『終点』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『深海スタンプ』
リリーは旅をしていた。白く美しい髪がどこまでも続く静かな世界になびいていた。リリーはいつも一人だった。他に人など、ここには居ないのだ。
当てなどなかった。どこに向かっているのかも、どこへ行きたいのかも気にとめず、この世界はリリーを導いていた。もうすぐ『終点』その事だけは分かっていた。
突然、リリーの体が大きく揺れた。髪がよりいっそうなびき、皮膚が引っ張られ、強い光が辺りを覆う。
その場所は、見たことがないような鮮やかな世界だった。リリーの髪が目立たないほどに、そこには色が溢れていた。相変わらず人などいなかった。ただそこには手紙があった。
得体の知れないものを掴んだのは、珍しかったからだ。白い手紙には深い海のスタンプが押されていた。
「リリー。長旅ご苦労さま。何も無い世界を泳ぐのは、寂しいものだったのか、楽しいものだったのか。今の僕にはさっぱり分からないけれど、君がこれを読んでくれていることがとても嬉しい。もうすぐ逢えるよ。そうしたら、君を思い切り抱きしめて、もう二度と、その手を離したりしないんだ。」
不思議と必死な字だと思った。その文字を指で丁寧になぞって思いを馳せていると、リリーの体を暖かい白い光が包み込み、リリーはこの世界から消えたのだった。
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テーマ『終点』
【終点】
心の終点。
人間関係。模試。部活。習い事。家の事。
色々なことに追われる日々。
同じような人を見てきたから。
いつか自分の心も壊れてしまうのではないか。
そんな恐怖とこれからも生きていく。
終点を目指す
誰に止められたってもう聞かない
今からあなたに会いに行く
『終点』
財産目録の作成を手伝わされたことがある。
公証人を目指す友人から、親類のちょっとした財産管理の一環として任されたもので、公のものではないから手伝ってほしいと頼まれたのだ。
公正証書を作るわけでもなく、何かを認証するでもない、棚卸しや片付けの手伝いと似たようなものだと言われ、それならと頷いた。
訪れた家の離れに足を踏み入れた途端、私は呆気にとられて立ち竦んだ。
壁一面に掛けられた絵の数々。天井にも、床にも、所狭しとカンバスがあった。
そしてそのどれもが人の顔を描いているのだ。
陰気な男の顔、無邪気に笑う子供の顔、穏やかに微笑む老人の顔、物憂げに俯く女の顔……
呆然とする私に、友人が言った。
「この離れに住んでいたのは、無名だが一応画家だったらしい」
なるほど、ここにある絵の目録を作れということか。
それから数時間、友人と二人で黙々と作業した。
幸いにもカンバスの裏には日付が記入されていたから、年代ごとに記載することができた。
そうしているうちに気づいたことがある。
これは画家が出会った人々の顔なのだ。
どれも特段目を引く容姿でもなく、日常よく見かける、ふとした表情。
――ある意味、これは正しくその画家の財産だったのだろう。
私は自分の人生の終点で、どんなものを残すだろう。
そんなことを考えていたら、友人が小声でこう言った。
「おい、その画家まだ死んでねぇぞ」
それは失礼。
終点
揺れる中でウトウトと舟を漕いでいる。遠距離通学とはいえ、電車に乗ってさえしまえば後は寝てれば終点まで乗せてってくれるので楽なものである。
いつもはラノベなり漫画なりを読み耽るのだが、今日は部活が大変だったので疲れて夢の中である。
……あれ?止まった?
しばらく電車が止まってたので目を開ける。確かに自分が降りる駅、終点である。
立ちあがろうとした、その時。
ぷしゅー
そう音を立ててドアが閉まってしまった。何やらアナウンスしているが驚いていて聞こえない。
うそ?もしかして、このまま車庫行き?
困ったことになった。車庫に行ったら出られるのだろうか。それともこのまま朝まで放置だろうか。
そう考えている内に電車が動き出した。上り方面に。
車庫に行くなら下り方面なので、どうやら車庫ではないらしい。
少しして、次は○○とのアナウンス。1上った隣駅に行く模様。
よかった、折り返し運転か。
ほっと息をついたのだった。
聖火だの 方舟だの
私の身体をめぐりあたためている血の流れ
ふえるのか ふえないのか
私の細胞という細胞をふるわせている命
日ごとに伸びてゆく朝顔のつるに螺旋のつぼみ
畑を覆う黄金色の亡骸
硝子窓に打ちつけては無数に弾け散る雨粒
夏ごとにいくつの船が川を流ていったのか
ひとつの枝を手折っても 野山は茂り
ひとつの糸が尽きても
連綿と編まれてゆくタペストリー
えいえんに織り込まれたひとつの命
灯されたことに意味があるなら
消えることにも意味は生まれるのだ
始まりに意味などないなら
終えることにも意味などいらないのだ
燃えうつることなく風の中に消えた火の粉
神様が間引いた麦のひと粒
続くのか 続けないのか
ながいながい旅のひとつの終点
『終点』
『aqours』
私は、ピリオドを打つのが下手です🥺どうして、何んでと。無駄なのに考えるの。
『人間だから』凛先生なら…。優しいお父さんだもんネ🎵
想先生も蒼さんも、私の中で今も燻っている。何時から雨になるのかな~?
