『神様が舞い降りてきて、こう言った。』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
自分のやりたいことをして、自分の思ったとおりに生きなさい。と
言われてる気がする
ころも様、という占いが流行っているらしい。
交霊術。いわゆる狐狗狸さんの派生。
白い紙に鳥居、はい・いいえ、五十音に数字を書き。
鳥居の上部には水で満たした白い器を置き、硬貨を使用して質問を行う。
ありきたりで、子供騙しの呪い。
関わらなければ害にもならない、ただの噂話。
そのはずだった。
「なん、で、こん、なっ…!」
「話す暇があるなら速く走れ!』
彼女の手を引き、ただ走る。空間が捻れているのか、果てのない廊下の先に思わず舌打ちする。
委員会の仕事を終え、彼女と共に教室に戻るまではいつも通りだった。外から聞こえる部活動に励む声。教室に残る誰かの話す声。いつもと変わらぬ放課後だった。
それが変わったのは教室の前に来た時。どこか覚えのある肌の粟立つ感覚に、扉に手をかけた彼女に声をかけるも一足遅く。
扉が開かれると同時に、周囲から音が消えた。
「え?なに、これ、」
「逃げるよ」
教室の中にいるそれを正しく認識するよりも早く、彼女の手を引き走り出す。
無駄だと思っていたがやはり昇降口は閉ざされ、窓は開かず。
永遠と続く廊下に、走る足を止めずにどうするかと思考する。
己一人であれば、教室にいたあれを喰ってしまえばそれで済む。しかし今は彼女がいる。
彼女を一人置いていけるわけはなし。況してや彼女と共にあれの元へ行けば、あれの巻き散らかす呪いで彼女の気が触れてしまいかねない。
さてどうするかと、彼女を横目で見ながら思案する。
限界が近い。これ以上走る事は無理だろう。
幾度目かの廊下の角を曲がり、階段を駆け降りた先。
目の前の教室を見、後の気配を確認してから入り込む。
自分達の教室。最初に扉を開けた時と殆ど変わらぬ光景。
倒れている三人の少女。机の上の白い紙。白い器。
異なるのは少女達の側で佇んでいたあれがいないことくらいだ。
「も、って、きた?」
「あんまり喋らない方がいいよ」
彼女の背を摩りながら、倒れている少女達の近く、教室の奥へと移動させる。
入り口であれを喰ってしまえば、被害は少ないだろうか。
膝をつき、必死で息を整えながらも離れようとしない手を見つめ、内心で困惑する。
あれの気配はまだ遠いが、時間に余裕があるわけでもなし。どうすれば手が離れるか、とにかく声をかけようと口を開いた視界の隅で水面が揺れた気がした。
視線を向ければ、机の上に置かれた白い器。器を満たした水が、緩やかに揺れて。
ふと、噂になっていた『ころも様』について彼女が話していた内容を思い出す。
ころも様はどんな事でも視えており、何でも知っている神様で。
昔、悪い事をして神社に縛り付けられている為に外に出れず。だからこそ占いの間、外に出してもらえたお礼として質問に答えてくれるのだと。
神社に縛り付けられた、すべてが視える神様。
心当たりが一つだけあった。
「掛まくも畏き御衣黄大神の御前に恐み恐み白さく」
紙に書かれた鳥居に触れ、記憶の片隅から祝詞を引き摺り出し紡ぐ。
様子を伺う彼女を、今は気にかけている余裕はない。
ころも様を呼び出す呪文など知りはしない。ならば不完全であれ、それらしい言葉で呼び掛ければと。
完全な賭けではあった。
「祓え給い清め給えと恐み恐みも白さく」
水面が揺れる。波紋が広がる。
いつの間にか、繋いでいたはずの手が離れ。
あれの気配が近くなり。そして。
扉が軋み、開かれ。
あれの動きが止まった。
「何を惚けておる。さっさと取り込まぬか」
背後から聞こえる、男の声。
「早くせぬか。いつまでも抑えては居れぬぞ」
その言葉に駆け出し、その勢いのままに喰らい付いた。
「さて、娘。我を呼び出した対価を差し出せ」
にやりと笑みを浮かべる神に、思わず眉間に皺が寄る。
面倒くさい。ある程度予測はしていたが、とても面倒な事になりそうだというのが正直な感想だった。
「ナに差し出せバいいノサ」
「…まずはその呪を収めよ。障りが出るだろうが」
無茶を言う。擬きとはいえ、神を喰ったのだ。すぐに消化出来るわけがないだろうに。
仕方なしに口を閉じ、続きを促す。
「我は斯様に縛りがある故、社からは離れられぬ」
四肢に繋がれた縄に触れ、神は言う。
「娘。我の手足となれ」
「断ル。吊り合イが取れナイ」
無茶な対価に、耐えきれず口を出す。慌てて口を閉じるも、今度は何も言われず。
「無論、対価が重いのは承知の事。余剰分は望みに応える事で吊り合いとしよう」
望み。はてさてどれくらいの望みならば応えてくれるというのか。
真に望む事など応えられはしないだろうが。
不意に、かつて呪を施された場所が痛んだような気がした。
「最後の子を助ける術を探しておるのだろう?」
