「お前、将来どーすんの?」
高校三年生、周りが模試やら夏期講習やらで自分を追い込み始めた時期。
全く先生の言葉が響かなかった俺は今日も実家就職の幼馴染と海を眺めていた。
「いや…特になんも考えてねぇわ…」
「いやぁ〜ちゃーんと考えろよぉ?」
「お前は行きたい道選べるんだからさ」
その言葉が、怠惰な自分に随分と突き刺さったのだ。
コイツは実家が地元じゃ有名な企業を代々受け継いできた様な家系で、4人中3人が女の中、1人だけ男として生まれた奴。
性別が決まった瞬間から、コイツに権利はなかった。
だからこそ、俺はその言葉を重く受け止めたのだ。
「でも俺、やりてぇ事なんかねぇよ…」
少しの反発も含めて言葉にしてみた。
まるで、子供のように。
「演劇は…?」
「はっ、…お、お前、それ、本気で言ってんのか、?」
「俺はいつだって本気だっつーの!!!」
演劇。
それは俺が習い事で始めたミュージカルで得る事が出来たほんの少しの能力。
選ばれるだけの世界で、俺は選ばれる側の人間になる自信がなかった。
だからずっと、見ないふりをして来たのだ。
「上手くいかなくたっていいよ。歩ける道なら歩こうぜ、」
水面張力のようにずっと誰の言葉も響いてこなかった自分の心に、コイツの言葉だけが入り込んできた。
まるで背中を押してくれているかのように。
「…親に、掛け合ってみる」
「…!おうっ!」
活躍する事が出来たとして、その時はコイツを同じ世界に引き込んでやるのもありなのでは無いか、そんな事を脳裏に浮かべながら俺はヤツに水をかけた。
寂しさに支配されたのはいつ頃だったか。
俺達なら何処へだって行けると本気で信じてた時期はいつ頃だったか。
意外といや、うん、まじで信じてたわ
今になってようやくクソだせぇって気づけたけど、
そのクソダサさも結構気に入ってたんだろーな
写真出てきたんだよ バカそーな写真www
俺がチャリ乗っててお前もチャリ乗ってて俺が自撮りしてる写真
普通にアホ けど絶妙なバランスで写真として残ってんのが1番おもろい
「あ、、、あ?」
ンだこれ あ? あー!!!!!?あれかァ、
お前と好きなやつ被った時のバレンタイン
俺とお前別に面は悪くねぇし第三者目線で見てもイケメンって言われてたしまぁモテてたし可能性あんじゃねって思ってたんだよな確か うん
そしたらどっちにも渡さずに学園長に渡すっていう事をしたんだよな俺らのマドンナは ちょっとって言うか結構抜けてて そんなとこも好きだった
んで、お前がどっか行った
いつの間にか 知らんうちに
心の距離がいつの間にか空いてたのかそれすら思い出せねぇし 俺が思い出せるのはせいぜい2人で馬鹿やってた時の記憶だけ
じゃあお前さ、今なんか思い出してみろよ〜って言われたら何思い出すんだろーな
走馬灯的な? お前、なんか思い入れあるようなやつあんの?
ちょー無さそうウケるわ
「はーーー、、、、馬鹿みてぇ。」
ただ雪を待つ
ひたすらに、冬を待つ
ただ花を待つ
ひたすらに、春を待つ
ただ紅を待つ
ひたすらに、秋を待つ
ただ君を待つ
ただ、ただひたすらに、君を待つ
いつか来てくれるだろうと、今日も信じ、明日も信じ
きっと、4年後さえも信じている
いつか帰ってくるだろうと、昨日も信じ一昨日も信じ
確か、4年前も信じていた
今年もまた、風鈴がなる
ただ君を待つ ただ夏を待つ
また、静かな空を凪ぐ 、 盆が来る。
クリスマスらしく、イルミネーションが道を照らしていた。
綺麗だねって言えたはずの相手は別の相手といて。
私は1人、ただカフェでぼーっとするしか無かった。
どのくらいそうしていたのか、思い出せなくなったくらいに。
「あの、大丈夫ですか。」
バイトの子かな?声をかけて来てくれて。
「あ、はい、大丈夫です。すみません長居しちゃって笑 そろそろ出ます。」
「あ、いや、そーゆー訳じゃないです。もっと、ゆっくりしていって下さい。」
自分より5つは下であろう行きつけの喫茶店で働くイケメンな男の子に気を使われるだなんて、大人気ないだろうか。
「あ、、、りがとう、ございます。」
返す言葉が、それくらいしか見つからなくて、もう呆然とするしかなかった。
「あの、いつもの人は今日、居ないんすね。」
ああ、元 カレの事か。
「あーー、昨日の夜に、ちょーど別れて笑」
まるで愚痴のような話になってしまいそうだったが、ようやく元カレが以下にクソだったのかに気づけたのだから、プラスとして考えよう。
「じゃあ、狙ってもいいですか。」
「え。」
狙う?スナイパー的な?
「彼氏候補に。俺の事入れてください。」
「え?」
あまりにも急な事だったけど、クリスマスの前日に振られることがあるくらいだから、きっとこんなこともあるんだろう。
サンタさん。
今年の私のクリスマスプレゼントはイケメンな年下彼氏なんですか?