想先生は、優しい雨男でいて下さいネ🎵
私の見ている風景は、甘いかもしれません。想先生、みたいにちゃんとしてないし…。
でも、今、数学を勉強しています_φ(・_・
あの時は、『ナンプレ』くらいしか言えなかった(^_^;)
ホンモノじゃないよね…。
凛先生といると陽だまりみたい✨私らしく、ネ🎵
いとをかしって私らしく想えたらいいなぁ~💐
蒼さんもいっぱいいっぱい、親切にして下さりありがとうございました🌻とても嬉しかったです(≧▽≦)✨
でも、サヨナラをセレクトした私を尊重しながら前を歩みたいなぁ~。前を向けたらな~。
ーー夏だもん、また、プールに行かなくちゃっネ(*^^*)🎵🌻🏊♀
また、物語の続きを頑張って書きま〜す_φ(・_・
終わり
私たちの終点
それってどこなんだろう
生命の活動が終わった時とか、みんなにに忘れられた時とか、大切なものを失った時とか
人によっていろいろあると思う
結局、明確な答えってないし、本当の終点ってどこなのか、結局わからない
でも、僕らの人生は始まっている
始まりがあれば、終わりがある
その終わりは、いつ来るのか、どこにあるのか、そんなのわからないけど、いつか絶対に来る
その終わり、終点までに、悔いが残らないような、楽しかった、満足した、と、思えるような生き方をしていきたい
そう思いながら、今を生きてるんだ
君は?
終点。終わり。それ以上行けない場所。ゴール。電車で言えば、折り返し地点。
『終点』
「えっ……れ、連載終了……?」
両手に持った月刊リポンを見つめ、
凍りつく悪役令嬢。彼女の指先が、
震えるように紙面に触れる。
いつも楽しみにしていた漫画の最終ページには、
「ご愛読ありがとうございました!」という
短い文字が記されていた。
人生にも物語にも、いつかは『終点』という
名の終わりが訪れる。
しかし、それはあまりにも唐突にやって来た。
「どうして……掲載順位は決して悪くなかった
はず。主人公たちの愛の行方、迫り来る他国の
脅威……これからが佳境だったというのに!」
悪役令嬢はショックのあまり、
その日一日寝込んでいた。
「何かございましたか」
いつもなら喜んで口にする紅茶も、
クロテッドクリーム付きのスコーンも
召し上がらない悪役令嬢に、
セバスチャンが心配そうに声をかける。
「好きだった作者様のお話が
もう読めなくなってしまいましたの」
長期休載なら、またいつか再開してくれる
という希望が抱ける。だが、連載終了。
単行本化もしていない。写真にも
電子の海にも残っていないのだ。
「主、形あるものだけが全てではありません」
セバスチャンはこんな話を語り始めた。
「先日ご覧になった『タイタニック』
の映画を思い出してください」
「ええ、とても感動的なラストでしたわ」
「ジャックはタイタニック号と共に海底に沈み、
名前さえ記録に残りませんでした。しかし、
ローズの心の中で彼は永遠に生き続けたのです」
「……」
「主の心に刻まれた物語は、決して消えることは
ありません。あなたがその作品を愛し続ける
限り、その世界はあなたの中で生き続けます」
執事の言葉に、悪役令嬢は瞳を揺らしながら
静かに目を閉じた。
終点とは即ち新たな始まり。
彼女の想像の中で、愛しい登場人物たちが
再び息づき始めたのであった。
終点
終点の気配がすると、少しく心躍る。ものごとの終点、私にとっては「課題の解決とレベルの収束」であることがほとんどだからだ。解放感と安心感がうっすらであっても響く。そして、その先がある。
うへぇ、まだあるの…と思うことはなくなった。何故なら、「かつて肉体を持ち、今は肉体を纏わない」たくさんの人達や、「今現在に肉体を持つけど、何処でも自由に行ったり来たりがフツー」な人達、「そもそも肉体は仮組みしか持たないで必要な時だけそれを使うのがデフォ」という少数派……などという人間関係に何年も関われば、自分自身も終わりなんか無いと思い知る。だから私の目標のひとつは、「ちゃんと生きて、ちゃんと死ぬ」ことなのだ。
存在としてできることは、生きていようが死んだ後だろうが変わらない。しかし、肉体という焦点を持っていればこそ、存分に発揮できる「チートスキル」があるので、そのチートが使える内にしかできないことを、「存命」のうちはやる。
