鏡の中の自分』の作文集

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鏡の中の自分』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

11/4/2023, 9:28:22 AM

鏡に映る自分が嫌いだった。

なんだか醜くて、汚くて。
鏡を見るのが嫌だった。

鏡を見れないせいで、オシャレなんてできない。
洋服も毎日似たような物を選ぶだけだった。

そんな風な生活をしているから、通う大学では気味悪がられている。
でもいい、“そう思われている”と分かっていれば、何ともない。思っても無いことを言われるから、ショックを受けるんだ。

それに、世の中見た目なのだから、見た目に気を遣わない私がどうこう言われるのは仕方がないのだろう。

そうやって、周りに期待せずに過ごしてきたある日。


「こんにちは。」

学食でお昼を食べていた時、急に話しかけられた。

声の方を向くと、ふわふわに巻かれた茶色い髪。
可愛く着こなされた服。綺麗に整えられた顔。

誰が見ても美人だと言うだろう、そんな人が目の前に立っている。

『えっと……。』

「ねぇ、いきなりなんだけどさ。」

人に面と向かって声をかけられるのなんて久しぶりだ。
いつも影でコソコソと言われてきたから慣れていない。

どんなことを言われるのだろう、と心臓がバクバク鳴り続ける。

目をギュッと瞑り、これから言われるであろう罵詈雑言に備えた。


「今日この後、私の家に来ない?」


『……へ。』

思ったような悪口が降ってこず、素っ頓狂な声が出る。

家?私が?この人の家に?……何故??

頭の中は疑問で埋め尽くされていて、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたと思う。

「あ、ごめんね。私の名前は真帆(まほ)。住吉(すみよし)真帆。あなたにお願いがあるんだ。」

いや、名前とかはどうでも良くて、あ、どうでも良くはないんだが……いやそうじゃなくて……と、頭の中がぐるぐるする。

頭をぐるぐると悩ませていると、彼女は再び口を開いた。

「あなたを着飾らせて欲しいの!!」

『……は、い?』

目的を聞いてもなお、頭の中の疑問は消えてくれなかった。


『…………。』

結局言われるがままついてきてしまい、彼女の部屋へと案内された。

中はとてもシンプルだったが、メイク道具や掛けてある洋服、全身鏡といかにもオシャレが好きそうな子の部屋だった。

そんな彼女は、目の前で服を選んでいる。

「んー。やっぱり綺麗めがいいのかな……いや、それとも可愛い系か……」

洋服とにらめっこをしながら、ブツブツとなにか唱えている。呪文か?