息を呑む。表情が険しくなる。
視える神なのだから不自然ではない。いや、それを対価に出すとは、おそらく最初から知って呼ばれたのだろう。
釈然としないが、まあ仕方がない。
一つ頷いて荷物と、気を失っている彼女を抱えて歩き出す。
「何処へ行く?」
屋上。人差し指を上に向け、伝える。
空間が戻った後のこの状況を、第三者に伝える面倒は避けたかった。倒れていた少女達も死んでいるわけではないのだから問題はないだろう。
「そうか。なれば続きは移動してからにしよう」
戻るのではないのか。
当然の如く付いてくる神に、理解が追いつかない。
そもそもこの場から動けるのだろうか。
「言ったであろう。我の手足となれ、と。娘自身を依代としておるからな」
憑いていくのは当然であろう、と愉しげに笑う神から思わず目を逸らす。
これは本当に面倒な事になったようだ。
20240728 『神様が舞い降りてきて、こう言った。』
「誰かのためになるならば」
「神様が舞い降りてきて、こう言った。」(7/26,7/27)
「前回までのあらすじ」────────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、お覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
そうそう、整備士くんや捜査官くんの助けもあって、きょうだいは何とか助かったよ。
712兆年もの間ずっと一人ぼっちで、何もかも忘れてしまって、その間に大事な人を亡くした彼は、ただただ泣いていた。ずっと寂しかったよね。今まで助けられなくて、本当にすまなかった。
事情聴取は無事に済んだ!その上、ボクのスペアがきょうだいを苦しめた連中を根こそぎ捕まえてくれたからそれはそれは気分がいい!
だが、実際に罪を犯した以上、きょうだいは裁判の時まで拘留されなければならない!なぜかボクも一緒だが!!
……タダで囚人の気分を味わえるなんてお得だねえ……。
牢獄の中とはいえ、随分久しぶりにふたりの時間を過ごせた。小さな兄が安心して眠る姿を見て、今までずっと研究を、仕事を続けてきて本当によかったと心から思ったよ。
きょうだいのカウンセリングの付き添いがてら、久しぶりにニンゲンくんと話をしたんだ。いつも通り話がしたかったけれど、そんなことはできなかった。
ボクの心は、ボクの気持ちは紛れもない本物だと信じて欲しかったけれど、受け入れてはもらえなかった。
機械のボクはもう、キミに信じてもらえないみたいだ。
でもまあ!!!きょうだいもボクも元気に牢獄暮らしが送れているうえ、旧型管理士の彼女も調子がよさそうだから、当面はよしとしようか!!!
……というかこの「あらすじ」、長すぎるね!!!何がどう荒い筋だと言うんだい???……また作り直すよ!!!
ふえぇ全然時間が取れないようぅ……。゚(゚´ω`゚)゚。
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「誰かのためになるならば」(7/26)
マッドサイエンティストに酷いことを言ってしまった次の日。
あいつの言う通り、事件を捜査しているやつがうちに事情聴取しにきた。
自分は見聞きしたことをそのまま説明した。
せいぜい自分のできることなんかその程度だ。
話を聞きにきた少年───おそらくこいつも機械なんだろう───は、つまらなさそうにメモをとっていた。
つまらなさそうというよりかは、何も感じてないみたいに。
自分は興味本位で、この少年に聞いてみた。
「あんたは、嬉しいとか、悲しいとか思うのか?」
「機械でも、感情を持つなんてあり得るのか?」
そしたらそいつはこう答えた。
「私に感情はプログラムされていないので、その問いには答えかねます。ただし、感情を学習させた機械に関しては、その限りではありません。」
「あなたが思われた通り、私は機械です。業務を効率的に行うために作られた物です。他の機械も同様ですが、感情を持ったものもおります。」
「例えば、しばらくあなたの住まいを拠点としていた公認宇宙管理士『マッドサイエンティスト』。あの管理士は相当精巧に作られています。」
「精巧に……って言われても比較対象がないから正直よくわからないんだよな。あいつはどのくらいしっかり作られてるんだ?」
「そうですね……。宇宙管理機構には機械の他に生命体も少なからずおりますが、生命体のなかにマッドサイエンティストを機械だと思っていなかった者もいるくらい、と言えば分かりますか?」
「そっか。ついでに聞きたいんだけど。」
「なんでしょう。」
「機械は心を持てるのか?」
「自分は、あいつに酷いことを言ってしまったんだ。あいつはよく言ってた。『誰かのためになるならば、ボクはどんなことだってする』って。」
「あいつが本気で、本当にそう思って言ったんだったら、自分は相当酷いことをした。だから、もしできるんだったらちゃんと謝りたい。」
