こっこ

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終点


月曜日は憂鬱だ。広告代理店に大学の就活で滑り込みセーフで入社して3年…。
代わり映えの無い単調な仕事に嫌気がさしてきた。
クライアントの要望に答え、自分なりに頑張ってきたつもりだが、ここでも男尊女卑というのだろうか…。
納得のいかない仕事ばかり私にまわってくる気がしてならない。
今日は、サービス残業もした挙げ句…いつものねちっこい上司のめがね親父にさっきから1時間以上も捕まって、文句を言われ続けた。
あーもう限界だ。
疲れた体に、居酒屋のウーロンハイと焼き鳥が染み渡る。
西武新宿の高田馬場の駅近の焼き鳥チェーン店でやけ酒だ。
お一人様上等!今日は終電まで飲んでやる…。
千鳥足で電車に乗り込み、「新井薬師前〜」とアナウンスを聞いたのが最後、うとうととうたた寝をしていた。
かなりの瞬殺で爆睡に入った模様。
田無で降りるはずが…終点の本川越まできてしまっていた。
駅員さんに肩を叩かれるまで、全く気づかなかった。
手に持っていたお気に入りのDEAN&DELUCAのトートバッグも床にストンと落としていた。
慌てて拾い上げて、本川越の改札に向かう。タクシーなんてお給料日前で痛い出費だ。
どうしようか…と悩んで改札を出たすぐのタクシー乗り場でとりあえず並んでいた。
私と同じように、肩を落として並ぶ男の人の横顔に見覚えがあった。
あ!中学3年生の頃、1年間だけお付き合いした元カレだった。
「拓哉?」私はこんな偶然に嬉しくなって思わず声をかけた。
「え?もしかして…美咲?」
結局私達は地元が同じなので、田無までタクシーを乗り合わせた。
タクシーの中で近況報告をし合った。拓哉も今の職場での不満が多いらしい。
たまたま、職場が近いことが判明して、私達は来週居酒屋でストレス発散する約束をした。
あの頃はよく一緒にMacで夜遅くまで勉強したな。お小遣いが出た次の日だけ、スタバだったっけ。優しくて穏やかな人柄が当時のままだった。
憂鬱な月曜日から、華の月曜日(古!)に変わろうとしている。
来週何着ていこうかな。そんなことを考えながら、眠りについた。
終点で巡り会えた奇跡に感謝しながら。

8/11/2024, 5:59:04 AM