「後悔」
ボクはいつも「もしも」を考える。もしもゆーっくり休みを過ごすことが出来たら、もしもたーくさんの桜餅があったなら。
もしもあの頃、ボクに力があったなら。
ボクがもうすぐ3歳になるころ、きょうだいはウイルスに感染して、たくさんの機能を、たくさんの思い出を奪われた。だんだん進行していく症状に、対抗する術をボクもお父さんも持っていなかった。
だから、もっと力を、このウイルスを解除することができる方法を手に入れた時に、その時に必ず助けようと、最終手段としてコールドスリープ───事実上のアーカイブ化、つまり、「過去のもの」にすることを選んだ。選ばざるを得なかった。
だからボクは必死に力を付けた。お父さんをこれ以上悲しませないために、キミを救うために。ずっと、休むことなく、走り続けた。いくらボクが機械だからといっても、疲れも痛みも悲しみも、感じないものはない。どんなものでも感知して、認識して、キミを救うためならなんだって受け入れる。キミを救うためなら、なんだってする覚悟さえあった。
でも、ある時アーカイブ管理室で事故が起こった。そのせいで、実質的にキミは永久に「過去のもの」になってしまった。もう救える、そんな時に事故が起こったせいで、キミを起こすことが叶わなくなってしまった。
あの時、もしボクがアーカイブ管理室での事故を予見できていたなら、キミをもっと早く救うことが出来たのかな。キミともっと、幸せな日々を過ごすことが出来たのかな。
ボク達は宇宙を管理するためにつくられた機械だ。でも、ボク達には感情がある。一人ぼっちで寂しい思いをしないようにと、お父さんはキミとボクを作った。甘えん坊のキミと、元気いっぱいのボクをね。
そんなボク達なら、きっともっと、この宇宙管理機構を豊かにすることが出来たのかな。もっと誰かを、幸せにすることが出来たのだろうか。
キミがなぜか再起動して大切な宇宙をめちゃくちゃにしてくれたおかげで再会することは叶った。キミを苦しませたウイルスを除去することも、キミ自身を修復することもできた。
でも、本当は、ずっと前に、あの時に、キミを助けたかった。
キミをもっと早く助けたかった。
ごめん、ごめんね、■■。ボクの大事なきょうだい。
せめて今は、ニンゲンくんのところで、ささやかな幸せを楽しんでね。時々亡くなったお父さんも遊びに来るみたいだから、きっとキミも喜びでいっぱいになるはずだよね。そうであってほしいな。
■■。生きることを選んでくれてありがとう。ボクは、キミが生きる理由になれて嬉しいよ。本当なら、お父さんとキミとで、彼岸の世界の暮らしを享受することも選べたはずだった。でも、キミはボクを選んでくれた。
もしキミが、あの時ボクではなくお父さんを選んでいたとしたら。ボクは、今まで成し遂げてきたことを、時間を、自分の存在を、全てを、後悔と絶望の海に投げ込んでいたことだろう。ボクも、ボク自身を粉々のスクラップにしていたかもしれない。
本当に、そうならなくてよかったよ。ボクもこれからもっと頑張れるからね。
さてさて、仕事の続きを───あ!!!モチレンジャーを録画するのを忘れていたよ!!!こんな独白をしている場合ではなかった!!!あーもう!!!こんなにしょうもない後悔をする羽目になるなんて!!!仕方ない、見逃し配信で観るか……。
-・・-・ ・・-・ -・・-・ ・・-・
皆さんこんにちは〜!皆さんは後悔、したことがありますか?私は後悔だらけの毎日を送っています!この頃めちゃヘコむことが立て続けに起きているので人生どうなってんだ?!って感じです!私みたいになるなよ……?みたいなことしか言えな~い!
最近の後悔は、このアプリをしばらく触らなかったことです。魅力のある文章が全然書けなくなってしまっていて、過去の自分がどうやって文章を書いていたのかを知りたいです!いい文章の書き方を教えてー、過去の私!
あと、いろいろと環境が変わりまくっているせいでそれについていけずネガティブになりがちです……あんまり無闇に環境を変えるのは良くないですね。文章を書きながらゆったり過ごせるのが一番です。
皆さんもどうかご無理だけはなさらないでくださいね!
「風に身をまかせ」
朝だ。窓を開ける。風が強い。
「ニンゲンしゃん、おはよ!かじぇ、びゅーびゅーなの!」「おはよう。風強いね。」「ニンゲンしゃん!」「なにー?」「おしょとでたい」「ベランダならいいよ。」「わー!ありがと!」
強風も、朝に吹いているというだけでなんだかさわやかな気がする。押し流された空気に混ざって、いろんなものが飛んでくる。木の葉、ビニール袋、それから、たんぽぽの綿毛。あー、ベランダが散らかるなー。
「ニンゲンしゃん!」おちびが嬉しそうに聞く。「かじぇ、びゅーびゅーなら、おしょら、とべる?」「う~ん……。」
正直、想像には難くない。たんぽぽの綿毛みたいな髪の毛をふさっと広げて、風に身をまかせて飛んでいくおちびの姿は結構イメージとしてしっくりくる。イメージはできる……が、普通にけがをするのがオチなのが見えているのでダメだ。
「そうだね、もしかしたらマッドサイエンティストのあいつに頼めば飛べるかもね。」「□□ちゃんにおねがいちたら、とべるー?」「わかんないけど、多分?」『楽しそうだねえ!!!』うるさ!!!