「なるほど……。」
「これは私の見解ですが、おそらくマッドサイエンティストはほとんど生命体に近い心を持っているのでしょう。」
「私はあくまで仕事をするだけで、そこに善悪も倫理も喜びもありません。すべき業務を処理するだけです。」
「もちろん、機械にも表面的に感情を真似することは不可能ではありません。私には本物の感情か、ただ感情データをなぞっているだけなのか判別がつきません。」
「自分は、あいつを庇って腕に怪我をしたんだ。そのあと、箱みたいな所に入れられてさ、そしたら傷が治ってたんだ。」
「傷を治してもらったのに、あいつの腕がなくなったのをみて恐ろしくなって、いや、今までのやりとりが心の通わないものだったのかもしれないと思うと不気味に思えて。」
「気づけば自分はあいつをひどく拒絶してしまった。」
「……そういやそもそも、『本物の感情』ってなんなんだろうな?……というか自分は何言ってんだろう。」
「お悩みの様子ですね。ですが、私には話を聞くことしかできません。事件に関する話であれば処理いたします。」
「いや、こっちから話すことはもうない……と思う。」
「そうですか。本日はありがとうございました。それでは、失礼します。」
「ちょっと待ってくれないか?」
「はい、なんでしょう。」
「あいつは今、どうしてるんだ?」
「重要な情報ですので、答えることができません。」
「……そっか。今日は遠くからわざわざありがとう。」
「いえ、こちらこそ。何かあればご連絡ください。」
そう言って彼は帰って行った。
前に通信した時にあいつが言ってた言葉を思い出す。
「元気かい?」「美味しいものは食べているかい?」
「運動はちゃんとしているかい?」
ずっと自分のことを心配してた。
なのに、「作り物は本物になれない」とか思って、自分はあいつを傷つけたんだ。
次会った時はちゃんと謝らないと。
つまんない意地なんか捨てて、心から謝らないと。
……でも、次に会える時なんて来るんだろうか。
謝れないまま時間だけが過ぎて、気づけばもう二度と会えないのかもしれない。許されないかもしれない。
でも、せめて出来ることはしないと。
そう思って、自分はあいつが置いて行った端末を手に取った。
To be continued…
゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。
「神様が舞い降りてきて、こう言った。」(7/27)
ここはどこかの繁華街。俺らは学校サボって汚い路地裏で駄弁る。テストダルいとかあいつら別れたらしいとか、夏休みはどこに行くとか、他愛もないことばっかり喋ってた。
「俺も彼女欲しいんだけど。」
「出会い系でも使ったらいんじゃね?性別問わないんだったらパパ活でもするとか。」「それはあかんやつやん!」
「ほらさ〜、そういうアングラな出会いじゃなくて、もっとこう、胸がときめくような、なんつーの?空から女の子が〜!みたいな出会いがいいわけよ!」
「それは夢見すぎじゃね?」
「いやぁ〜、俺だって夢の一つや二つぐらい見たいって!」
「神様とか舞い降りてきて、可愛い子紹介してくんないかな?」
「何言ってんだよ!縁結びの神社でも行けって!」
「えぇ〜、神社とか全然知らんし〜。」
「ggrks……ちょ、お前上!上見ろって!!」
ボケっとしてたが上を見る。
「空から女の子が!」
ふわっとしたダイナー風レストラン?の制服を着た女の子?がこっちを見て何か言いたそうにしてる。
「やあ君たち!こんな時間に何してんの?サボり?」
「え?まぁ。」
「ダメだぞ〜!サボってたら下手したら留年して退学ルートまっしぐらだからねー!」
「なんせ、神様が言うんだから間違いない!」
は?と思ってよく見ると、名札に「神」と書かれてた。
「神様って意外と現代的ですね……?」
「目の付け所がいいね!うちらも社会についてかないと大変じゃん?だからこーやってバイトして現代の街に溶け込んでるわけ!」
「へ、へぇ……。」
「なぁ神様。可愛い子紹介してよ?」
「おい!さすがに失礼だろ?」
「う〜ん、お布施をい〜っぱいくれたら考える!」
お布施かぁ……とか考えてると、上から声がした。
「おい神(ジン)!何やってる?!早く戻れって!」
「げっ、見つかった!」
「なんですかさっきから……?っていうか『神』の読み方『かみ』じゃなくて『じん』なんすね……。」
「うぅ……。」
「というかあんたも仕事サボってたんすか?」
「……ちょっとめんどくさくて2階からロープ垂らして降りてただけだって!」「それをサボりって言うんすよ。」
「とにかく戻った方がいいですって!」
「あ、じゃー君たちもうちの店おいでよ!」
「えぇ……悪質な勧誘……。さすがは神様だ。」
「うちのオムライスめっちゃ美味しいからさ!」
嬉しそうに笑って言う。