「ねぇ。」

急に彼女が振り返り、話しかけてくる。
唐突のことで上手く反応できず、ワタワタと焦りながら返事をする。

『は、はい、』

「普段ワンピースしか着ないの?」

『服は、これしか着ない……から、』

「ふーん。」

彼女はそう言うと、再び洋服の方に視線を戻した。

一通り洋服を見たあと、うん、と頷いてこちらにやってきた。

「よし、方向性は決まった。とりあえずこれ着て。」

そうして出されたのは、普段履かないパンツスタイルの洋服。

『え、あ、あの……。』

「じゃあ部屋出てるから、終わったら声掛けて。」

すると彼女はスタスタと部屋を出ていってしまった。

ここまで来たら、さすがに着ない訳には行かず、もそもそと着替え始めた。


『着替えました……』

ドアに向かって声をかけると、間髪入れずにガチャリと開いた。

彼女は上から下までジーッと睨む。
睨まれているせいか、似合っていないんじゃないかと思ってしまい、何故か罪悪感まで湧いてくる。

『あ、あの…、』

「うん!やっぱりすっごい似合ってる!!」

さっきの睨んでいた顔とは打って変わって、にっこりと笑顔になった。

先程とのテンションの差についていけない。

「やっぱり似合うと思ったんだよねパンツスタイル!!いやぁ……私の目に狂いはなかった……」

ウンウンと頷きながら、ペラペラと語っている。
どうやら似合っていたようだ。

ほっと安心しているのもつかの間、気づけば目の前まで彼女の顔が迫っていた。

『えっ!?わっ、』

「あなた名前は?」

『え、あ、二宮 栞(にのみや しおり)、です。』

「しおりはどうしてこういう服着ないの??」

どうして。
単純に似合わないと思っているから、だけども……。
そう言ったら卑屈だと思われるだろうか……。

言葉を選んでいると、彼女はハッとして、

「あっもしかして色々余裕ないとか!?あ、えと、ごめん、あの……」

さっきまで強気だった彼女が急に慌てだす。

『へ、あ、違、そういう訳じゃなくて、あの。』

慌てる彼女の手を思わず掴んでしまう。
理由を問うてくる彼女の瞳に吸い込まれ、ポツポツと自分の言葉を紡ぎ始めた。

『その、私、容姿に自信が無いから。こんな素敵な服を着ても、似合わないんじゃないか、って。』

きっかけは、本当に些細なことだったと思う。
もう覚えていない。

でも、“私は醜い” そう思って生きてきたから。

だから綺麗な服を着るのは、私なんかじゃなくてもっと綺麗な人。

そう思ったら、着飾ろうとすることも自然となくなっていた。

考えていくとどんどん暗い気持ちになり、視線が徐々に下がっていく。
気まずくなってどうしようかと思っていると、今度口を開いたのは彼女だった。

「それは、キチンとおしゃれしてないからよ。」

ほっぺを掴まれ、下に向いた顔を上へ向かせられる。
自然と彼女と目が合う。

彼女の瞳はキラキラと輝いていた。

「一回でも試してみなきゃ。」

彼女は、カバンくらいの大きさのポーチから、メイク道具を取り出す。

「私が、しおりを可愛くしてあげる!!」

そう宣言してから早かった。
瞬く間に、化粧を済ませヘアアレンジもテキパキと進めていく。

目の前に胸の部分まで見える鏡があり、ふと自分の姿を見ると、今まででは見た事ないくらい綺麗な自分がいた。

『え、これ、私?』

「ふふ、もっと綺麗になっていくからねぇ。」

そう言いながらヘアアイロンを髪に当てていく。

そんな彼女、真帆の顔はとても楽しそうに見えた。


「はい!!完成!!」

全身鏡で改めて自分の姿を見る。

そこには、普段大学で見かけるような、オシャレな自分の姿。ほっぺや頭をチョンっと触らないと自分だと気づかない程、見違えていた。

『す、すごい……』

「絶対しおりは化けると思ったの!!……やっぱり素敵!!」

真帆は肩にポンと、両手を置いて一緒に鏡の私を見つめる。

「どう?これでも自分の容姿に自信ない?しおりは綺麗なんだよ。少し魔法をかけてあげれば、こんなに輝くんだから。」

『魔法……』

再び、鏡の中の自分を見る。
そもそも、こうして自分の姿を見れるようになっただけでも進歩だ。
醜いと思っていたあの顔から、ここまで変わったのだ。

ある意味魔法なのかもしれない。

『真帆は……魔法使いなんだね。』

「ふふ、そうだね……。さて、行きますか!!」

『え?どこに?』

「洋服買いに行こ!!それ以外にも絶対しおりに似合うやつあるから!!」

真帆に急かされ、部屋を出ていこうとした時、ふと鏡が見える。

そこに映る私は、とても幸せそうだった。


『……魔法、かぁ。』

その日から、私は鏡の自分を醜く見えなくなった。

#鏡の中の自分

11/4/2023, 9:17:21 AM

『鏡の中の自分』

 私は疲れていた。
 1日の中で数時間の間、動けなくなる時がある。
 意味もなく叫び出したかった。
 「たすけて」と言いたかった。言っているつもりだった。
 でも、周りは気づいてくれなくて、
 どうして気づいてくれないのかって、泣いて、鏡を見て、納得した。
 
 鏡に映った私は、思っていた以上に普通だった。
 顔色が悪いとか、疲れてそうとか、そういうものを、
 目の前の自分からは感じられなかった。
 元気だとは言えないけれど、
 ものすごく疲れているとも言えなかった。
 普通の、その辺にいる高校生と変わらなかった。

