴擦れを帰るまでにどうにかしようと思うよ。
やっぱりサンダルは片付けておくべきだったね。
そして僕らは、雨の中ひとつの傘を買って帰路についた。
私は雨が嫌いです。
屋根や地面に落ちた時の音が私にとっては耳障りだから。
でも、雨上がりは大好きです。
雨上がりの草木の匂いや、空の色が明るくなる瞬間は私にとっては美しく感じます。
だから、雨が降ったら少し立ち止まれる場所を探して、雨が上がるのを待つんです。
晴れになる瞬間を待つ時間は、どんな日でも楽しいと思うから。
#雨に佇む
それは人が作った石と言われている
誰もが人間らしい生活のできない時代に生まれても
立って、生きて、眠るのはその石の上とされている
ずさんに取り決められた持ち回りのように
いつかは海底にあった死の息吹さえ
やがて漠とした星々の間に逃れ去っていく
石は飲み込まれ、咀嚼され、吐き出される無限の輪を巡り
硬い硬い核への信仰を拾い集めている
これは強力な嘘なのだ
引力から成り立っている存在の脆さが
石の心地好い影を愛したのだ
含有された海が泣くとき
ぼくはその優しさのために泣く
閉じ込められたものが
閉じ込めたものを赦すように
永く濡れそぼつ星でぼくは
足元をみつめている
#雨に佇む
傘をさせば意味がない
雨が降ったら、立ち止まってしまう。
すると、あの話を思い出す。
――
「雨の日だけね、泣いてもいいんだよ」
彼はそう言った。
「何でなの」と聞いてみる。
「だって、雨が涙を隠してくれるでしょう?」
ふーん。
なんで隠さなくっちゃいけないのか分からなかった。
ザーッと雨の音が聞こえる。
そういえば、傘をさしてたはずなのに彼の顔にはツーっと水が流れていたなぁ。
いつの間にか私も彼と同じように水が流れていた。
雨に佇む
突然雨が降ってきた
雨合羽なんて持ってきていない私は
コンビニで雨宿りすることにした
雨は寂しい気持ちになるけど
人といればなんてこと無い
早く帰りたいなあ
なんて思いながら厚い雲を見た
雨の中佇んでいたらビチャビチャになった。
✾
学校が終わった時に急に雨が降り始めた。
折畳み傘を常備していた僕はリュックから傘を取り出し一人で帰っていた。
雨の音を聞きながら時々すれ違う近所の人に挨拶をしていた。
暫く歩いていると誰からか電話が鳴った。
確認するとみっつ下の妹からだった。
いつも通り、なにかの頼み事だろうと思い切ろうとしたが何故か今日はそんな気がしなかった。
頭の中で嫌な予感が走り、直ぐ様電話に出た。
「どうした?」
電話の向こうで妹が泣く声が微かに聞こえた。
「落ち着いて?何があったか話して」
「おか...さんが、事故....にあって...意識不明の重体で」
その瞬間手から傘が滑り落ちた。
「そう...か、直ぐ行く待ってろ」
「うん」
妹との会話が終わると電話を切った。
其の場にしゃがみこんだ。
雨とともに自分の頬からは涙が溢れ出ていた。
抑えようと何度も、何度も、自分の涙を拭き続けた。
けれど、涙が止まることはなかった。
# 106
雨に佇む
雨に佇み、暫しの憩い。
他人の家の軒先き借りて雨宿り。
今どきは無いかな。
暫しの雨宿り。暫しの憩い。
雨ではなく、お月さまのお話し。
今宵は朧月夜。お月さまに癒されました。
持って行き場のないモヤモヤを、月夜の散歩が、気分を変えてくれました。
お月さまに感謝!
#67【雨に佇む】
外に出られない。
突然のどしゃ降りに
思わず目を見開く。
駐車した場所が遠い。
楽器が濡れてしまう。
お天気アプリで予報を確認するが
しばらく止みそうにない。
詰んだ。
完全に詰んだ。
どうにもならない空を見上げて
スーッと息を吸う。
よし。取り敢えず待機!