「存命の終点」が、自分自身にとって最高に心躍るときになるように。
終点
月曜日は憂鬱だ。広告代理店に大学の就活で滑り込みセーフで入社して3年…。
代わり映えの無い単調な仕事に嫌気がさしてきた。
クライアントの要望に答え、自分なりに頑張ってきたつもりだが、ここでも男尊女卑というのだろうか…。
納得のいかない仕事ばかり私にまわってくる気がしてならない。
今日は、サービス残業もした挙げ句…いつものねちっこい上司のめがね親父にさっきから1時間以上も捕まって、文句を言われ続けた。
あーもう限界だ。
疲れた体に、居酒屋のウーロンハイと焼き鳥が染み渡る。
西武新宿の高田馬場の駅近の焼き鳥チェーン店でやけ酒だ。
お一人様上等!今日は終電まで飲んでやる…。
千鳥足で電車に乗り込み、「新井薬師前〜」とアナウンスを聞いたのが最後、うとうととうたた寝をしていた。
かなりの瞬殺で爆睡に入った模様。
田無で降りるはずが…終点の本川越まできてしまっていた。
駅員さんに肩を叩かれるまで、全く気づかなかった。
手に持っていたお気に入りのDEAN&DELUCAのトートバッグも床にストンと落としていた。
慌てて拾い上げて、本川越の改札に向かう。タクシーなんてお給料日前で痛い出費だ。
どうしようか…と悩んで改札を出たすぐのタクシー乗り場でとりあえず並んでいた。
私と同じように、肩を落として並ぶ男の人の横顔に見覚えがあった。
あ!中学3年生の頃、1年間だけお付き合いした元カレだった。
「拓哉?」私はこんな偶然に嬉しくなって思わず声をかけた。
「え?もしかして…美咲?」
結局私達は地元が同じなので、田無までタクシーを乗り合わせた。
タクシーの中で近況報告をし合った。拓哉も今の職場での不満が多いらしい。
たまたま、職場が近いことが判明して、私達は来週居酒屋でストレス発散する約束をした。
あの頃はよく一緒にMacで夜遅くまで勉強したな。お小遣いが出た次の日だけ、スタバだったっけ。優しくて穏やかな人柄が当時のままだった。
憂鬱な月曜日から、華の月曜日(古!)に変わろうとしている。
来週何着ていこうかな。そんなことを考えながら、眠りについた。
終点で巡り会えた奇跡に感謝しながら。
★終点
電車に終点まで乗ったことないなと気づいた。
電車旅とか、してみたいかも。
でも電車に乗るの好きじゃない。
どこ見たらいいか分からんくなってしまう。
やっぱり辞めよう。
いつか免許とって、バイクで旅することにしよう。
「終点。 物事の終わりの所。
数学でいうところの、ベクトルA→Bの『B』、
化学でいうところの滴定の終了点、
某大乱闘ゲーのお馴染み同盟ステージ、
一筆書きにおけるゴール。 ……他には?」
わぁ。昨日も昨日だが今日も今日。 某所在住物書きは「お客様終点ですよ」以外のネタを探すべく、ネット検索して結果をスワイプしてを続けている。
ところで8月11日は「きのこの山の日」だという。
たけのことの対立議論に終点は成立するのだろうか。
「……個人的に、きのこ派だけどさ」
お題そっちのけで物書きが自白した。
「クッキーは確実に、たけのこの方が美味いのよ。あの甘さとしっとり感だもん。なによりだな……」
――――――
変な夢を見た。
ガタゴト揺れる客車に乗ってる夢。
多分、職場で昼休憩終了間近に先輩から「お客様終点ですよ」で一気に起こされたのが原因。
ガラッガラの昭和レトロな石炭列車、外は青みがかった真っ白と真っ黒。満月光る夜の雪景色。
田んぼだか草原だか知らないけど、ずっとずっと白い平坦が続いてる。 私は赤いボックス席に座ってて、過ぎ去ってく後ろの景色を見てた。
同じボックス席の、向かい側には知らない人。
夢の中の私は、その知らない筈の人を職場の長い付き合いな先輩と完全に勘違いしてた。
夢の中って不思議(不明な先輩)
『あの夏から9年だ』
少しくらいなら本物に似てなくもない「先輩(仮)」が、なんの脈絡も無く言った。
冬の夢の中で「あの夏」とはこれいかに。
そもそも「あの夏」ってどの夏。
『もう、■■■の傷は癒えたのか』