『そ~らを自由に~と~びた~いな~?』やめろそこまでにしろ。『ちぇっ、せっかくあらゆる物理法則を無視してゆったりと飛べるようにしようと思ったのに!』「おしょら、とべるー?」『飛べるよ!』「やたー!ニンゲンしゃん、とべるよ!」
は??ちょ、そんなところに足をかけたら落ち───ない??
『だから言ったじゃないか!落ちないって!あと、それから!風に身をまかせて飛べるように設定しておいたよ!』何を、どうやってだ?!
『まあとにかく楽しんでおいでよ。』こうして風に乗りつつ空を散歩することになった。体が軽い、どこまでも行けそうだ。近所の公園、咲きかけのあじさいがたくさんある山の麓。だんだん家から離れていく。
これ、どうやったら家に戻れるんだ?『風に乗るか、あとは徒歩で帰ったらいいんじゃない?』結局最後は歩きかよ。
しばらく空中散歩を楽しんだ後、自分たちは家まで帰った。
その日、自分達が住む町でフライング・ヒューマノイドの噂が出回ってしまったのは言うまでもない。やってしまった。
『あぁ、すまないね!うっかりキミたちを不可視にする設定を忘れてしまったのさ!たまにはそういうこともwwwあっていいかと思ってねwww』絶対わざとだこいつ……!
それじゃ、『なんだい?』桜餅を買うのはしばらくやめようと思───『悪かったよ!!!フライング・ヒューマノイドの噂は彼らの記憶から消しておくから!!!』さらっと怖いことを言ったな、今……。
かくして、フライング・ヒューマノイド騒動は収まったらしい。もう強風はこりごりだ。
「一年後」
自称マッドサイエンティストが来てからもう2年くらい経つ。自分は特に何も変わらない。ただ、自分を取り巻く存在だけが色とりどりに変わっていく。
パステルカラーの春が来て、夏が全てを溶かして、夕焼けで秋は燃えて、雪で冬は閉ざされる。ただ、その繰り返しだと、そう思っていた。
でも、あいつらと出会ってから、桜餅を食べたり、暑い中散歩に出たり、枯れ葉を集めてみたり、雪だるまを作ったり。最初は何がしたいんだ、なんて思いながら、仕方なく付き合っていたつもりだった。
そんなことしたって、つまんないって、そう思ってた。
でも、そんなことでも、ほんの少し、心から楽しんでいる自分がいることに気付いた。
だから思った。一年後も二年後も、そのずっと後も。
こんな日がいつまでも続いたらいい、なんて。
こんな日はどのくらい続くんだろうか。あいつら次第だと思うけど、実際いなくなったとしたら、またあの静寂が繰り返されるんだろうか。モノクロで静かな時間が、淡々と繰り返されるのだろうか。
それはそれでいい、でも。多分何かが足りなくて、焦って足を踏み外してしまいそうだ。
もし、世界からあいつらという名の彩りが消えたなら。
一年後、自分に色はあるのだろうか。
なんとなく怖くなって、自分は昼寝をしている小さな機械の様子を絵に描いた。
なかったことにしないために。自分で自分を彩るために。
たまには努力も、しておかないと。
「子供のままで」
この子が来てから一年以上経った。宇宙損壊罪?とかなんとかで自称マッドサイエンティストも持っている「公認宇宙管理士」の資格を剝奪されたうえ、他にも、あったら都合の悪い機能を取り上げられた。そのうえ、宇宙管理機構とやらの本部にもいられず、こうして自分のところで預かることになった。懲役50年。自分のいる場所を牢獄の代わりにするとか宇宙管理機構はどうなってるんだよ。
まあともかく、少なくともあと49年くらいはずっと子供のままで暮らしていかなきゃいけないらしい。長いな……。これでも自称マッドサイエンティストはかなり頑張ったらしい。
『そうだぞ!ボクが弁護しなければ今頃きょうだいはスクラップになっていただろうねえ!!……全く洒落にならないよ。』
はいはい、よく頑張りましたね。
……まあ、よかったよ。
柔らかな頬っぺた。お菓子をほおばる瞬間。蝶を追いかける小さな駆け足。
無事で何よりだ。
でも、時々思う。あと大体50年後の自分はどうなっているんだろう。多分50年経てばこの子は宇宙管理機構に戻る。
というかそもそも50年もちびっこの面倒を見られるのか?
考えたら少し不安になってきた。でも。
よく見せてくれる純真無垢な笑顔のためなら。
……少しくらい、頑張れるかもな。
--・-・ ・・ ・-・・ ・-・-・ -・・ --・-・ ・-
そろそろこの話の続きを書きたい……!時間が欲しいよー(´;ω;`)
「愛を叫ぶ。」
ああ、無限に存在する文章よ、詩よ、日記よ!
私はあなたたちを愛している。
文字だけで静寂を、情熱を、景色を描くその素晴らしさよ!
私にもそんなことがたやすくできたらいいのに。
猿にシェイクスピアが書けないように、私は私の文章しか書くことが出来ない。
もどかしい。焦りなのか、憂いなのか、それとも嫉妬なのか。
それすらもわからない。
モノクロであまりにもシンプルな私の文章。
春の花の色も、夏の青い空も、秋の紅葉も、冬の雪の白さも。
私には、書けない。
羊雲、綿毛、猫の柔毛、冬の布団の温かさ。
私にはその全てを書くことが出来ない。
静かなピアノの旋律、雑踏、秘密の話。
私にはやはり書けない。
ああ、文章を、詩を、日記を書く人々よ!
私はあなたを愛しています。
どうか、どうか書くことをやめないで!
書くことは生きることだから。
どうか、生きるのをやめないで。