〔あれ、傘忘れたの?〕
私がそう声を掛けたのは、同じクラスの女子生徒だ。
彼女は、学年でも評判の良い優等生で、優しい性格の持ち主である。私も、休み時間を利用して、よく勉強を教えてもらっている。
毎年皆勤賞を取っていて、真面目で忘れ物をしているのも今迄見た事が無い彼女が、強い雨が降る校庭を玄関から
じっと見つめて、困った顔をしていたから、そんな言葉を掛けてみた。
「そうなの。今日は、天気予報で晴れって言っていたものだから、持ってきていないの。それに、予備の傘も持っていなくて。雨が止む迄待とうかと思っていたのだけれど中々止みそうになくて。」
彼女は、落ち込んだ様子でそう言った。
確かに、天気予報は晴れの印が付いていた。
だが、今日は夕立ちの可能性があるからとも言っていた。
彼女は、夕立ちの可能性を知らなかったのだろう。
だから傘を忘れた。と、言うより持ってこなかった。
の方が正しいか。私は一人で納得していた。
〔あのさ、もし良かったら、なんだけと、私の傘使って。
私の家近いから、傘が無くても多分どうにかなるし。〕
私は持っていた傘を、彼女に差し出しながら言った。
彼女は、
「でも、近くても濡れちゃうでしょう?
きっと、もう少ししたら止むから、私は大丈夫よ。」
と、眉を下げて戸惑った顔をしながらそう言った。
私は、
〔でも、もう少しって言っても何時止むかもわからないし、もしかしたら夜ぐらい迄ずっと降るかも知れないよ?
そうしたら、委員会の書類もあるんでしょ?〕
〔宿題も有るんだしさ。これで寝坊とかしたりして、
皆勤賞逃したら勿体ないって言うか、私の罪悪感が凄い。
私、宿題が有るだけだし、もう既に皆勤賞取れないし。〕
つらつらと、彼女に色々と傘を渡す理由を述べる。
それでも、まだ迷っている彼女に、
〔それにさ、此処まで言ってお断り喰らった方が、
すげーダサい。めっちゃカッコつけてるもん。
だからって言うのも変だけど、
受け取って欲しいかな。お願い。〕
そう両手を合わせてお願いすると、
彼女は参った様に、
「うん、分かった。ありがとう。」
そう言って、笑ってくれた。
私は彼女に傘を差し出して、受け取って貰った。
彼女は申し訳なさそうに少し笑みを浮かべながら、
「ありがとう。また明日ね。」
と言って、手を振って帰って行く。
その時に、私は凄く場違いな事を考えてしまった。
彼女の、困った笑顔が、とても可愛い。
雨の中に去って行く彼女の、後姿が、とても美しい。
私は、強い雨の降る校庭に、彼女の事を考えて
十数秒佇んでしまった。
次の日、体調を崩さなかったのは奇跡だと思う。
雨は好きだ
子供の頃は雨が降ると
長靴を履いて外に飛び出し
大きな水たまりに足を突っ込んだ
今は
雨が降っても
小さい頃のように出来ない
いつから出来なくなったのだろう
そんな事を思って
雨の中を佇んでいた
でも雨は好きだ
雨に佇む
真っ直ぐに。いつも真っ直ぐに伸びていた背筋は今、萎びた草のように曲がり。俯いた顔はきっと、普段の凛とした貴方の面影もないくらいに悲壮を映しているのでしょう。
そうして幽鬼のような足取りで私の前までやって来る。
3年前からずっと変わらない。否、段々と貴方は此方側に近付いている。まるでそれが唯一の希望のように。
嗚呼。もし、まだ私に身体が残っていたならば。もし、貴方と言葉を交わせたのならば。貴方を止めることが出来たのかもしれない。別の希望を示せたのかもしれない。
けれどもそれは叶わない。
死者の私に許されているのは、ただひとつ。
傘もささずやって来る貴方を迎え、悲嘆に暮れるその姿を見ていること。それだけ。
雨に佇む
多分、中2の頃だったと思う…下校中に、思いがけない夕立にあった。慌てて近くのバス停の屋根に逃げ込んだ…すると、既に先客が居て、一つ下の後輩の女子だった…何となく顔を知っている程度で、お互い小さく頭を下げて、何となく空を見上げていた…何か話し掛けたほうがいいかな、と思いつつ、特に話題もない中、何とも云えない空気の儘、雨宿りをして…
雨に佇む
雨は、記憶を取り戻してくれるのだ。
人は雨に佇みながら涙を流すものであって
簡単に泣くものではなく
それは、亡くなるまでに取っておきたい
いつかその日が来るのであれば
人は、きっと亡くなった後も幸せに泣くのであろう。