11/4/2023, 9:05:53 AM

鏡の中の自分


こんな顔だったっけ? 
もう少しマシだったような気がする、と鏡を覗き込んで軽くショックを受けた。
このところ自分の顔さえあまり見ていなかったみたいだ。化粧をしていても必要なパーツを義務的に目に映しているだけ。視力がさらに落ちて、しかもコンタクトを付けなくなったのが理由としては大きいのかもしれないけれど。
鏡の前に立つとき、前は精一杯よく見えるようにしていたのに、最近はそれさえしなくなっていたことに気づく。久しぶりに笑顔を作ろうとすると顔が強張っているような気がした。

顔も筋肉っていうもんねぇ……
人差し指と中指、そして薬指を揃えた指先で、頬を軽くマッサージしてみる。
自意識過剰気味の若い頃が良いわけではないけれど、今の無関心さはちょっと自分が可哀想かもね。
まだこの顔とつき合っていくんだから。
もう一度口角を上げてみると、鏡の中の自分はぎこちないけれど、さっきよりはずっと上手に笑えていた。



#77

11/4/2023, 9:02:56 AM

鏡の中の自分



「私の顔を1番見ているのは私自身なのです」



顔を洗って、髪を整えて、メイクをして、

徐々に私の容姿が変わっていく過程を見るのが少し楽しみ

今日は特に可愛いなぁと思う日もあれば

なんかイマイチだなぁと思う日もある


ノーマルカメラより鏡の私の方が可愛いく感じるけど

きっと周りから見たらそんなに差がないかもしれない。

というか、ほとんどの人が自分の顔しか見てないから

私の変化に気づかない

なぜなら、私も自分の顔にしか興味が無いからです。


例外として

「好きな顔」や「理想の顔」は興味ありありです。


私の顔を1番気にして、1番意識して見ているのは、

周りではなく私自身なのです。

11/4/2023, 8:48:45 AM

【鏡の中の自分】

 忙しい。手を止めたいがそんな暇は一秒たりともない。目がまわるとはこの事なんだろうと身をもって知る。こうなってしまうのは自身の要領の悪さが原因なのは分かってる、分かってはいるが。
「俺でいいから手伝ってくれないかなぁ」
 厨房の隅に置かれた小さな鏡に向かってぼやく。行き来するホール担当との衝突防止に置かれたそれには、覇気のない顔が映っている。
「……いや、頼りなさすぎるだろ」
 こんな奴に任せたくない。先程はこんな奴でも、と魔が差したが戦力にはならないだろう。
 よし、とエプロンの紐を締め直し、出来上がった料理をカウンターに乗せた。

「観光シーズンでお客さん増えるのは嬉しいですけど、店長の疲労やばいっすね」
「紅葉が終わるまでの辛抱ですよ先輩」

11/4/2023, 8:39:02 AM

お題 鏡の中の自分

寸分違わず自分を映し出す鏡。ところが最近、この鏡というモノが映し出すのは、自分ではないという事が分かったのだ。鏡は多次元を分かつ境界なのだ。映っているのは別次元の自分だと分かったのだ。分かたれた世界の自分は、こう自分に語りかけてきた。

「やぁ、そっちの自分。元気かい?」

突然声をかけられたが、不思議な気がしなかった。

「まぁまぁだ。そういうそっちの自分はどうなんだい?」
「まぁ、同じようなもんだな。鏡の外の世界はお互い知らないからな」

どうやら鏡に映らないところでの様子は、話せない決まりらしい。だからまぁまぁとしか言えない。時々まぁまぁ元気だという確認を鏡の前で交わし合う。
おそらくお互い、鏡の前に立てなくなるその日まで……

11/4/2023, 8:17:43 AM



あたし





自分

うち


さぁ、本当は、だーれだ。

♯鏡の中の自分

11/4/2023, 8:15:36 AM

鏡の中の自分は

ただのアやツリ人形

どの世界線も

到底辿り着くことの出来ない

自分たち


自由になりたい鏡の自分は


自分を呪い



"そトへデタ...."

