ーなんと美しいのだろう
映ったのは、白い肌の、肩にかかるほどの黒髪を持つ女性であった。眼は星の様に煌めいて、唇は色っぽく艶があった。
パーマのかかった黒髪の、上品でもありながら、それをくるくると巻く動作は、
子供の様な印象を思わせた。
驚嘆たる出来事であった。
銀色の写しにここまでの美しさが現れるとは、思っていなかった。
法悦に浸る私を正気にかえらせたのは、
喧しい響きであった。すぐに着替え、
変わらぬ準備を終えると、私は家を飛び出した。
「〇〇くん、寝不足なんて言語道断だよ。
次から気をつけるようにね」
上司の声は、呆れつつも、変わらず美しい。
「はい、すみませんでした。以後気をつけます。」
罪悪感を抱くと同時に、私の中にはなんとも言えぬ背徳が湧き起こった。
『鏡の中の自分』
11/4/2023, 5:56:46 AM