「お客様2名入りま〜す!いらっしゃいませ〜!」
正直……神さん超可愛い。めっちゃタイプ。
明日からここ通おう。俺はこっそり決めた。
神様が舞い降りてきて、こう言った。
──彼女を護るのは私の役目だから。
それを聞いた僕は、目を見開いて硬直した。驚きというより図星をつかれた感覚だった。絶望にも近い。
何かを言い返そうとして張り付いた唇を離すも、言葉が浮かばない。薄く開いた口許からは、音にもならない空気が漏れ出るだけだった。目を逸らす。
あまりにも、情けない。
普段ならもっと高圧的にもなれるのに、こればかりはだめだった。
あたりまえだ。悪魔の血を引く僕に、彼女を守る力などない。あるはずがない。常々そう思っていたところへこれだ。もはやトドメだろう。
彼女とともに過ごした時間が長かろうが関係ない。そもそも、“神様”と、僕自身がそう呼んでいる時点で勝てもしないのだ。
そして彼女もまた、奴をそう呼び、それから願い、祈り、求めるのだろう。
わかっている。わかっている。全て、わかっている。
ただ、君を守るのは僕でありたかった。それだけだった。
小さな、それでいて強欲な、君に必要のない僕のエゴだったんだ。
押し付けなんか、しないよ。するわけがない。
僕だって君を守りたいんだから。だから、君の幸せが僕の一番であるべきなんだ。
僕は顔を上げると、神様をひと睨みした。ああ、完全に負け犬だ。格好がつかないにも程がある。
目の前の奴はそんな僕に一瞬だけ哀れむような目を向けたあとで、フッと嘲笑をこぼす。それは奴なりの慰めのつもりだったのかもわからないが、僕は悔しさに心を淀ませて、ただ無言のままその場を去る。
彼女を護りたいから悪態はつけないし、彼女を守りたいから納得もできない。
せめぎ合いなんて、葛藤なんて、悪魔が聞いて呆れると、僕は奴の隣を通り過ぎながら、そう思った。
title. あくまでも
Thema. 神様が舞い降りてきて、こう言った。
#7 神様が舞い降りてきて、こう言った。
[神一重]
幼い時、夢の中でねこバスをみた。
あのバスに乗れば、三途の川を渡れる。
何故だか乗りたくて仕方がない衝動に駆られた。
そっちにいってはダメ!
もうすぐ乗れる!と想った瞬間、
大きな御婆様のような声に引っ張られて、
目が覚めた。
それ以降、なぜか絶望的にみえる現実に
負けなくなった。
キャンバスに筆をなぞるだけの日々。
なんの感情もないその無機質な一枚に、
誰もが賞賛し、嫉妬する。
息もできないこの世界から
自分の世界に逃げるだけ。
自分が描く価値なんてどうでもよかった。
そんな一枚を、あなたが見つけてくれた。
「好きだよ」って、たった一言。
その輝きが、あなたの眩しさが、
僕は焦がれてしまったんだ。
僕の一枚と、僕の生き方に、
一等星の輝きを放ち出す。
突然現れたあなたは、
紛れもない僕のミューズなんだ。
【神様が舞い降りてきて、こう言った】
《巡り逢うその先に》
第2章 11
主な登場人物
金城小夜子
(きんじょうさよこ)
玲央 (れお)
真央 (まお)
綾乃 (母 あやの)
椎名友子 (しいなともこ)
若宮園子 (わかみやそのこ)
大吉 (だいきち)
東山純 (ひがしやまじゅん)
向井加寿磨 (むかいかずま)
ユカリ (母)
秀一 (義父)
桜井華 (さくらいはな)
大樹 (父 たいじゅ)
高峰桔梗(たかみねききょう)
樹 (いつき)
葛城晴美 (かつらぎはるみ)
柳田剛志 (やなぎだたかし)
桜井大樹(さくらいたいじゅ)
横山雅 (よこやまみやび)
京町琴美(きょうまちことみ)
倉敷響 (くらしきひびき)
葛城晴美 (かつらぎはるみ)
犬塚刑事 (いぬづか)
足立 (あだち)
黒鉄銀次 (くろがねぎんじ)
「待ちなさい、どうして逃げるんですか?」
「そりゃお巡りさんに追いかけられたら逃げるでしょ」
「ちょっと聞きたいことがあるだけだから、止まりにさい」
桜井華と高峰桔梗は男を追いかけていた。
そこに、白バイに乗った葛城晴美が通りかかった。
「晴美、アイツを止めて」
「OK」
晴美は先回りをして男をぶっ飛ばした。
「晴美、やりすぎよ」
「だってコイツなんかやらかして逃げてたんじゃないんですか?」
「違うはよ、ちょっと話しを聞きたかっただけよ」
「えー、やだー、チンピラ君ゴメンね」
「酷いですよ、いきなり殴るなんて!」
「だからゴメンって謝ってるじゃない。ダメなの?ねぇ、おい。やんのかコラ!」
「いえ、あの、お気になさらずにすみません」
「それならいい」
ひと段落したところで、華が話し出した。
「済んだか?なら、本題に入るが、お前海江田だな?」
「ああ」
「最近多発している自転車業界を狙った詐欺事件に付いて何か知らないか?」
男の顔付きが変わった。
「知らねーな」
「本当に知らないのか?」
「ああ」
「じゃあ、黒鉄銀次は知っているか?」