11/4/2023, 7:54:44 AM

【鏡の中の自分】

鏡の中の自分が好きだ。写真に写る自分は鏡の中の自分にどこか劣って気持ち悪いし、誰かといるときや一人でいる自分も気持ち悪い。鏡の中の自分を見ていると自分のしたい表情になれる。私はいつも鏡の中の自分が本当の自分になってしまえばと思う。そうすれば、私は私のことをもっと好きになれるのに。
 そんなことを思いながら生きていると、自然に背中を丸めて、過ごしてしまう。だから私には友達も彼氏もいない、だからといって、秀でた才能があるわけでも趣味があるわけでもない。それだから仕事での休み時間や家での空いた時間はひたすらスマホに向かっている。いつも通り私は家でスマホを見ていると、ある動画が目に入った。それは「自分の顔が好きになりたくて整形した結果」という動画だった。最初は何気ない気持ちで見ていたが、動画が進むにつれて私はその動画から目が離せなかった。やがてその動画が終わると、私は「整形がしたい」という衝動にかられた。しかし整形というのは、ハードルが高いし世間からの理解もまだ乏しい。だけど整形したい。そんなことを考えているとさっきの動画が垂れ流されているのに気付いた。私はまだ有り余る時間を潰すために他の動画を見ようとスマホの画面を下にスワイプしようとした。そうすると私の目にはコメント欄が目に入った。整形への後押しが欲しい訳ではなく、みんながこの動画をどう思っているのか気になって、私はコメント欄を見た。コメント欄には私が求めた以上のものがあった。「整形した人は自分の顔を好きになれるし、周りもかわいい子見れて嬉しいから整形はもっと世間に広がるべきでしょ!!」,「私この動画で整形することを決めました!整形したことで毎日たのしいし、友達も増えた気がするから迷ってる子はしてみてほしいな〜♪」とかっていうコメントがあって、整形は全く悪くないんだと気づいた。
 だけどそのためにはお金が必要で、貯金は元々あったが、それでも足りないので副業を始めた。数ヶ月も経てば目標金額がたまった。私はすぐに美容整形外科に行った。担当の先生としっかり話し、整形は成功した。整形している間、余っていた有給を使い休んだ。上司に1度叱られたが、私には必要な時間だと言い張りなんとか休みをとった。人にここまで歯向かったのは人生で始めてだ。これも整形のおかげだと思い、胸に喜びがわいた。整形をしたあと私は前を向いて過ごせるようになり、職場で友達もできた。友達との写真や自撮りなど沢山写真を撮った。私はその写真たちを見るのが好きだった。そこには、私の好きな鏡の中の自分がいたのだから。しかし次第にその写真たちを見るのが嫌になった。そこに鏡の中の自分は存在しなくなり、鏡の中にしか居なくなってしまったからだ。私はまた、整形した。そうするとまた写真が好きになった。だが直ぐに嫌になってしまった。私はまた整形した。こんなことを繰り返していくうちに気付けば、友達もお金も家もなくなってしまっていた。私の手にはどこで拾ったか分からないブルーシートと一枚の鏡だけだった。

11/4/2023, 7:46:25 AM

あんまり鏡を凝視できない

もうひとりの自分が

本音を爆発させて止まらなくなりそうだから

溜まったフラストレーションが

彼女の口から吐かれるとき

わたしはどうするんだろう


思いっきり泣いたなら

慰めるだろう

この世の理不尽をなじったなら

安堵するに違いない


わたしにはできないこと

彼女が鏡の向こうにいる限り

わたしには心強い味方になる



◇鏡のなかの自分◇

11/4/2023, 7:43:55 AM

「鏡よ鏡。世界で一番美しいのは誰?」
「それは白雪姫です」
 鏡は答える。

 私はもう一度同じ質問をする。
「もう一度聞くわ。鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰?」
「それは、もちろん貴方様、白雪姫であります」
 私はその答えを聞き、私は笑うのを堪えられなかった。
 そう私が世界で一番美しいのだ。

 この鏡は正直だ。必ず世界一美しい女性が映る。
 稀に私以外に映ることがあるが、すぐに間違いを正すことにしている
 するとまた私が映るのだ。
 こんなに気分のいいことはない。

 かなりお金をかけることになったが、問題ない。
 私が世界で一番美しいことが重要なのだ。

 鏡を見る。
 やはり私は美しい。
 鏡の中の自分は、血と錯覚するほど真っ赤なドレスを身にまとい、邪悪な笑みを浮かべていた。

11/4/2023, 7:35:52 AM

「あなた、疲れてるよ」
そう目の前の人に言われた。
そんなことないと返すと、目の前の人は続けて言った。
「だってもう、幻聴も聞こえるじゃない」
目の前の自分は疲れた顔をしていた。

11/4/2023, 7:16:29 AM

「鏡の中の自分」

やあ、また会ったね。

パステルグリーンのカットソーを身に着けたその人は言う。
ずいぶん久しぶりじゃないか。元気にしてた?