すいません何の傷のハナシでしょう。事故ですか事件ですか、厨二ちっくカッコイイ黒歴史ですか。
夢の中の私は何も答えない。ただ、夜の満月と平原だか田んぼだかに積もった雪を見てる。
『向こうは相変わらずだよ』
ごめん先輩(仮)、「向こう」が分かんない。
『あれから何も変わっちゃいない。何ひとつ、ほんの少しも。仕方無いといえば仕方無いハナシさ』
私、その「向こう」と何があった設定ですか。
『ここの景色でさえ風力発電が増えたり狐や狸が逃げてきたり、変化し続けているというのに』
そーなんだ。分かんない。
『要するに、まぁ、その。早く■■■■と良いな』
先輩(仮)お願い。勝手に話題を終点まで一気に持ってかないで。もちょっと情報を各駅停車して。
『では。私はこれで。またいつか』
話聞いてください先輩(略)。
夢の中の冬の夜、私が乗った石炭列車は、状況も設定も背景も全然理解できない私を乗せたまま、
知ってる気がする(夢補正)駅に停車して私の先輩(夢設定)をそこで降ろして、
ガタン、ゴトン。ゆっくり次の駅へ。
夢から覚める直前に、列車の窓を開けて先輩(夢略)をもう一度だけ見ようとしたら、
振り返った先輩( )の顔は、
顔は――…
「…――先輩じゃなくて付烏月さんじゃない?」
変な夢見た日曜日。起きたのは昼過ぎで、結局夢の中の私が何をしたかったのか、どこへ向かってたのか最後の最後までサッパリ。
客車に乗ってどっかの終点に向かってたんだと思う。……どこですか。そもそも何故ですか。
なんなら夢で私が「先輩」と思ってた人が、先輩っつーよりは顔だけ「同僚」に比較的似てた気がするけど、何がどうなって、どうしたかったんですか。
夢の中って不思議(不明な夢の結末と着地点)
「うぅ。おなかすいた」
夢の意味も結末も行き先不明で逝っとけダイヤ。
おかげで頭の中はハテナマークばっかり。
「付烏月さん、ツウキさん、もうお店着いてる?」
ところで今日は職場の同僚の付烏月さんと、2時からスイーツバイキングに行く予定があった。
急いで準備して、「遅れるかも」のメッセージ送って、アパートから出て電車に飛び乗ったら、
『今パフォーマンスが盛り上がってるよん』
もうお店に着いてて席取りしてくれてる同僚さんが、スマホで撮ったスイーツバイキングのイベント動画を貼り付けてきて、
ドライアイスの煙を煙突から吐き出す石炭列車が、新しいスイーツのケースを引っ張ってバイキング会場に到着するっていう演出だった。
ごめん(ガチで結末と着地点が不明)
何がどうなってるかホントに分かんない(省略)
ガタン、と体が揺れて、漸く我に反る。
気付けば、毎日の通勤で乗る在来線の終点だった。
車内に流れる終着のアナウンスに促されるが、私は電車の座席に座ったまま動けなかった。
本日、会社からリストラの宣告を受けた。
会社の上司から話を聞いた瞬間から、意識が真っ暗に落ち、記憶が抜けている。
上司の詳しい話の内容など、うすぼんやりとしか覚えていない。
その後のことは……毎日のルーティン通りに会社の仕事をして、退勤後にいつもの電車に乗ったのだろう。
意識は無くとも、または意識するまでもなく体は覚えていたのだ。
「は、は、ははは……」
渇いた笑いが零れる。
無意識に染み着く程繰り返された日常が、急に取り上げられた。
否定された。
---じゃあ、私は一体何だったの……
自己否定の津波に溺れかける寸前ーーー
ガタン、と電車が揺れた。
「!?」
驚いて辺りを見渡してみると、乗車していた列車は折り返し運転を始めたようだった。
つまり、終着駅が……最初の駅となって、再度出発したのだ。
「は、は、ははは……」
今度は先程とは少しだけ軽い声が落ちた。
そっか……そこが終点(おわ)りというなら、そこから始動(はじ)めればいいのか。
いつか来る終わりを考える。
その時が来たらきっと自分はあっさりそれを受け入れるんだろうな、と他人事の様に考える。
「何故かって?始まりがあるなら間違いなく終わりもやってくるのだから。決まってしまったことに抗ったって仕方ないじゃないか。」
そう言うと“彼”は少し困ったようにそれはそうだけど、と笑った。
「寂しくはないのかい?」
