お題 鏡の中の自分
寸分違わず自分を映し出す鏡。ところが最近、この鏡というモノが映し出すのは、自分ではないという事が分かったのだ。鏡は多次元を分かつ境界なのだ。映っているのは別次元の自分だと分かったのだ。分かたれた世界の自分は、こう自分に語りかけてきた。
「やぁ、そっちの自分。元気かい?」
突然声をかけられたが、不思議な気がしなかった。
「まぁまぁだ。そういうそっちの自分はどうなんだい?」
「まぁ、同じようなもんだな。鏡の外の世界はお互い知らないからな」
どうやら鏡に映らないところでの様子は、話せない決まりらしい。だからまぁまぁとしか言えない。時々まぁまぁ元気だという確認を鏡の前で交わし合う。
おそらくお互い、鏡の前に立てなくなるその日まで……
11/4/2023, 8:39:02 AM