俺は聞こえないふりをして作業を続ける。もう出会うことはないと思っていたのに最悪だ。

気分とは裏腹に手元は正確に枝の剪定作業を続けていく。
ぱちん、ばちん。
誘惑に負けてはいけない。見ろ、あんなにしかめつらでこっちを見ているじゃないか。こっちは仕事中なんだ。相手にするな、集中しろ。

つれないなあ。
あいつはため息をついて首を右にかたむける。
わずかに頬が緩んだ。ほら、そういうところなんだよ、
俺が嫌なのは!



「あら、あずきちゃん!ここにいたの?お兄さんのお仕事の邪魔しちゃダメよ」
ガラス張りの店舗から依頼主が現れた。
俺の足元の右下でウロウロしていたトイプードルのあずきちゃんはその声に顔をあげ嬉しそうに駆け寄る。

「大丈夫ですよ、いい子にしてましたよ」
俺は依頼主にそう声をかけた。

鏡のように磨き上げられたガラス窓には、笑いを押し殺そうとしてかえって不機嫌にみえる自分の顔がうつっていた。俺は目を背けて仕事を再開する。

仕事と犬は混同しない。それが俺のポリシーなんだ。
あずきちゃんの可愛さにニヤニヤする自分は見たくない。

11/4/2023, 7:00:52 AM

あなたはいつも鏡の中の私に話しかける。
笑いながら、怒りながら、ときには泣きながら。

幸せそうな話を、くだらない日常を。
両親の話を、友だちの話を、恋人の話を。

私はいつもその話を聞きながら共感し―――そして妬まずにいられなかった。

だって私はあなたの影法師。
あなたが鏡の前に立たなければ存在しない。

嬉しいも、悲しいも私は知らない。
それなのにあなたは恋人の愛しさを私に語る。

「鏡の向こうにはどんな世界があるんだろう?」
だからあなたがふと漏らした、鏡の中の【自分】への現実逃避が私を招いた。

『ソレナラカワッテミル…?』


鏡の中の自分を覗く。
そこにはいつもと変わらない私がいる。
いつもと同じ髪型で、いつもと同じ化粧をして、お気に入りの洋服とアクセサリーを身にまとう。

恋人との待ち合わせに合わせたアラームが鳴って、慌てて部屋を飛び出す直前に、もう一度鏡を見る。

そこにいるのはもちろん【私】。
けれど鏡の中の影法師は…もう私じゃないわ。



【鏡の中の自分】

11/4/2023, 6:51:19 AM

昔から、そこにいるのは僕なのにまるで違う人のような、そんな不思議な違和感を抱いていた。
うまく説明できないのだけれど、鏡に映った自分自身の姿を見ると妙だと感じる。見た目は当然僕、でも中身はまるで別人のような感覚。笑顔で立ってみても、向こうに映る僕の瞳は笑っていない。反対に真顔で映ろうものなら、向こうの僕は瞳の奥がギラギラと怪しく光っているふうに見える。
自分の心と正反対の顔をしている。だから僕であって僕じゃないような感じがした。