「そりゃ…もちろん寂しいとは思うだろうけど。」
「でも受け入れるんだろう?」
「そうだね、それが覆される事は無いだろうから。」
キッパリと答えると“彼”はそのまましばらく何か言いたそうな顔をしていたが、結局何も言わないまま静かに頷いて口を開いた。
「…君と僕達は確かにここで生きていた。その事をどうか忘れないでくれよ。」
__そこでハッと目が覚めた。
夢の中の“彼”がどんな顔をしてそう言っていたのか、霞みがかって思い出せない。
ただいつかくる未来の終点に対して、今はまだ来ないで欲しいとそう願った。
#終点 今朝見た夢の話
「っ!ボス、起きてください!起きて!」
「……ん?なんだよ、って!ここどこだ!?」
「多分終点ですよ、この路線の。さすがに飲みすぎましたね……」
「ったく、これからどうするってか……」
「オレそんなにお金もってないんで、ボス、お願いできます?」
「タクシーか?んー、まぁ、しょうがねえな」
「太っ腹ですね!」
「なんか使い方間違えてねぇか」
列車が走る
滑りゆく景色は
置き去りにして
夢に向かってひた走る
君も村も遥か遠くへ
けれども想いはすぐそばに
手紙という形を得たら
どうか離れたこの距離を
いつかまた縮めておくれ
ー 終点 ー
感情線を辿った先に
夢の終点が願えるならば
どうか、旅の終わりは
君でありますよう。
《終点》
運命とは時に些細な切っ掛けから流れを変え、思わぬところへ世界を辿り着かせる。
それは、ほんの少し昔のこと。
ある美しい若者は、恋をしていた。
相手は、若者の上役。仕事はよく出来、人を見る目があり平和を愛し、何より美しいものが大好きだった。
二人は想いを通わせて、若者は職務中も上役の傍に置かれ、その仕事の補佐をしていた。
上役は、平和のために国の頂に立ちたいと願っていた。
若者は、そんな愛する上役の役に立ちたいと誠心誠意尽くした。
上役の必要を先読みし、環境を心地好く整える。その部下も手厚く遇し、上役の頼みが叶えられるよう手助けをする。
そして上役が心に住まう伝説の不思議な存在と対話するなら、その場を離れ静かに集中出来る環境を保つ。
若者は、心の底から上役を愛し、信じていた。
その絆は遠い未来、互いの命が果てるまで穏やかに続くものと。
ところが、それは突然終わりを告げた。
気持ちのすれ違い、などではなかった。
上役が自らの野望を遂げ国を掌握しようかというその時、若者に言い放ったのだ。
お前は、もう用済みだ。
これから醜く老いてゆくだけのお前を、傍に置いておくつもりはない、と。
そう。上役の全てが嘘だったのだ。
他者を思いやり、平和を愛する心も。
伝説の不思議な存在が心にいることも。
若者を、心から愛しているということも。
全てが嘘で塗り固められていた。
若者の想いは踏み躙られ、粉々に砕け散った。
上役への愛が全てであった若者の心は、ぽっかりと空洞が開いた。
希望の光一つない、漆黒の空洞が。
何故こんなことになったのか。何がいけなかったのか。
自分が若く老いぬ身であれば、捨てられることはなかったのか。
自分は今、何処へ向かえばいいのか。
漆黒の中では、その答えを探す事すら叶わなかった。
後に上役はある者らに討ち取られ、悪しきとは言え国はその頂に立つ者を失った。
その時、若者に声が掛かった。
次の皇帝はあなたしかいない、と。
若者は、思った。
自分を嘲笑ったかの人が求めてやまなかった全てを、この手に納めよう。
そう。若く老いぬ美しささえも。
そのためなら、どんな手段も厭わない。
己の辿り着くべき先は、ここにあったのだ。
若者の心の漆黒は、闇に見出された。
古の封印より自らの復活を企てる、悍ましい闇に。
長きに渡る孤独と苦痛を晴らさんとする、闇に染まりし悲しき神々の意思に。
その少し未来となった今。
その皇帝も、肥大した自らの闇と共に葬られた。
少女は、祈る。
その魂に、救いがありますように。
闇が晴れ、自らの行いを正しく省みることで真に報われ、次の幸福な生へと辿り着けますように。
目的もなく、当て所もなくここまで来てしまったようだ。
何も無いからこそ、
そこから何かが始まる予感がした。
終わりの、始まり。
『終点』