ガタン、と体が揺れて、漸く我に反る。
気付けば、毎日の通勤で乗る在来線の終点だった。
車内に流れる終着のアナウンスに促されるが、私は電車の座席に座ったまま動けなかった。
本日、会社からリストラの宣告を受けた。
会社の上司から話を聞いた瞬間から、意識が真っ暗に落ち、記憶が抜けている。
上司の詳しい話の内容など、うすぼんやりとしか覚えていない。
その後のことは……毎日のルーティン通りに会社の仕事をして、退勤後にいつもの電車に乗ったのだろう。
意識は無くとも、または意識するまでもなく体は覚えていたのだ。
「は、は、ははは……」
渇いた笑いが零れる。
無意識に染み着く程繰り返された日常が、急に取り上げられた。
否定された。
---じゃあ、私は一体何だったの……
自己否定の津波に溺れかける寸前ーーー
ガタン、と電車が揺れた。
「!?」
驚いて辺りを見渡してみると、乗車していた列車は折り返し運転を始めたようだった。
つまり、終着駅が……最初の駅となって、再度出発したのだ。
「は、は、ははは……」
今度は先程とは少しだけ軽い声が落ちた。
そっか……そこが終点(おわ)りというなら、そこから始動(はじ)めればいいのか。
8/11/2024, 5:48:43 AM