『「こっちに恋」「愛に来て」』、『どんなに離れていても』
(4/25、26)
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『「こっちに恋」「愛に来て」』
「今日もたくさん公園で遊んだね。楽しかった?」「ん!たのちいだったの!」「よかったよかった。それじゃ、帰ろうか。」「んー。」「おちび、どうかした?」「ん……。」
おちびを心配しつつ、公園から出る。
「ほら、行くよ?」「やー。」「もう夜だからね?」「ちってる。」「もう帰る時間だ。」「ん。」
「それなら、こっちにおいで?」「むー!」「ニンゲンしゃん、きてよー!」「なに?どうしたの?」「ボク、ちかれた!だっこちて!」
……そういうことだったか。
「はいはい、抱っこするから帰ろうなー。」「んー!」
抱っこしてからまもなく、おちびは眠ってしまった。
たくさん遊べて、よかったね。
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「どんなに離れていても」
「……花の国の王子様と星の国のお姫様は、あの塔がある限り、どんなに離れていても、ずっとずーっと繋がっています。……おしまい。」
おちびは真剣に読み聞かせを聞いていた。
「いいお話だったね。」「ん!ボク、このおはなち、しゅきー!」「気に入ってもらえてよかった。」「でもねー、ボクね、はなれるの、やーやーなの。」「……そうだね。」
この子は永遠にも近い時間、ひとりぼっちで閉じ込められていた。……その反動なのか、今ではずいぶんと甘えん坊だけど。
「でもねー、てべりとかねー、ぱしょこんとかあったらねー、はなれてもひとりぼっちじゃないのー!」「いい時代になったよね。」「んー!」
「でもー、ボク、ニンゲンしゃんと⬛︎⬛︎ちゃんとおとーしゃんとねー、ずーっといっちょがいいなー!」
「ニンゲンしゃん、ずーっといっちょちてくれる?」「勿論……なるべくね。」「ありがと!」「おちび、これからもよろしくね。」「はーい!」
「巡り逢い」
皆さんは、素敵な何かに出逢えていますか?
こんなことを書くのも洒落臭い気がしますが、私にとって、このアプリに巡り逢えたことが、皆さんの綺麗で瑞々しい文章を読めることが、すごく素敵なことです(いつもありがとうございます)。
素敵なものや人との出逢いは、人生をすごく鮮やかなものにしてくれます。穏やかな香りや優しい味、温かい旋律……たくさんのものが心を豊かにするのです。
突然ですが、皆さんは「セレンディピティ」という言葉をご存知でしょうか?これは、「偶然見つけた幸運」「思いがけない発見」といった意味を持つ言葉です。
私は、インターネットによってセレンディピティを感じたことが多々あります。
例えば、私を例に挙げると、ラヴェルの「水の戯れ」や、青葉市子さんとの出逢いは、ネットを見ていて偶然見つけたものでした。見つけようと思って見つけたわけではなかったのです。
最近では、インターネットの負の側面がよく取り沙汰されますが、こうした素晴らしいものと出逢えるきっかけとなりうる以上、単純に批判ばかりするのは勿体無いと思います。
ですので、リテラシーをしっかりと身につけた上で、ネットと上手に付き合っていけたらいいなぁ、なんて思います。
皆さんのもとにも、セレンディピティが訪れますように♪
「どこへ行こう」
諸君!!!久しぶりだねえ!!!ボクのことを覚えているかい?!!そうそう、ボクだよ!!!公認宇宙管理士、コードネームは「マッドサイエンティスト」だ!!!
え???覚えていない???……実は!!!これを書いている「人間」も話の内容をきっちりと覚えていないらしいのだよ!!!自分で書いておきながら、無責任だねえ!!!
まあいい!とにかく、紆余曲折あって平穏に暮らしているところに、宇宙のどこかから迷い込んできたと思われる小さな子どもがボク達の前に現れた!!!
しかも、ボクから離れてくれない!!!
……仕方がないので、ボクはこの子を元いた場所に帰すために再び宇宙管理本部にある保育園へと向かうことにしたよ!!!
……という感じだったと思う……多分ね。
それじゃあ、続きを始めようか!
゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。
……ニンゲンくんの家から飛び出してきたはいいが、これからどうするのかちゃんと決まっていないままだ……。全く、どうしたものか!