なに、ビビってんだよ。

鏡の向こうから、僕がそう言っている気がした。ビビる?僕が?一体誰に。
でも、そうやって言われている気がしたってことは、少なからず何かに怯えて生きているのだろうか。鏡の自分は見抜いているのか。映る自分に向かって手を伸ばした。相手も同じ動きをする。僕の手と向こうの僕の手が重なった時、何かが身体中を駆け巡ったような気がした。その後、謎の眩しさに目が眩んだ。手で目を被いたかったのに、それができない。どういうわけか、自分の意志で身体が動かせない。
「動けないだろう?」
その声は直ぐ目の前からした。僕だ。鏡に映った僕から発せられたものだった。どういうことだ。僕はそんな言葉を言おうとは思ってなかった。これは僕の意思じゃない。でも喋ってるのは間違いなく僕なのだ。
「わけが分からないって顔してるから教えてやる」
また僕が喋った。
「今日からボクがホンモノ。オマエは鏡に映ったニセモノ」
何だって。だが声を出そうにも掴みかかろうにも、何も出来なかった。感情はあるのに行動に移せない。僕は鏡の僕を睨みつけた、つもりなのにヘラヘラと笑っている。
「オマエは弱っていたんだよ。こんな簡単にボクに乗っ取られちゃうくらいにさ」
鏡の僕がぽりぽりと頭を掻くから僕も同じ動きをする。もう何も抗えない。
「心配するなって。これからは、ボクがなんでもうまくやってやるから。だからオマエはその中でのんびりしてるといいよ」
じゃあね。
最後に手を振って僕は鏡から離れてしまった。途端に何も見えなくなる。音も光も無い。まるで闇に閉じ込められてしまったかのように。

――誰か。出してくれ。

けれど。
声にならない叫びは誰にも届くことはなかった。

11/4/2023, 6:22:57 AM

「8月に、『鏡』1文字のお題なら書いたわ」
当時はたしか「『ミラー』ピアス」ってことにして、アクセサリーのハナシ書いた……だったかな?
某所在住物書きは、ひとまず昔のお題の「何月だったか」だけを確認して、過去作の確認はやめた。
結局今日も今日だったのだ。
物語を仮組みして、納得いかず崩して組み直して、また崩して。今鏡を見れば、その中の物書きは、まぁ、まぁ。察するほかあるまい。

「かがみのなかのじぶんねぇ……」
過去の題目「安らかな瞳」で、その瞳どんな瞳だと、鏡を見たらその中に居たのがバチクソ妙ちくりんな顔の物書きだった事はある。

――――――

3連休の真ん中。11月にもかかわらず夏日の都内某所、某アパートの一室。
じき斜陽の頃、人間嫌いと寂しがり屋を併発した捻くれ者、藤森というが、
洗面台で両手に水をすくい、顔をバチャリ冷やし洗って、タオルで拭いて鏡を見て、
己の青ざめた様に、ただ、ため息を吐いた。

「『酷いツラだ』、か?」
藤森の心境を代弁するのは、藤森の親友、宇曽野。
腕を組んで、壁に寄りかかって、力無い背中と鏡の中の藤森を眺めている。
「まぁ、仕方無いな。道端で、白昼堂々、あんなバッタリ自分のトラウマと鉢合わせたんだ」
俺が腕引っ張ってやってなけりゃ、おまえ、あの場でオオカミに睨まれたウサギみたいに固まって捕まっておしまいだったろうな。
宇曽野はわずかに笑って、藤森の肩を優しく叩いた。

「本当に、酷い顔だ」
髪についた水気を丹念に叩き拭きながら、藤森は小さな、疲れた声で呟いた。
「本来なら、先月末でこの部屋を引き払って、31日付けで仕事も辞めて田舎に帰って、
その私を、加元さんが追ってくるならそれでも構わないと、いっそ一緒に来れば、お前にも職場の後輩にも、これ以上迷惑がかからないと。
本当に、……本当に、そう思っていたんだ」

加元とは、藤森が今日つい先ほど遭遇した、「自分のトラウマ」そのひとであった。
いわゆる元恋人。加元から藤森に一目惚れして、藤森が心開いて惚れ返したところ、
何が気に入らぬか気に食わぬか、鍵もつけぬSNSの裏アカウントで、藤森に対し「解釈違い」、「地雷」、「頭おかしい」と散々ディスり倒した。
それだけならまだ仕方無い。よくある恋愛のもつれ、その一例である。

「それならば」と藤森が縁切って、区を越え職を変え、穏やかに当時の傷を癒やしていたところ、
その加元が粘着して「勝手に逃げないで」、「もう一度話をさせて」ときたからタチが悪い。
藤森の職場に何度も押し掛け、藤森の親友やら後輩やら、勿論職場そのものにも、何度面倒迷惑をかけたことか。
職場の後輩など、藤森の現住所を釣るために、探偵までくっつけられたのだ。

