「誰かのためになるならば」
「神様が舞い降りてきて、こう言った。」(7/26,7/27)
「前回までのあらすじ」────────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、お覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
そうそう、整備士くんや捜査官くんの助けもあって、きょうだいは何とか助かったよ。
712兆年もの間ずっと一人ぼっちで、何もかも忘れてしまって、その間に大事な人を亡くした彼は、ただただ泣いていた。ずっと寂しかったよね。今まで助けられなくて、本当にすまなかった。
事情聴取は無事に済んだ!その上、ボクのスペアがきょうだいを苦しめた連中を根こそぎ捕まえてくれたからそれはそれは気分がいい!
だが、実際に罪を犯した以上、きょうだいは裁判の時まで拘留されなければならない!なぜかボクも一緒だが!!
……タダで囚人の気分を味わえるなんてお得だねえ……。
牢獄の中とはいえ、随分久しぶりにふたりの時間を過ごせた。小さな兄が安心して眠る姿を見て、今までずっと研究を、仕事を続けてきて本当によかったと心から思ったよ。
きょうだいのカウンセリングの付き添いがてら、久しぶりにニンゲンくんと話をしたんだ。いつも通り話がしたかったけれど、そんなことはできなかった。
ボクの心は、ボクの気持ちは紛れもない本物だと信じて欲しかったけれど、受け入れてはもらえなかった。
機械のボクはもう、キミに信じてもらえないみたいだ。
でもまあ!!!きょうだいもボクも元気に牢獄暮らしが送れているうえ、旧型管理士の彼女も調子がよさそうだから、当面はよしとしようか!!!
……というかこの「あらすじ」、長すぎるね!!!何がどう荒い筋だと言うんだい???……また作り直すよ!!!
ふえぇ全然時間が取れないようぅ……。゚(゚´ω`゚)゚。
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「誰かのためになるならば」(7/26)
マッドサイエンティストに酷いことを言ってしまった次の日。
あいつの言う通り、事件を捜査しているやつがうちに事情聴取しにきた。
自分は見聞きしたことをそのまま説明した。
せいぜい自分のできることなんかその程度だ。
話を聞きにきた少年───おそらくこいつも機械なんだろう───は、つまらなさそうにメモをとっていた。
つまらなさそうというよりかは、何も感じてないみたいに。
自分は興味本位で、この少年に聞いてみた。
「あんたは、嬉しいとか、悲しいとか思うのか?」
「機械でも、感情を持つなんてあり得るのか?」
そしたらそいつはこう答えた。
「私に感情はプログラムされていないので、その問いには答えかねます。ただし、感情を学習させた機械に関しては、その限りではありません。」
「あなたが思われた通り、私は機械です。業務を効率的に行うために作られた物です。他の機械も同様ですが、感情を持ったものもおります。」
「例えば、しばらくあなたの住まいを拠点としていた公認宇宙管理士『マッドサイエンティスト』。あの管理士は相当精巧に作られています。」
「精巧に……って言われても比較対象がないから正直よくわからないんだよな。あいつはどのくらいしっかり作られてるんだ?」
「そうですね……。宇宙管理機構には機械の他に生命体も少なからずおりますが、生命体のなかにマッドサイエンティストを機械だと思っていなかった者もいるくらい、と言えば分かりますか?」
「そっか。ついでに聞きたいんだけど。」
「なんでしょう。」
「機械は心を持てるのか?」
「自分は、あいつに酷いことを言ってしまったんだ。あいつはよく言ってた。『誰かのためになるならば、ボクはどんなことだってする』って。」
「あいつが本気で、本当にそう思って言ったんだったら、自分は相当酷いことをした。だから、もしできるんだったらちゃんと謝りたい。」
「なるほど……。」
「これは私の見解ですが、おそらくマッドサイエンティストはほとんど生命体に近い心を持っているのでしょう。」
「私はあくまで仕事をするだけで、そこに善悪も倫理も喜びもありません。すべき業務を処理するだけです。」
「もちろん、機械にも表面的に感情を真似することは不可能ではありません。私には本物の感情か、ただ感情データをなぞっているだけなのか判別がつきません。」