「あ〜、白衣を引っ張るのをやめたまえ!」「へへー!」「聞いちゃあいないね……。」
「……思えば、⬜︎⬜︎って、機械なだけあって割と聞き分けがよかったんだねえ……。」「なにかいったー?」「い、いいや?なんでもないよ!」「ふーん。」
「次はそっちを左に曲がるよ!」「こっちー?」「逆逆!こっちだよ!」「やだー!」「駄目だよー?」「こっちいきたいー!」「駄目だってばー!そっちにはなんにもないよ?!」「えー?!」
子どもにいうことを聞かせるのはかなり大変だ……。
「ここからは手を繋ごうか!離しちゃ駄目だよ?」「えー、やだ!」「いいから、ほら!」「もー!」
……もー!はこっちの台詞だよ!
「もうちょっとで着くからね?」「どこに?」「宇宙管理本部の保育園に、さ!」「ふーん。」
……あまり保育園に興味がないのかな?
「保育園が見えてきたよ!ここにいたらきっと誰かが迎えにきてくれるはずだ!」「えー、いや!」「……。」
これがイヤイヤ期というものか……。
とにかくボク達は保育園まで来たんだ!
タダでは帰らないぞー!
「やあ、邪魔するよ!」「どうも、こんにちは!あなたは……マッドサイエンティストくん?」「よくご存知だね!」「君のことは保育士の私だって知ってるよ!」「鼻が高いねえ!!!」
「このひと、そんなにゆーめーじんなの?」「そうよー。なんてったって、この子は宇宙管理本部一の公認宇宙管理士だからね!」「へー。」
「まあいい!では、本題に入ろうか!」「本題?」「その通り!ボクがなんの用事もなしに保育園に足を運ぶことなどないからねえ!」
「単刀直入に聞くよ……ボクが連れてきたこの子だが、この子のことを知っている誰かはここにいるだろうか?」
「うーん……一応全員のことを把握しているけれど、この子のことは知らないなぁ……。」「そうかい……。」「お役に立てなくてごめんね。」「いやいや、こちらこそありがとう!」
「今日はこれで失礼するが、何かあれば連絡をくれたまえよ!」
「そうさせてもらうね。それじゃあ、また。」
「ばいばーい。」
……ここでは収穫なしか……。
さて、次はどこへ行こうか!
to be continued...
「ささやき」「big love!」(4/21、22)
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「ささやき」
今日も平和で平穏だった。さて、もうこんな時間だ。
「ニンゲンしゃん、もうねんねなのー?ボクもねんね!」
小さな機械が後をついてくる。
「いい子はもう寝る時間だよ。」「ん!」
この子をベッドの上に載せてから、自分もベッドに入る。
「ニンゲンしゃん、おやしゅみー。」「おやすみ。」
大したことをしたわけじゃないのに、夜になると疲れて眠くなる。ぼんやりと他愛もないことを考えながら、いつのまにか眠りについている。
眠りに……。
……しゃん、ニンゲンしゃん……。
眠りに……?
「ニンゲンしゃん。」
……ん……?
ささやきが聞こえる……。
「ニンゲンしゃん!」「なに……?」「おきたー!」「起きた、じゃなくて、おちびが『起こした』んだろ?」「ん!」
「ニンゲンしゃん、じゅちゅ、のまない?」「ん……?ジュース?」「ん!」「なんでいきなり?」「のみたいから!」「……こんな時間にジュースなんか飲んだら太るぞ?」「むー!」
「きょう だけ!のみたいの!」「……分かったよ。」「やたー!ありがと!」
仕方ない。起きるか。
「えへー!じゅーちゅ!じゅーちゅ!」
……夜にジュース飲むだけなのに、すごく楽しそうだ。
「どれにする?」「ぶどー!」「はい。」「ありがと。」
「んー!おいちー!よるのじゅーちゅはかくべちゅ だねー!」
どこで「格別」なんて言葉覚えてきたんだろう。
「ニンゲンしゃんも、のんでー!」
キラキラした目で見つめられる。はいはい、いただきます。
「……美味しいね。」「でちょー!おいちいのー!」
「じゅーちゅのおもいで できたねー!うれちいねー!」
本当に嬉しそうに話す。「よかったね。」「ん!」
「飲み終わったら、歯磨きして寝ような。」「はーい!」
……たまには、こういうのもいいか。
今度また言われてもいいように、ジュースは多めに買っておこうかな。
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「big love!」
「ニンゲンしゃーん!」「?どした?」「ぎゅー!」
「え、えへ?なになに?」「ぎゅー!」「よしよし。」
しばらく顔を埋めたあと、おちびはこっちを向く。
「ぎゅー!しゅるとね、ちあわちぇなんだってー!」
「ふーん。どう?幸せ?」「ん!ニンゲンしゃんはー?」