途端に男の顔から血の気が引いていった。
「し、知らない。俺は何も知らない」
「ウソをつくな、知ってるって顔に書いてあるぞ」
「言わないなら、もう一発いっとくか?」と、晴美が凄む。
「ひー、勘弁してくれ。言ったら半殺しにされちまうよ」
「話してくれれば、もうお前の前には現れない。今日のことは、誰にも見られていない。バレはしない、大丈夫だ」
海江田はしばらく考えてからうなづきた。
「わかった話すよ。正直そろそろ足を洗いたいと思っていたんだ。
あんたの言う通り自転車業界を狙った詐欺事件の黒幕は黒鉄銀次さんだ。5人がカモられたよ」
「それを裏付ける証拠は何かないか?」
「その証拠を俺は持ってない。詐欺で捕まえたって、懲役数年ってところだろ。俺は銀次さんを死刑にできる証拠を持ってるぜ」
「なんだって、それはいったいなんだ?」
「確実に捕まえてくれるかい。万が一取り逃がしたら、俺の身が危なくなる。約束できるかい?」
「約束する。私は黒鉄銀次を捕まえるために刑事になったんだ」
「ほうそうかい。訳ありとようだな、わかったよあんたに託すぜ。
俺が持っているのは14年前の警察官殺しに使った凶器のナイフだ」
「なんだって、なぜお前がそんなものを持っているんだ」
「あの頃、俺は銀次さんのパシリだったんだ。処分するように言われたんだが、憧れの銀次さんがカッコよくてジップロックに入れて毎日眺めてたんだ。だが、最近の銀次さんは人を騙して喜んでる。なんか中学生のガキみたいでダサくってよ。熱が冷めちまったんだよ。明日の夜11時にここに来な、そん時渡す」
「わかった。必ず刑務所にぶち込んでやる」
「華さん、良かったですね。これでやっとお父さんのカタキが取れますね」
「ああ、そして桔梗のご両親殺害の関与も暴かなければな」
だが、次の日約束の時間になっても海江田は現れなかった。
それどころか、翌朝刺殺体として発見された。
つづく
転生だの、生まれ変わりだの
死んだ後のことなんて考えた事なんてない
だから今目の前で起きている事が理解出来なかった
『ここはね、天国でも地獄でもない ん~狭間かな?』
まぁ、死んでるのはそうなんだけどね~とも言った
背中に大きな真っ白の羽 頭の上に白光りする輪っか
いかにも天使の見た目 本人は、神様だと言い張った
『今の君には2つ選択肢がね〜あるの
1つはね~、このまま成仏する
2つめはね~、今の記憶を持ったまま別の人生を歩む事かな~』
ゆるくのんびりな口調でとんでもねぇ事言いやがった
2つめは所謂転生とか言うやつでは!?
現実に起きるのか!あ、いやもう死んでるけど…
『まぁ、もう少し時間はあるから考えてよ
決まったらおしぇ〜てね~』
そう言い残して神様は何処かに消えた
死後の世界があるならば見てみたいと思ってしまう
けれど、死んだら神様どころか自我があるかどうかすらギモンである
#神様が舞い降りてきて、こう言った
迷い込んだ森で出会った男は美しく、そして何より強かった。
羽ばたく音と共に空から現れたかと思うや否や、あんなにしつこく追いかけてきていた野犬の群れをあっという間に圧倒してしまったのだ。
殺すこと無く脅しを効かせ、まるでサーカスの猛獣使いのような手際で追い払う。
いや、華麗に蹴散らすその様は、戦場に舞い降りた軍神さながらと言うべきか。
泣いて転んで。助けを呼びながら逃げていた先ほどまでのことが嘘のよう。瞬く間に形勢は逆転し、狂暴だった犬たちが、恐れをなして散っていく。
最後の一匹が逃げていくのを見届けると、男は安堵のため息を吐いてこちらを振り返った。
「大丈夫?」
振り向き様に、 彼の長いシルバーブロンドの髪がしなり、月明かりを受けてきらりと輝いた。
「――神様?」
薄暗い中、徐々に浮かび上がる。神々しさまで放つその美貌に、思わず見惚れて呟けば、男は一瞬、罰の悪い表情を見せて固まった。
躊躇った後、ゆっくりと跪いて、転んだまま立ち上がれずにいる私に目線を近付ける。そうして困った顔で微笑んだ。
「ごめんね。神様じゃなくて、僕、吸血鬼なんだ」
風に雲が流れて、月明かりが彼の姿の全貌を照らし出した。
夜空を背に大きく広がる翼は黒々とし、私を見つめる瞳はルビーのように深くて赤い。
人間離れした、絵に描いたような美しさを持つ異形は、悲しそうに囁いた。
――君も怖いなら、逃げると良い。
その声はとても小さくて。吹いた風が運んでくれなければ、聞き逃すほどに弱々しいものだった。
「ま、待って!」
背を向け飛び立とうとする彼を、慌てて呼び止めた。
「じゃあ、貴方が、おばあちゃんが言っていた森の吸血鬼? 医者より物知りで、命の恩人だって教えてくれた!」
一気に捲し立てれば、彼はぎくりと動きを止めて留まった。
振り返って私を見下ろす彼は、先ほどまでとは打って代わり、信じられないものを見る面持ちで私を見つめている。
這って彼ににじり寄り、服の裾を掴んで先を続ける。
