木蟹村

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 すごい雨だなあ、だなんて思っていたときだった。いつ止むのかなあとか早く止んでほしいなとか、そんなことを思い描きながら、ぼんやり雨の灰色の空を見上げたとき。
 街灯の上に、鳥がとまっていた。
 じっとうつむいて、その姿はくろくくろく、濡れそぼってほそくほそくなっていった。
 そんなところにいたら危ないよ。声をかけても、雨音で聞こえるわけも、ひとの言葉を解するわけもない。
 そんなんじゃ飛べないでしょ。なんて、傘の下からのうのうと、声をかけても、聞こえてもわかっても、鳥は動かないのだとなんとなく察せられた。
 そういうときだったのだろう。自分がそういうときになってわかる。うるせえよと。


「雨に佇む」

8/27/2023, 3:00:56 PM