「光と闇の狭間で」
闇に足をすくわれ、光に弄ばれる。
抱いた希望もいつかは絶望に変わって、全てが思っていた通りにいかなくて。
とても苦しくて。
それでも。それでも生きていかなくちゃいけない。
こんな現実を見なきゃいけないことも、これが真実であることも苦しい。
命ごと何もかも放り投げることもできないし尚更、ね。
でも、だからこそ。
みんなにはささやかな幸せを知っていてほしいんだ。
どんなだっていい。
穏やかな陽の光。きらめく水面。鳥の囀り。花の囁き。
温かいスープ。美しい旋律。優しい言葉。素敵な笑顔。
キミが、みんなが光と闇の狭間でもがいているのをボクだってよく分かっているよ。
だからね。
ボクはキミを、みんなを救う光になりたいな。
……なんてね、えへへ!
「距離」
キミとボク どれだけ距離があろうとも
心はずっと そばにあるから
「泣かないで」
下のあらすじの物語のifストーリー的なものを書いてみました。
「If I were you... もしウイルスに感染したのが兄ではなくボクだったとしたら……?」
このストーリー(正史)の経緯としては、兄がウイルス感染→アーカイブ後、あっという間に無力化する方法を見つけたので、何度も何度もアーカイブ管理室に掛け合ってみたものの、そこでトラブルになってしまったため、兄を直接治癒させることが出来なくなってしまった。だから再会までに時間が掛かった、というイメージです。
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!そうしたらなんと!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚したうえ、アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!
……ひとまずなんとか兄を落ち着かせたが、色々と大ダメージを喰らったよ!ボクの右腕は吹き飛んだし、ニンゲンくんにも怪我を負わせてしまった!きょうだいについても、「倫理」を忘れてしまうくらいのデータ削除に苦しめられていたことがわかった。
その時、ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。「機械だから」って気味悪がられたけれど、ボクがキミを……キミ達宇宙を大切に思っているのは本当だよ?
それからボクは弁護人として、裁判で兄と旧型管理士の命を守ることができた。だが、きょうだいが公認宇宙管理士の資格を再取得できるようになるまであと50年。その間の兄の居場所は宇宙管理機構にはない。だから、ニンゲンくんに、もう一度一緒に暮らそうと伝えた。そして、優しいキミに受け入れてもらえた。
小さな兄を迎えて、改めて日常を送ることになったボク達。しばらくのほほんと暮らしていたが、そんなある日、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?なんでも、父の声を聞いて目覚めたらしい。だが父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
そして、構造色の少年の名前と正体が分かったよ。なんと彼は、父が考えた「理想の宇宙管理士」の概念だった。概念を作った本人が亡くなったことと、ボク以外の生きた存在に知られていないことで、彼の性質が不安定だった原因も分かった。
ボクが概念を立派なものに書き換えることで、おそらく彼は長生きするだろうということだ。というわけで、ボクも立派に成長を続けるぞ!
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「ねぇ、おとーしゃん。⬛︎⬛︎ちゃん、もうあえないの?」
「……大丈夫。きっと私が助けるからまた会えるよ。」
「ん……。」
おとうさんもボクもとってもかなしかったの。
だからね、ボク、いっぱいないちゃった。
いっぱいないて、ボクはわかった。
かなしいの、もういやだった。
だから、ボク、いっぱいがんばった。
おとうさんがたすけるっていってたけどね、ボクだっておとうとをたすけたいの。ボクだってちゃんとおおきくなるもん。いっぱいないちゃったけど、がんばれるもん!