「私、貴方を探してここまで来たの。お願い、弟を助けて! 熱が出たまま三日も目を覚まさないの。街のお医者様もお手上げで。もう、どうしたら良いのか分からない。私の血でも命でも、何でもあげるから、だから――」
「血なんて、要らないよ」
言い募る私を遮って、膝を折ってしゃがみこむ。そうして足元を掴む私の手をそっと振りほどくと、転がる私を抱き起こして座らせた。
「おばあちゃんは、今は?」
土埃を払いながら静かに問う。服の汚れをはたく彼の手は優しくて。
不安に押し潰されて昂っていた私の気持ちも、釣られて落ち着きを取り戻していく。まるで魔法の掌だ。
鼻を啜って、彼の問いに答えた。
「五年前に亡くなったわ。大往生よ。孫の顔も見られる歳まで長らえたのは貴方のおかげだって、よく話してくれていたの」
「そっかあ」
そう言って彼は俯くと、「もう一度、会いに行けたら良かったな」と呟いた。
しかしそんな落ち込みを見せたのも一瞬だった。
きりりと表情を正し。再び顔を上げた彼は「ごめんね」と私に一言謝ると、あの優しい掌で私の視界を覆い隠した。反射で思わず身動げば、反対の手でもがっしりと肩を掴まれ固定される。
「ちょっと気持ち悪いだろうけれど我慢して。君の記憶を、見させてもらうよ」
「え」
私の驚きと抵抗を待たずして。
彼が何かを唱えた途端。閉じた目蓋の裏で、これまでの出来事が目まぐるしく一気に映し出された。
在りし日のおばあちゃんとの思い出。
家で倒れた弟。弟を診て首を振る医者。
助けてくれない大人たち。
藁にもすがる思いで飛び込んだ森の奥地。
迷って追われることになった野犬の群れ。
そして、颯爽と現れた吸血鬼の青年。
「ありがとう。もういいよ」
無理やり扉をこじ開けるようにして、次から次に切り替わる記憶の波に吐き気を覚えた頃。
漸く彼が手を放して、不思議な術から解放された。
頭がふわふわして気持ち悪い。
まずい、と思った直後。ぐらりと傾いた体を、彼が優しく抱き止めてくれた。
赤子をあやすようにして、肩をぽんぽんと叩かれたり、時にはさすったり。その度に気持ち悪さが引いていく。これも何かのまじないなのだろうか。
申し訳なさそうにして彼が言う。
「ごめんね、気持ち悪いよね。でも、許して欲しい。時々、嘘で誘き出して狩りのような真似をする輩もいるものだから。僕のようなはみ出し者は、用心深くもないと暮らしていけないんだ。疑いたくはなかったけれど、ごめんね」
「わ、分かったわ」
私の顔色が戻るのを確認すると、私を抱えたまま彼はすくっと立ち上がった。
高くなった視界に驚いて、思わず彼の首に腕を回してしがみつけば、端整な彼の顔が間近に迫る。
顔を赤くする私には構わずして。嫌がりもせずに、彼はにこりと微笑んだ。
「僕を頼ってくれて、ありがとう」
笑う彼の頬には静かに涙が伝う。月明かりに光るそれは宝石のようで。顎を伝って落ちた雫が見上げる私の頬も優しく濡らした。温かい。
涙の訳は分からない。おばあちゃんを偲ぶ涙なのか、それとも――。
私がひっそりと彼の気持ちに思いを馳せている間にも、彼は着々と飛び立つ体勢を整えていた。
腕の中の私に負担がかからないように抱え直し、閉じていた翼を広げて羽ばたき始める。
「君の家は――うん。あっちから来たんだったよね」
彼が見据える先は、まさしく私が走ってきた方角だ。
さっき見た記憶を辿っているのだろう。今も何かの術を使っているのか、彼の瞳は赤から金に変わっていた。
「夜が明ける前に急ごう。飛んでいくから、しっかり掴まって! 君の怪我も、あとでちゃんと手当てしようね」
バサリ、バサリ。
一層強く羽ばたいた後。
地面を蹴って、私たちの体はふわりと宙へ舞い上がった。
暗い森の上空へ飛び出し、私の家を目指して一目散に空を飛ぶ。
時折私を気遣って、頼もしく笑う彼は恐ろしい吸血鬼などではない。
私たち家族にとって、紛れもない。
美しく強い、神様だった。
(2024/07/27 title:044 神様が舞いおりてきて、こう言った)
「どうした?話聞こうか?」
神様が泣いていた私に話しかけてきた。
その日から、神様が全てになり神様のために仕事をし、神様のためにお金を使う。
みんなは神様のこと悪くいうけど、あなたをわかってあげられるのは私だけだから。
しかし、急に神様は居なくなった。私の仕事の報酬を持って。でも大丈夫。いつもすぐに戻ってくるからさ。大丈夫。
本当は神様なんかではない。
わかってた。そんなこと。
ただの人間を神様と崇めて、依存して、
でも君が僕に生きる意味をくれたから
やっぱりあなたは私の神だ。
「エリオ、ここだな」
「そうですね、ボス。行きましょう」
エリオと津詰は通報のあった人質のいるという家の前に来ていた。エリオはさびたアパートの廊下の床を見ていた。
---ガチャッ。
「ボス、どうですか?」
「こっからは見えない。隠れているだろうな。慎重に行くぞ」