「自分は、あいつを庇って腕に怪我をしたんだ。そのあと、箱みたいな所に入れられてさ、そしたら傷が治ってたんだ。」
「傷を治してもらったのに、あいつの腕がなくなったのをみて恐ろしくなって、いや、今までのやりとりが心の通わないものだったのかもしれないと思うと不気味に思えて。」
「気づけば自分はあいつをひどく拒絶してしまった。」
「……そういやそもそも、『本物の感情』ってなんなんだろうな?……というか自分は何言ってんだろう。」
「お悩みの様子ですね。ですが、私には話を聞くことしかできません。事件に関する話であれば処理いたします。」
「いや、こっちから話すことはもうない……と思う。」
「そうですか。本日はありがとうございました。それでは、失礼します。」
「ちょっと待ってくれないか?」
「はい、なんでしょう。」
「あいつは今、どうしてるんだ?」
「重要な情報ですので、答えることができません。」
「……そっか。今日は遠くからわざわざありがとう。」
「いえ、こちらこそ。何かあればご連絡ください。」
そう言って彼は帰って行った。
前に通信した時にあいつが言ってた言葉を思い出す。
「元気かい?」「美味しいものは食べているかい?」
「運動はちゃんとしているかい?」
ずっと自分のことを心配してた。
なのに、「作り物は本物になれない」とか思って、自分はあいつを傷つけたんだ。
次会った時はちゃんと謝らないと。
つまんない意地なんか捨てて、心から謝らないと。
……でも、次に会える時なんて来るんだろうか。
謝れないまま時間だけが過ぎて、気づけばもう二度と会えないのかもしれない。許されないかもしれない。
でも、せめて出来ることはしないと。
そう思って、自分はあいつが置いて行った端末を手に取った。
To be continued…
゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。
「神様が舞い降りてきて、こう言った。」(7/27)
ここはどこかの繁華街。俺らは学校サボって汚い路地裏で駄弁る。テストダルいとかあいつら別れたらしいとか、夏休みはどこに行くとか、他愛もないことばっかり喋ってた。
「俺も彼女欲しいんだけど。」
「出会い系でも使ったらいんじゃね?性別問わないんだったらパパ活でもするとか。」「それはあかんやつやん!」
「ほらさ〜、そういうアングラな出会いじゃなくて、もっとこう、胸がときめくような、なんつーの?空から女の子が〜!みたいな出会いがいいわけよ!」
「それは夢見すぎじゃね?」
「いやぁ〜、俺だって夢の一つや二つぐらい見たいって!」
「神様とか舞い降りてきて、可愛い子紹介してくんないかな?」
「何言ってんだよ!縁結びの神社でも行けって!」
「えぇ〜、神社とか全然知らんし〜。」
「ggrks……ちょ、お前上!上見ろって!!」
ボケっとしてたが上を見る。
「空から女の子が!」
ふわっとしたダイナー風レストラン?の制服を着た女の子?がこっちを見て何か言いたそうにしてる。
「やあ君たち!こんな時間に何してんの?サボり?」
「え?まぁ。」
「ダメだぞ〜!サボってたら下手したら留年して退学ルートまっしぐらだからねー!」
「なんせ、神様が言うんだから間違いない!」
は?と思ってよく見ると、名札に「神」と書かれてた。
「神様って意外と現代的ですね……?」
「目の付け所がいいね!うちらも社会についてかないと大変じゃん?だからこーやってバイトして現代の街に溶け込んでるわけ!」
「へ、へぇ……。」
「なぁ神様。可愛い子紹介してよ?」
「おい!さすがに失礼だろ?」
「う〜ん、お布施をい〜っぱいくれたら考える!」
お布施かぁ……とか考えてると、上から声がした。
「おい神(ジン)!何やってる?!早く戻れって!」
「げっ、見つかった!」
「なんですかさっきから……?っていうか『神』の読み方『かみ』じゃなくて『じん』なんすね……。」
「うぅ……。」
「というかあんたも仕事サボってたんすか?」
「……ちょっとめんどくさくて2階からロープ垂らして降りてただけだって!」「それをサボりって言うんすよ。」
「とにかく戻った方がいいですって!」
「あ、じゃー君たちもうちの店おいでよ!」
「えぇ……悪質な勧誘……。さすがは神様だ。」
「うちのオムライスめっちゃ美味しいからさ!」
嬉しそうに笑って言う。
「お客様2名入りま〜す!いらっしゃいませ〜!」
正直……神さん超可愛い。めっちゃタイプ。
明日からここ通おう。俺はこっそり決めた。
7/28/2024, 4:27:41 PM