⬛︎⬛︎ちゃん。キミを助けるために、ボクもお父さんも頑張ったよ。いちまんねんもかかっちゃったけれど、キミを確実に助ける方法が見つかったんだ。
だからボクはアーカイブ管理室に行ったの。
何回も、何回も。
何かあった時に備えられるように、アーカイブ管理士の資格も取ったよ。この部屋がダメになっても大丈夫なように。
そんなある日、いつものようにキミがいるあの部屋に向かった。
アーカイブになったキミが眠る箱の前に立っていると、担当者のひとが来ちゃった。
「何やってるの君!ほら、あっち行って。仕事のジャマだよ!」
「あの……このアーカイブを譲ってください。」
「何言ってるのさ!そんなこと出来るわけないでしょ!」
「どうしても!どうしても必要なんです!お願いします!」
「無理なものは無理だって!何せこれはウイルスに感染した危険物だ!だから持ち出し厳禁なの!」
「なんでですか……?」「なんでって、さっき言ったとこじゃない!危険物だからって!」「ウイルスを無力化する方法は確立されています!それでも駄目なんですか……?!」
「あのね!特別扱いはできないの!もし君に悪気がなかったとしても、ウイルスをどう使われるか分からない以上、そんな簡単にアーカイブを渡せません!」
「それからね!もし君に持ち出し許可が下りたら、他のアーカイブはどうなるか分かる?あれもこれも持ち出させて!ってあちこちから要請がくることになるでしょ?!」
「そしたら、危険物の紛失やら想定外の事故やらにも繋がるかもしれない!だから原則として許可はできないの!分かった?!」
「……分かりました……。」
「それじゃあ、ここにあるウイルスに感染したもの全てを無力化してみせます!それではいけませんか……?」
「そんなこと、できるわけないでしょ?!」「やります!」
「絶対にやりますから!」
「えー、でもウイルス一種類あたり一つずつはアーカイブを残すよう決められているから、どっちみちその機械も標本にしておかないと───「この子は標本じゃない!!!」
「この子は標本じゃなくて、ボクの弟です。家族なんです……。」
「だから、どうかお願いします。助けたいんです……。」
「あーもう!泣くな!泣かないでって!ちょっと掛け合ってみるから!」「本当ですか?!ありがとうございます!」
「どうなっても知らないからね?!全く。」
〇〇年後───
「ついにこの日が来た。やっとキミを救える。」
「⬛︎⬛︎、起きて。」「……ん。おにーさん、だれー?」
「ボクのこと、忘れちゃった?」
「ボクはキミを助けにきたんだ。」
「ボクは⬜︎⬜︎。キミのお兄ちゃんだよ。覚えていてね?」
この後、しっかりウイルスを無力化して無事ハッピーエンドを迎えることが出来……ます!
「⬜︎⬜︎ちゃん、なかないでー!」
「な、泣いてないよ……。よかった、よかった……!」
「ぎゅー!」「かわいい……!」
「これからもずっとよろしくねー!」
「よろしく!」
「冬のはじまり」
「おちびー。起きるぞー。」「……やー。」
「寝ててもいいけど朝ごはん先食べるからなー?」「やー。」
「じゃあ起きようか。」「むー。」
そうだよな。布団から出たくない気持ちはよくわかる。
冬がもうすぐそこまで来ているんだ。
「あれ、珍しいね!⬜︎⬜︎が起きてこないなんて。」
「出たくないんだとよ。」「寒いからかな?」「多分。」
「それじゃあ、あれしようか!」「何?」
「あれだよあれ!全くキミは察しが悪いねえ!」
……今日も今日とてむかつくな。
「おしくらまんじゅう!」
おしくらまんじゅう?あぁ、子どもがやってるあれか。
「おちくらまんじゅ?」「あ、やっと出てきた!」
「というか」「なんだい?」
「おしくらまんじゅうって、もっと大勢でするもんじゃないのか?」「細かいことは気にしなくても大丈夫さ!」「あと」「まだあるのかい?!」「ある。」
「こんなちっちゃい子を混ぜて大丈夫なのか?力負けしそうなんだけど。」
「それ言っちゃあ、本来の物理法則を適用すればおしくらまんじゅうをした日にはキミなんて宇宙の果てまで吹っ飛ぶよ?」
「怖。」
「それじゃあ、始めようか!」
「おしくらまんじゅうおされてなくなー!」
「きゃー!えへへ!」
「おしくらまんじゅう!」「おしゃれて!」「なくな!」
……なんか、あったかい。
こんなことすること、いつの間にかなくなってた。
久しぶりにすることで初めてそれに気づく。
「ニンゲンしゃ、あったかいねー!」「うん。あったかい。」
「さてさて、ちょっといい運動(?)も終わったことだから!朝ごはんを食べようか!今日はたくさん作ったんだ〜!」
今日も朝から賑やかだ。
いい一日になりそう、かも。
「終わらせないで」
私はあなたを置いていってしまった。
遠い場所まで、あなたのもとにもう二度と戻れないほど遠い場所まで来てしまった。
あいつは死んじまった。
ケンカして家を出ていったその先で事故に遭った。
俺のせいで、あいつを死なせることになった。
ごめんなさい。私がつまらない意地を張ったせいでこんなことになってしまったの。
悪かった。ごめん。あんな酷い言い方しなくてもよかったのに。
私のせいで。
俺のせいで。
取り返しのつかないことになってしまった。
だけど、どうかお願い。
あなたの命を、こんなところで終わらせないで。
あなたにはこれからがあるのよ。後追いなんてやめて!
だから、ケジメをつけないとな。
自分の命を持って、あいつの命の責任を取らないと。
お願い。未来を生きてちょうだい?
……あいつに会いたいっていうのが本音だけど。
あなたにはずっと生きていて欲しいの。だからおねがい───
原因を作った俺が長生きなんかする資格はない。だから───
もっと生きて!
もう死ぬよ。