宇曽野とコーヒーを飲み、アパートへ帰る道中、
加元に道端でバッタリ出くわした藤森。
「東京を離れ、田舎に帰るつもりだから、そんなに私が欲しけりゃ追ってこい」と、「そして、これ以上私の親友にも後輩にも手を出すな」と、
言ってやろうと口を開いたが、
声が出ず、トラウマが首を肩を腕を締め付け、たちまちカッチカチに固まってしまった。
その腕を引っ張って走って、加元に住所がバレぬよう迂回してからアパートに戻り、藤森を助けたのが宇曽野である。

「こんな、みっともない私でも、」
タオルを畳んで、タオル掛けに戻して、再度鏡を見る藤森がまた、ポツリ。
「後輩のやつ、『田舎に戻るな』、『帰るな』と言うんだ。……私のせいで加元さんに狙われて、迷惑千万だろうに。何故だろう」

「そんなもん、おまえ、」
    、だからに決まってるだろう。宇曽野は言いかけて口を開き、また閉じて、視線を逸らす。
数秒後ニヤリ笑って答えたことには、
「お前が田舎に帰ったら、今までお前の実家から届いていたタケノコやら野菜やら、スミレの砂糖漬けやらが、今後タダで食えなくなるからな」

「それか。 そういうことか」
宇曽野のジョークを鵜呑みにして、更に納得までしてしまった藤森。
鏡の中には解を得て少し明るくなった顔色の藤森と、藤森のまっすぐ過ぎる素直さに複雑な心境の宇曽野がいる。

11/4/2023, 6:17:22 AM

いつもつまらなさそうな顔をしている。それがいやなのだがなかなかなおらないんだよね。

11/4/2023, 6:07:05 AM

鏡の中の自分

鏡の中の自分は、ほうれい線深く、目尻の皺と髪の生際の白髪、辛うじて歯はあるが歯茎はだいぶ下がってきている。
たくさんの経験と、苦労と幸せな日々の中で、老いていった自分。もう綺麗だよって言ってくれる人はいないけど、特に悲しくはない。今はプチ整形をする人もいるけど、コツコツ貯めているお金は、娘が結婚する時の少しのお祝いと、愛犬の介護の為。
外に出る時は薄く化粧をして、白髪も黒く塗れば、鏡の中の私は少し変わる。歯は大切だから、歯医者に行こう。
自分の見た目や体調の変化も受け入れながら、できる事をやっていこう。仕事も続けて、時々、美味しいもの食べて。気持ちだけは若く保って、老後を前向きに生きていこう。
明日、60歳になる私。

11/4/2023, 5:56:46 AM

ーなんと美しいのだろう

映ったのは、白い肌の、肩にかかるほどの黒髪を持つ女性であった。眼は星の様に煌めいて、唇は色っぽく艶があった。

パーマのかかった黒髪の、上品でもありながら、それをくるくると巻く動作は、
子供の様な印象を思わせた。

驚嘆たる出来事であった。
銀色の写しにここまでの美しさが現れるとは、思っていなかった。

法悦に浸る私を正気にかえらせたのは、
喧しい響きであった。すぐに着替え、
変わらぬ準備を終えると、私は家を飛び出した。


「〇〇くん、寝不足なんて言語道断だよ。
次から気をつけるようにね」

上司の声は、呆れつつも、変わらず美しい。

「はい、すみませんでした。以後気をつけます。」

罪悪感を抱くと同時に、私の中にはなんとも言えぬ背徳が湧き起こった。

『鏡の中の自分』

11/4/2023, 5:43:14 AM

「恋しいときにはこれをご覧」
娘にそう言い残して亡くなった母の
その言葉通り
寂しいときにそれを覗き込むと
若き日の母の面影が見える…
それは鏡がまだ珍しかったころの昔話

大きな西洋鏡に映るちんちくりんが
自分の姿と知って驚いた明治の人々

いま 当たり前のように
鏡の中に見慣れたその顔も
手元で不意に映りこむ画面の顔とは
同じであって同じでない

鏡が映すその先に その奥に 
何を見たいと願うだろう

見たいものだけ見てしまうから




「鏡の中の自分」

#238

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