「オッケーボス!」
エリオたちは抜き足で部屋の中に入った。
中は何も変哲のない狭いアパートの一室だった。
「このまま進みます?」
「そうするしかなさそうだな」
2人はそのまま進んで居間に入った。しかし、そこにも誰もいなかった。
「どういうことだ?誰もいないじゃないか」
「うーん、どうします?押し入れとかも見て見ます?」
「そうだな、少し危ないが」
津詰は左の方にある押し入れに目をつけた。エリオは自身の後ろにある押し入れに手をかけた。
その時、エリオの後ろからガサッという音が聞こえ、エリオは何者かに襲われた。
(何奴っ?)
エリオは背中を刺され、痛みが全身に走るのを感じた。その後エリオは意識を失った。
(……っ、ここは?)
エリオは辺りが暗く、寒い場所に立っていた。
(オレ、さっき後ろから刺されて倒れたんだっけ……)
エリオは状況が理解出来ず、呆然としていた。
すると、エリオは前から何かが来るのに気づいた。
(誰だ?……女の子?)
エリオの目には奇抜な髪と服装をした女の子がぺたぺたと足音を立てながら来ている様子が写った。
「おぬし、何者か?」
いきなり話しかけられたエリオは驚いて後ずさりした。
(しゃ、喋った!こ、こういう時って自分から話しかけたら良くないんだったっけ)
「とっとと名乗らんかい!」
エリオは黙っていると、怒鳴られた。
「お、オレは襟尾純、警察官だ」
少し弱気になって名乗り、怯んだ。
「ほぅ、けいさつかん、というんだな。聞いた事のない名前じゃ」
「それ、名前じゃないです、名前は襟尾純です」
「まあ良い、こちらからも名乗るとするか。我はソティス。本当はこの世界の住人じゃないが、なにかの力に引っ張られて来たのじゃろう」
エリオは異質な雰囲気を感じ取り、戸惑った。
(ソティス?日本人なのか?だけど、日本語は流暢だ。何者?)
「おぬし、先程刺されよったな?」
「そ、そうです」
「だからじゃな。我には時を戻す力がある。時を戻したいか?」
(はい)(いいえ)
「うわっ、なんだこれ?選択肢が浮いている??」
「いいから選ぶのじゃ!」
エリオはさらに戸惑っていたが、少し冷静になって考えた。
「これってどのくらい時を戻せるんですか?」
「おぬしの記憶を辿るとすれば、部屋に入る前からじゃな」
これを聞いたエリオは即座にはいの選択肢を押した。
「まあ、そうじゃろうな。よかろう、戻してやろう」
その声を聞いた直後、エリオは再び意識を失った。
「……おい!エリオ!聞こえるか?」
「……ん?ボ、ボス!」
「ようやく気づいたか。さっきお前さんがいきなり倒れてびっくりしたわ。何かゴニョゴニョ言ってて少し気味悪かったし」
「あー、すみません、ちょっとうなされてたみたいですね。まあ、とりあえず仕事、続けますか」
「よし、行くか」
エリオの脳内には刺された光景がフラッシュバックした。
(もう、オレは完璧だ。)
◎神様が舞い降りてきて、こう言った
神様が舞い降りてきて、こう言った。
『よいですか。貴方は今から天に登らないといけません』
「なぜでしょうか」
何か悪いことをしてしまったのでしょうかと聞くと、神様は微笑んだ。
『貴方の身体はとうに朽ちてしまっているからです』
よく見なさいと言われ、じっと指先を見つめる。
指先はほんのり透けていた。
「あぁ、私は死んでしまっているのですね」
神様の腕に包まれて一人の魂が浄化されていった。
これは誰にも知られることのない
”死神の”日常である。
悲しみの底に横たわっていると、真っ暗な空に一筋の光が差し込んだ。あまりのまぶしさに手をかざしながら見上げると、一人の女性が目の前に舞い降りた。
一目で分かった。その女性が女神だと。柔らかな眼差しで私を見つめながら、私の手を取りまるで鈴のような声でこう言った。
「戦車じゃなくて、星になりなさい。」
そして、握っていた手を離し私の目を閉じた。
目を開くと、私は公園のベンチに座っていた。そのベンチは公園の中にある小高い丘に位置していて、海を見渡すことができる。そうか、散歩の途中で少し休憩していたんだった。立ち上がり軽く伸びをして、頬を軽く叩いた。
あの日から、険しい山や谷を乗り越え、暗闇の中を突き進んだ。悲しみや苦しみを経験して、ようやく希望の光が見えた時に、女神が教えてくれたことがようやく理解できた。
自分の願いを叶えたいのなら。私の願いを阻む相手を恨んだり負かそうとしたりするのではなくて、私の幸せをただ願えばいいのだと。そうして穏やかな気持ちで過ごしていれば、神様が私の願いを叶えてくれるのだ。
「金の斧と銀の斧、君が落としたのはどっち?」
斧なんて落とした記憶がない、いや、そもそも持ったこともない僕は、戸惑った。
「どちらも僕のじゃありません」
僕が答えると、神様はこう言った。
「正直者の君には、両方を授けよう。では」
い、い、いらねぇぇぇっ!
