「恋しいときにはこれをご覧」
娘にそう言い残して亡くなった母の
その言葉通り
寂しいときにそれを覗き込むと
若き日の母の面影が見える…
それは鏡がまだ珍しかったころの昔話
大きな西洋鏡に映るちんちくりんが
自分の姿と知って驚いた明治の人々
いま 当たり前のように
鏡の中に見慣れたその顔も
手元で不意に映りこむ画面の顔とは
同じであって同じでない
鏡が映すその先に その奥に
何を見たいと願うだろう
見たいものだけ見てしまうから
「鏡の中の自分」
#238
11/4/2023, 5:43:14 AM