ナナシ

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雨に佇む

 真っ直ぐに。いつも真っ直ぐに伸びていた背筋は今、萎びた草のように曲がり。俯いた顔はきっと、普段の凛とした貴方の面影もないくらいに悲壮を映しているのでしょう。
 そうして幽鬼のような足取りで私の前までやって来る。
 3年前からずっと変わらない。否、段々と貴方は此方側に近付いている。まるでそれが唯一の希望のように。
 嗚呼。もし、まだ私に身体が残っていたならば。もし、貴方と言葉を交わせたのならば。貴方を止めることが出来たのかもしれない。別の希望を示せたのかもしれない。
 けれどもそれは叶わない。
 死者の私に許されているのは、ただひとつ。
 傘もささずやって来る貴方を迎え、悲嘆に暮れるその姿を見ていること。それだけ。

8/27/2023, 2:16:13 PM