「多分幸せだよ。」「んー。」
「ボク、ニンゲンしゃんにもーっとちあわちぇなってほちいの!」「だからねー、もーっとぎゅーしゅるー!」
「ニンゲンしゃん!もーっとこっち、きてー!」
自分はおちびの目線とおなじ高さになるために、しゃがむことにした。
「じゅんびできたー?」「できたよ。」
「いくよー!」
「ぎゅー!」
ちっちゃい、あったかい、やわらかい。
そして何より、かわいい。
この子は、小さな体で目一杯愛情を表現してくれているんだ。
……だから、お礼でもしようかな。
「ありがとう。」「ぎゅー、たのちいね!」「よかった。」
「おちびー。」「んー?」「よしよし。」「んー!」
「からの抱っこー。」「わ!わー!」
この子、本当に抱っこが好きだよな。
小さな子どもらしいというか、甘えん坊らしいというか。
……やっぱりかわいい。
「ニンゲンしゃん?」「?」「にこにこなのー!うれちいのー?」「まあね。」「ボクもうれちい!」「よかった。」
「ボク、ニンゲンしゃんだーいちゅき!これからもいっちょだよー!」「ありがとう、よろしく。」
おちび、これからもよろしくね。
「物語の始まり」「影絵」「星明かり」(4/18〜20)
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「物語の始まり」
暗雲垂れ込める昼の空。
広がるのは荒れ果てた土地。
風がただ吹き荒れている。
周りには誰もいない。
全員、僕が殺したから。
これも故郷のためだ。
そう言い聞かせて軋む体を無理矢理持ち上げる。
痛い。苦しい。
嫌な感覚を手に残したまま、僕はこの場所を去ろうとした。
この物語でさえ、始まりは清らかで華やかだった。
まるで御伽話のように。
家族や友人、大勢の人々から見守られ、ステンドグラスの光の中で神のご加護を受けた。花びらで彩られた門出は、今でも僕の宝物だ。
あれだけ輝いていたあの時はもう見る影もない。
血腥い、煤まみれの穢れた戦士だけが残ってしまった。
どうして、なぜ僕はこんなことを……?
こんな手で勝ち取った正義に、なんの意味がある?
僕は、何のために?
絶望は僕をせせら嗤うかの如く、心の中でミシミシと音を立てた。
これは、希望から始まった、絶望の物語である。
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「影絵」
「ニンゲンしゃーん!みてみてー!」「?」「でんきのちかくだとねー!かげ、おっきくなるー!しゅごーい!」「本当だね。」
「ボクのおてて、ニンゲンしゃんのおかおよりもおっきいよー!」
当たり前のことをあたかも大発見かのように、嬉しそうな声ではしゃいで教えてくれた。
「あ、おちび。壁の方になにかあるよ。」「んー?」
「そうそう、そのへん……。」「なにもないよー?」
「ばあっ!」「わー!」
自分が作った大きな手の影に驚いて、おちびは尻もちをついた。
「びっくりちたー!」「ごめんごめん。」
「もう一回壁の方見てて。」「こんどはびっくりちない?」「多分ね。」「むー!」
自分はさっきと同じ調子で、影絵のキツネを作った。
「わ!おっきいの、いる!なに、これー?!」「キツネだよ。」「ボクも!ボクもきつねしゃん!ちたいー!」
「よく見ててね。」「こうー?」「上手上手。」
大きいキツネと小さいキツネが一匹ずつ。
「ニンゲンしゃん、おてておっきい!」「そうかな。」
おちびの手は紅葉みたいでかわいい。
……なんて言ったら怒られるかな。
「おてて!みしぇて!」「?」「やっぱりおっきいねー!」
そう言いながら手のひらを合わせてきた。
「……かわいい。」「えへー!」
「ほかにも、どうぶつしゃんできるー?」「色々出来るよ。」
「おちえておちえてー!」
……今日も相変わらず賑やかだ。
こういう日がこれからも続くといいな……なんて。
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「星明かり」
静かな街。透明の風。眠る花々。
誰もいないこの場所で、僕は星明かりに照らされる。
ここは忘れられた思い出の街。誰かが忘れた思い出の断片でできている。
小さな遊園地。モザイクタイルで彩られた教会。秘密の花畑。
どこも皆、誰かの大切な場所だった。
でも、皆忘れ去られた。
人々にとって、いらなくなったからだ。
忘れられた街たちはやがて、星明かりの波に押されて、新たな街を形作る。新しい、忘れられた街を。
人々は忘れることによって新たなものを作り上げる。
それは当然のことだ。
でも。
忘れられたものは、どんな思いで、人々を待っているのだろう。
白く冷たい星明かりは、涙の薫りがした。