あん

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台風が上空に居る中、1人家を出ていった君を僕は
どんな感情で待つのが正解だろうか。
浮気を疑われたとか、浮気をされたとか、お金にだらしないとか、そんな事が理由で喧嘩をしたんじゃない。
ただ、いつもの、普段から喋ってる僕の口癖が、気に食わなかったんだろう。

「いいよ。」
君が良いならそれでいいよ。
君が好きだと言うのなら、それがいいよ。
お米じゃなくて、たまには魚でいいよ。
僕が調理するから、君は座ってていいよ。

そう言うと彼女はいつも、
「私がやりたいからいいの。」と言った。
だがしかし、ふとした僕の口癖が、遂に彼女を傷つけたらしい。

「君が嫌なら、もういいよ。」

彼女の顔から感情が消え、表情が消えた。
諦めたような、酷く傷ついたような顔はせずに、ただ、無感情だった。
そこからの展開はとても早くて、台風だと言うのに傘なんか持たず、よりによってサンダルで駆け出して行った。
どうせ君は、いつものコンビニで迎えを雨の中佇みながら待っているのだろうに。

「ごめんね。僕が、悪かったよ。」
「私貴方に折れて欲しいわけじゃないの。けど、 」
「けど、?」
「貴方と対等に在りたかった。」
少し拍子抜けをしてしまった。僕は先程の言葉で彼女が傷ついてるものだと感じていたからだ。
「さっきの、嫌ならもういいよ、に怒ってるわけじゃないの、?」
すると今度は彼女が鳩が豆鉄砲を食らったような顔を一瞬して笑いだしたのだ。ひとしきり笑った後ようやく目が合って、彼女は微笑んだ。
「そうじゃないの、私貴方の事部下だとか下僕だとか、そんなふうに周りから見えてそうで嫌だったのよ。貴方の一つ一つの行動にはちゃんと愛があったし私もそれを理解してた。 けどね、知らない人からすればそれは恋人と言うより主人と召使いのような関係なのよ。 それがどうしても、嫌なの。今でも。」
君の心境を聞けた時、僕はどれだけ嬉しかったか、君に尽くしてばかりは負担をかける事も、新しく覚えておこう。
「じゃあこれからは、一緒にやろうって誘うよ。」
すると彼女は雨を晴らせるかのような笑顔で笑った。
「うん。絶対ね、約束だよ。」
仲直りをして、彼女の為にちょうど切らしていた絆創膏と傘を買って、君の靴擦れを帰るまでにどうにかしようと思うよ。
やっぱりサンダルは片付けておくべきだったね。


そして僕らは、雨の中ひとつの傘を買って帰路についた。

8/27/2023, 2:44:27 PM