そう思いつつ、僕は神様が残していった二つの斧を手に、途方に暮れるのだった。
神様が舞い降りてきて何か言い出す前に、
「何をいまさら…」という気持ちになるわ、絶対。
女神が僕の目の前に舞い降りた。
真っ暗だった目の前に突如現れた光は僕を優しく包み込んでこう言った。
「私のお家の子になる?」
そうして僕は女神の使い魔となった。
【神様が舞い降りてきて、こう言った】Other Story:B
周りに評価を聞けば、ほとんどが「良い人」と答える。
ただそれは言葉通りでなく、(都合の)良い人という意味。
頼まれごとは断らないし、不平不満も言わない。
事なかれ主義な自覚はあるが、性分だから変われない。
「ほんと損な性格してるよな、お前」
小学生以来の幼なじみは諦めたみたいで苦笑い。
「僕もそう思うよ」クラス全員分のノートは重い。
それでも手を貸してくれて助けられている。
「そろそろ断ることも覚えろよ?」無理だろうけど。
そんな副音声が聞こえるのは気のせいか。
「俺にできることなら手伝ってやれるけどさ」
わかるよな、と物言いたげな目が僕を射抜く。
最近、幼なじみからの小言が増えてきた。
僕も迷惑をかけるのは本意ではないから改めないと。
変われない、というのは思い込みかもしれないし。
そんな事を考えていた帰り道、事件は起きた。
まさに青天の霹靂。晴天から落ちた一筋の光。
その軌道をなぞるように降ってきた、一人の少女。
思わず空を見上げた。とても現実だとは思えない。
重力を感じさせない速度でゆっくりと落ちてくる。
ふわりと地面に横たわり、少しして目を覚ました。
「あの。大丈夫ですか?」問うと、少女は目を瞬く。
何も言葉を発さないまま、物珍しそうに周りを見回して。
「私は『あの』なの?」一瞬、理解ができなかった。
「たぶん違うと思いますよ」知らないけど、たぶん。
話を聞くと、封じられた力が名前に紐づいているらしい。
「一緒に調べてくれる?」期待に目を輝かせる少女。
「……いや」断るべき場面もある。今は心からそう思う。
人生に飽きた私の前に、神様が舞い降りてきて、こう言った。
「人生に飽きたの?死にたいのかwwなら生きる理由をプレゼントしてあげるよ。頑張ってね。」
この次元の神様。井丹心乃葉。とんでもない人だ。
お題『神様が舞い降りてきて、こう言った。』
神様が舞い降りてきて、こう言った
神様が舞い降りてきて、こう言った。
「 」
声は聞こえなかった。
いや、聞かなかったんだ。
自分の未来が決まっていたとしても、
私の人生は私が生きるんだから。
神様が舞い降りて、私に言った
「 」
次の日から私の生活は様変わりした。
いつも空っぽで定期的に音を鳴らしていた
お腹は飢餓を訴えなくなった。
寒さで震え凍えることもなくなった。
それだけでは無い。
私の心を人知れず抉った心無い言葉を
投げかけられることすらなくなったのだ。
ある日私は神様に言った。
「本当に本当にありがとうございました」
神様に全ての感謝を伝えた。
そしたら驚くことに
神様は私の言葉に目を丸くした。
それからこう言ったのだ。
「死神を始めてから
こんなに感謝されたのは初めてだ」
「私はいつの間にか死んでいたらしい」
ああ、でもいつか誰かに言われたっけ
「お前はもう死んでいる」って