たけたけ

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【鏡の中の自分】

 忙しい。手を止めたいがそんな暇は一秒たりともない。目がまわるとはこの事なんだろうと身をもって知る。こうなってしまうのは自身の要領の悪さが原因なのは分かってる、分かってはいるが。
「俺でいいから手伝ってくれないかなぁ」
 厨房の隅に置かれた小さな鏡に向かってぼやく。行き来するホール担当との衝突防止に置かれたそれには、覇気のない顔が映っている。
「……いや、頼りなさすぎるだろ」
 こんな奴に任せたくない。先程はこんな奴でも、と魔が差したが戦力にはならないだろう。
 よし、とエプロンの紐を締め直し、出来上がった料理をカウンターに乗せた。

「観光シーズンでお客さん増えるのは嬉しいですけど、店長の疲労やばいっすね」
「紅葉が終わるまでの辛抱ですよ先輩」

11/4/2023, 8:48:45 AM